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弁ちゃんテレビに映る!

カリンは正吾に提案した。

「正吾君楽しかったわ!またやりましょうよ。今度はお互いに神様抜きでね。私もボイストレーニングやってみるわ。ウフフなんだかはまっちゃったみたい。私も頑張るからあなたもしっかり特訓してね。とりあえず今週はお互い別々に練習してみて来週からはうちでやりましょうよ。使っていない蔵があるからそこを使いましょう」

カリンはすっかりその気になったようだ。


「カリンさんが一緒なら鬼に金棒だよ。しっかり練習してくるからね!じゃあまた来週」

カリン達に別れをつげ二人は家路についた。


「母ちゃんただいま!」

玄関の戸をガラリと開けると台所の方で

「お帰り〜」と母のユカリの声が帰ってきた。

「まったく受験生とは思えないね。今何時だと思ってるの?遊ぶのもたいがいにしないと後で泣きをみるよ」

ユカリがそう言うのも仕方ない。受験まであと2か月もないのだ。正吾は揚羽を押し入れに隠し、居間のコタツに脚を突っ込んだ。

「今日の夕飯なに〜?」

正吾がテレビをつけると、姉の和美がリモコンのチャンネルを押した。

「あれ?これって骨董市場だよね。お祭りだったからテレビ局来てたんだ!誰か知ってる人映ってないかなぁ?」

正吾は持っていたミカンをポロリと落とした。

テレビにはまず、市場の様子が映っていてそれから正吾達の野外ライブが映し出された。

「うわっ!芸能人も来てたんだ。誰だろ?なんか見たことあるような…」

和美はじっと画面を見つめた。

テレビ画面には豆粒大のカリンと正吾が映っている。

正吾の額からは汗が流れ落ちた。

豆粒大だった二人にカメラはズームで近付いてきた。

「ああっ!カリンじゃないの。歌ってるの安西カリンだわ」


正吾はギョッとして和美に聞いた。

「姉ちゃんの知り合い?」

和美は興奮状態だ。

「知ってるも何も同じクラスの子だよ!凄いじゃんテレビに映るなんてさ…あれ?隣でギター弾いてるのって…まさか正吾あんたなの!?」

正吾は慌てて和美の口をふさいだ。

ユカリに知られたら大変だ。

「ムググ…やっぱりあんたなんだ?」

正吾は観念してうなずいた。

「大丈夫だよ!母さんには秘密にしといてあげる。でも、なんであんたがカリンとバンド組んでるわけ?いつ知り合ったのよ?大体あんたギターなんて弾けたっけ?」


和美の質問攻撃にタジタジになっている正吾を横目に、和美はすかさずビデオの録画ボタンを押した。

「あんたがテレビに映るなんて〜。録画しとかなくちゃね」

和美はめちゃめちゃ嬉しそうだ。

そういえばこいつの小学生の時の夢って芸能界に入ってアイドルになる、だったな。

まったくミーハーなんだから!

「それで?なんていうグループ名にしたの?」

正吾は小声でつぶやいた。

「そんなのまだないよ。俺達、あれが初めての演奏だからさ」


「ふう〜ん。でもなんだかずいぶん盛り上がってたみたいじゃない?」


「うん!あの興奮は忘れられないよ。だから俺、本気でやってみることにした。実はあの時芸能プロダクションからスカウトされたんだ」

和美は脚をバタバタさせて喜んでいる。

「やったじゃん!それでなんていうプロダクション?」

正吾は名刺を取り出した。

「ほら…これ」

和美はその名刺を見てまたまた興奮している。

「スターダストって有名人が沢山所属してる一流どころよ!弟が芸能人だなんて…ああ夢みたい」

和美はすっかり夢見心地だ。

「大げさなんだよ姉ちゃんは。俺らはまだまだこれからなんだから…とにかく母ちゃんには内緒にしといてよ!心配するからさ」


どうやら和美は味方になってくれたようだ。コクコクうなずきご機嫌な様子で部屋を出ていった。

「正吾よ。大変なことになったのぅ…まさかテレビ局が来ていたとはな」

弁天は心配そうに正吾の顔をのぞきこんだ。

「仕方ないさ。とにかく今は余計なことは考えないで特訓あるのみ!」

弁天はそんな正吾を嬉しげに眺めていた。

「正吾、お主変わったのぅ」


「そうかなぁ?自分じゃわからないけど」「いや、変わったぞ。妾と出逢ったばかりの頃のお前はもっと醒めた目をしておった」

正吾は照れくさそうに

「俺が変わったのは弁ちゃんのおかげだよ。弁ちゃんが俺に夢中になれるものをくれたから」と弁天に感謝の言葉をかけると弁天は潤んでくる目をこすり、

「よし、では部屋に戻って練習じゃ!」と元気よく声を張り上げた。

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