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弁ちゃん恋のキューピッドその1!

九尾はご機嫌で正吾の机に自分の机をくっつけて教科書をのぞきこんでいる。

その様子に呆れた弁天は九尾の頭を小突いて言った。

「こりゃ九尾!な〜にがこりんじゃ、しつこい女は嫌われるぞい。見てみろ、正吾が嫌がっているではないか」

九尾は目をウルウルさせてジイッと正吾を見つめた。

「正吾様…わたしったら…ごめんなさい」

正吾はドギマギしながら

「そんな…俺、迷惑なんかじゃないよ。九ちゃん、心配してくれてるんだよね?ありがとう」

「しょ、正吾様…こりん嬉しい!」

弁天はこりゃあ言うだけ無駄だと悟り、正吾の事は九尾に任せて出掛ける事にした。

「正吾、妾は少し出掛けてくるからな」


「えっ、どこに行くの?」

「ちょっと気になる事があってな。なぁに、学校の中じゃから大丈夫じゃ心配するな」

正吾は弁天に気をつけて行くように言って見つからないよう小さく手をふった。

「さてと、あの侍と話でもしてくるかの。あのままじゃ音楽教師も行かず後家じゃ。同じ女としては黙っておれんでの」

弁天はフワフワと3階の音楽室に向かって飛んで行った。

「お、いたいた。相変わらずべったりと張り付いておるわ」

音楽教師の有明の背後には若くなかなかにイケメンの侍がひっそりと寂しげな顔で寄り添っていた。

有明はそんな事にはまったく気付かない様子で次の授業の準備なのか、プリントをホチキスでとめる作業に没頭している様子だ。

「おい!お前、一体そこで何をしておる。お前のせいで見ろ、このおなごについている守護霊が困っておるぞ」

若侍はギクッとした表情で弁天を見るとその場にひざまずいた。

「こ、これは弁財天様。見苦しいところをお見せして申し訳ございません」

「お前のしておる事はただのストーカーじゃぞ。なぜこの者にとり憑いておる?そなたはすでに死んでおるのじゃぞ、この者に懸想したところでどうにもなるまい」


若侍は唇を噛みしめ、苦悶の表情を浮かべた。


「はい、それは承知の上。私もこのひとに幸せになって頂きたい!だからこそ、つまらない男は私が寄せ付けないようにしているのですよ」

弁天はフゥッとため息をついた。

「なにやらこみ入った事情があるようじゃのぅ。妾に話してみよ!相談に乗るでの」

若侍の表情がやっと和らいできた。


「このひとは私が昔愛した人の生まれ変わりなのです。私がこうしてさまよっている間に、この人はもう何回かの人生を生きているのですよ。

同じ世に生まれたい…そして今度こそ添い遂げたいのです。どうすればよいのか教えてください」

弁天はポリポリと頭を掻いて

「それは無理じゃな!」と言い切った。

「なぜでございますか、あなた様は神なのです。出来ない事などございますまい?」

弁天は呆れた顔で若侍を見て言った。

「このおなごを見よ!もうすっかりお前の事など忘れて新しい人生を送っておる。お前も男らしくスッパリと諦めて新しく生まれ変わるがよい。さすればきっと次の世で巡り逢える。それが縁というものじゃ。そんな風にしがみついていてはただの悪霊でしかないぞ!」

若侍はしばし考えこんでいたが、パッと何か考えが浮かんだらしく弁天の方に向き直った。

「では、一つお願いがあります。「少しの間、彼女に私の姿が見えるようにして頂けませんか?」

「な、なんじゃと?」

弁天は鳩が豆鉄砲くらったように目をまん丸くさせて驚いた。

「私の存在に気付いて欲しいのです。こうして永い間想い続けてきたことを伝えたい…そうしたらきっと私は昇天出来ると思います」

弁天はウ〜ンと考えこんでしまった。

「きっとビックリするぞ!いくらイケメンでも幽霊じゃからな…どうにか説明せねばならんじゃろう。となると、やはり正吾の協力が必要じゃなぁ…」

若侍は土下座して頼みこんだ。

「どうかお願い申し上げる!」

「フゥ仕方あるまい、乗りかかった舟じゃ。今日の昼休みにでもまた来るから待っていろ」


「あ、ありがとうございます!」

礼を述べる若侍に手を振ると弁天はフワフワと音楽室をあとにした。

「問題は正吾じゃな。なんとか説得して、にわか霊能者を演じてもらわねばならぬ…嫌がるじゃろうな〜」


そして休み時間…

弁天は正吾を屋上に誘い出した。

正吾の傍らには九尾が常に控えている。

「実はお前に頼みがあってな」


「どうしたの?あらたまって」

弁天はモジモジと言い辛そうにしている。

「弁ちゃんの頼みとあらば俺、なんでもやるよ。なんたって弁ちゃんは俺の恩人なんだからさ」

九尾も隣でウンウンとうなずいている。

「そうか?実はな、音楽教師の有明にとり憑いている若侍と話してきたんじゃが、奴めとんでもない注文をしてきてな…」

「ああ、あのお侍さんか…俺も気になっていたんだ」

弁ちゃんはここぞとばかりに正吾にお願いした。


「そこで、相談なんじゃがどうであろう?奴め有明に自分の存在を知らせたいと言ってきた。自分の想いのたけを伝えて心おきなくあの世にゆきたいのじゃという。有明があの若侍を見ても驚かぬよう上手く正吾の口から説明してやってもらえまいか?」


正吾は他人事だと思っていたら自分の名がでたので

「ええっ!俺が?」と狼狽えた。

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