弁ちゃん恋のキューピッドその2!
弁天はニンマリ笑って
「そうじゃ。正吾には霊能者の役をやってもらわねばならん」
と言った。
「そんなの先生が信じるかなぁ」
「俺が急にそんなこと言ったところで無理だよ。霊能者ってイメージじゃないでしょ?」正吾はハッとして隣の九尾の肩を叩いた。
「ここにいるじゃないか、その役にピッタリの子がさ!」
弁天はポンと手を叩いた。
「おお!九尾がいたのぅ。そういわれてみるとイメージピッタリじゃな。頼むぞ九尾」
九尾は嬉しそうに
「お役にたてれば光栄ですわ。やらせて頂きます!」と頼みをきいてくれた。
そして昼休み…
正吾は九尾を連れて職員室に行った。
「すみません。有明先生は?」
「あら、町田君。彼女があなたの婚約者?」保健室の鈴木先生は興味深々といった顔で九尾を見ている。
「可愛い子じゃないの。職員室でもちょっとした騒ぎだったのよ。町田君に婚約者がいただなんて」
正吾はトホホと思いながら
「ハ、ハァ…そうですか」
と力なく笑った。
「ちょっと待ってて。呼んでくるわね」
しばらくすると職員室の給湯室から有明が出てきた。
「あら、どうしたの?二人揃って」
正吾はギュッと拳を握りしめ、思いきって言った。
「先生、大切なお話があります。今時間ありますか?」
有明は首をかしげながら
「ええ、いいわよ。じゃあ音楽室でいいかしら?」
「はい!ありがとうございます」正吾は有明の後ろで頭を下げる若侍に微笑んだ。
音楽室は春を思わせる暖かい日の光が射し込んでいた。
一同は窓際の席に座ると正吾は緊張で咳払いした。
「せ、先生。驚かないで聞いてください。この九尾…じゃない九条さんは実は凄い能力があるんです」
有明は不思議そうに
「凄い能力?」と聞き返した。
「はい、そうなんです。いわゆる霊能力ってやつです」
そこで九尾がおもむろに口を開いた。
「先生、先生の背後に若い男の姿が見えます」
有明は恐怖で顔がひきつった。
「ええ!そ、それは確かなの?」
九尾は深くうなずいた。
「はい、間違いありません。若い美貌の侍がはっきりと見えてます」
有明は真剣な表情で
「なんで私に憑いてるの?何か怨みでもあるのかしら…」と九尾に聞いた。
九尾は首を左右に振り
「いいえ、それは違います。彼は先生の前世で恋人だったと言っています。先生を想うあまりに成仏できず苦しんで私に助けを求めてきたのです」と厳かに告げた。
「それで私はどうすればいいの?やっぱりお祓いとか受けないとダメなのかしらね」
九尾は有明の顔をジット見つめ
「そんな事では根本的な解決にはなりません。彼は先生と話したがっています」
有明は途方に暮れた。
「話すって一体どうやって?」
「先生がいいと言ってくれれば彼は先生に姿を見せてくれますよ。どうですか?昔の恋人の姿を見たくありませんか?」
有明は明らかに困惑しているようで
「見たいわ…でも幽霊でしょ?ちょっと怖いなぁ」
正吾は有明が躊躇しているのを見てこれは言うしかないと判断した。
「先生、今恋人いますか?」
「いいえ…いないけど。どうして?」
正吾は
「やっぱり…」とつぶやき
「このままでは一生恋人ができませんよ。先生に近付く男はみ〜んなこのお侍さんが追い払ってますから」と言うと、有明は慌てて
「それは困るわ!」と叫んだ。
「では、怖がらず彼と会ってあげてください。お願いします!」
正吾は有明に頭をさげた。
「町田君は優しいのね…他人の為に頭を下げるってなかなか出来ない事よ。わかったわ…話してみる。一度は愛し合った相手だもの…成仏させてあげたい」
正吾と九尾は手を取り合って喜んだ。
有明の後ろでは若侍が嬉し涙にくれていた。
正吾は有明に
「では早速今晩にでもどうですか?」と提案した。
「そうね。こういう事は先延ばしにしてちゃいけないわ。じゃあ今晩ここでいいかしら?」
正吾はうなずいた。
「はい!では今晩ここで」
弁天はニコニコして
「上出来、上出来!」
と正吾の頭を撫でている。
正吾はほっと胸を撫でおろし音楽室をあとにした。
「あ〜緊張したよ。とりあえずここまでは順調だね」
正吾がそういうと九尾は心配げな顔でつぶやいた。
「でも…本当にこれで良かったのでしょうか?もし、先生が彼を見て昔の気持ちがよみがえったりしたら彼の未練はますます深まるんじゃないかとちょっと心配です」
弁天はそんな九尾の肩をバンと叩いた。
「そうならんようにするために我らがおるのじゃ。本番はこれからじゃぞ!」正吾は帰り際に見た有明の不安げな顔を思いだし
「そうだよね。先生には幸せになって貰いたいよ」と音楽室を振り返った。




