弁ちゃん雷電を泣かせる!
正吾は学校に着くと、まずは音楽教師の有明のところに行き音楽室に揚羽を置かせてもらった。
「先生ありがとうございます」
「いいのよ。でも町田君がギターを弾くなんて知らなかったわ」
正吾はポッと顔を赤らめた。
「まだ初心者ですから。あの〜もうひとつお願いが…今日の放課後、音楽室を借りたいんです。ここで少しギターの練習をさせて貰えませんか?」
「お安いご用意よ。どうぞ使ってちょうだい」
「ありがとうございます!」
弁天がニコニコして正吾に話しかけた。
「良かったのぅ正吾。後は学校の皆さんに聴きにきてもらうように宣伝しないとな!」
「でも一体どうやって?」
「それは後から考えるとして教室に戻らんとまずいんじゃないのか?」
「うわ!朝礼始まっちゃうよ。急いで戻ろう」
正吾が教室のドアを開けるとクラスメート達が待っていましたとばかりにワラワラと集まってきた。
「正吾見たぜ、テレビ!なんだよバンド組んでたなんて知らなかったぜ」
「町田君、私駅前の公園でライブやってたの見たよ。かっこよかったなぁ〜!」
正吾は顔を真っ赤にしてうつむいてしまっている。
「正吾!照れている場合じゃないぞい。宣伝するなら今しかないぞ」
弁天がそういうので正吾は顔をあげ、クラスメート達に呼び掛けた。
「あのぅ実は今日の放課後、音楽室でギターの弾き比べをするんだ。みんなも良かったら聴きに来ない?どっちのギターが良い音出すか意見聞きたいんだ」
「やった!いいのか?絶対行くぜ。ところでテレビに出てたあの美人ボーカルは来ないのか?」
「ああ、カリンさんか…。どうしようかな?う〜ん、連絡してみるよ」
そんな話しで盛り上がっていると担任教師が入ってきた。
「こら!みんな自分の席に着きなさい」
みんな自分の席に戻り係の掛け声で起立した。
「礼、着席!」
担任の海原はニコニコして
「おい町田、お前なかなかやるじゃないか。先生もテレビ見てたぞ!職員室でもその話しでもちきりだった。あのおとなしい町田君が?ってなぁ」
「先生!今日の放課後 、音楽室で町田君のライブがあるんですよ。先生も聴きにきたら?」
佐山チカがそう言うと
「おお!そうなのか?じゃあ先生達にも言っておこう。みなさん聴きたがっていたぞ」と、段々話は大きくなっていく様子に正吾はただオロオロするばかりだった。
そして放課後…
「ずいぶん集まったものじゃのぅ」
音楽室の座席はすべて埋まり、立ち見の人までいる様子に正吾の足はすくんでしまった。
「カリンさん、そろそろ来るころだな」
篠原は舞台裏の手伝いをしてくれるつもりらしい。
カリンさんに連絡してくれたのも篠原だった。
「ごめん、ごめん遅くなっちゃったね」
カリンは息を切らして音楽準備室に駆け込んできた。
「役者は揃ったの、では早速憑依するでな。恵比寿、ではいくぞ!」
弁天と恵比寿はそれぞれの肉体に憑依し、音楽室に入っていった。弁天の両手には2本のギターがある。
「今日はお集まりのみなさんに、この2本のギターの演奏を聴いて頂きたい。そしてどちらが好みか聞かせて欲しいのじゃ。この2本のギターはどちらも伝説のギターと言われておる素晴らしき逸品じゃぞい。判断は難しいと思うが正直な意見を聞かせてくれ」
弁天がそう言うと、恵比寿はうなずき
「同じ曲を演奏するので、良かったと思う方に手をあげてください。ではまずこの揚羽というギターから演奏します」弁天は揚羽を掲げてみせた。
「ではいくぞい!」
弁天はまずアップテンポの、ノリのよい曲を演奏した。恵比寿は声を張り上げ、観衆は手拍子でそれに応える。揚羽はそれに呼応して踊るように楽しい演奏をしてみせた。
曲が終わると割れんばかりの拍手が起こった。
「よし、では次に雷電というギターで同じ曲を演奏します」
恵比寿は弁天に目で合図を送り、テンポをとった。
雷電の重低音が響き渡る。
恵比寿の張り上げる歌声に絡みつくように雷電の演奏は一体となり観衆のハートを熱く盛り上げた。
観衆は立ち上がり体はリズムに乗って動き出す。曲が終わるとアンコールの声がかかった。
「みんな、ありがとう!では今度はバラードを聴いてください。まずは揚羽からです。」
弁天の指は揚羽の弦をゆっくりを弾き、物憂げな声で歌う恵比寿に寄り添うように、寂しい女心の切なさをうまく表現させていた。
「では、雷電で同じ曲いきます!」
雷電は泣いていた。恵比寿の哀しい歌に、そして心に一緒に泣いた。
それが聴く者の心を揺さぶり、同時に恋の切なさそして喜びまで見事に表現してみせた。
音楽室のあちこちからすすり泣きが聞こえてくる。
「どうやら勝負は決まったようだな…挙手は必要あるまい。どうじゃ揚羽?」
「……どうやらそのようですね」
揚羽は負けを認めた。
「お集まりのみなさん。今日はどうもありがとうございました!これから私達、メジャーデビュー目指して頑張っていきます。これからもどうか応援してください!」
二人はペコリと頭を下げた。




