弁ちゃん揚羽を説得する!
正吾はずっと弁天は側にいてくれるものと勝手に思い込んでいた。一年か…そんなのあっという間じゃないか!
「どうした正吾?ボウッとしてる暇はないぞい。もう少しで約束の時間じゃ」
正吾はハッと我にかえった。
「そ、そうだね。カリンさんお金足りたかい?」
「ダメよ…全然足りない。あと30万も足りないわよどうする?」
弁天は腕組みして暫し考えた。
「よし!あとは値切る他ないのぅ。カリン頼むぞよ」
「えっ、私!?」
弁天は深くうなずいた。
「男はだれしも美人に頼まれたら断れぬものよ…そうであろう?」弁天は恵比寿と正吾をチラリと見た。
二人とも反論出来ないようだ。
「では早速参るぞ!」
フワフワ飛んていく弁天を追って一同は森本楽器店の前まで来た。
「じゃあカリンさん、頼みますよ!」
「いやよ〜。私そういうの苦手なの」
正吾はカリンの肩に両手をおき、じっとカリンの目を見た。
「カリンさん、あなたは綺麗だ。俺最初に見た時からなんて美人なんだろうって思ってた。絶対君なら大丈夫、お願いします!」
正吾の熱意に負けカリンは仕方なくうなずいた。
「こんにちは〜!」
店の奥から店主がニュッと顔を出した。
「おお!おまえら待ってたぞ。どうだ金は出来たのか?」
サンダルをはき、店先まで出てきた店主は二人を見下ろし揚羽に目を留めた。
「は、はぁそれが…」正吾が声をおとすと、店主はニッコリと笑い
「さっきの見てたぞ。凄かったな!」
と正吾の背をバシバシ叩いた。
「いやぁ。揚羽の音を初めて聞いたぜ!さすがに伝説のギター。胸が震えるほど感動したよ。そっちの姉ちゃんもまた美人だしいい声出しやがる」
カリンはここぞとばかりに店主に頼み込んだ
「あのぅ。この揚羽なんですがやっぱり100万円でないとダメですか?私達、一生懸命演奏して稼いだけどあと30万足りないんです。まけて下さい!お願いします」
「ダメだ!それはそれ…約束は約束だからな」
「そこをなんとかお願いします!」
二人は深々とお辞儀した。
「しかしまぁ、この先揚羽を弾けるやつが現れるとも思えないしな…おまえらに売ってやりたいのも山々だ。だからツケにしといてやる。おまえらさっき、スターダストの社長と喋ってただろう?あれ、スカウトだったんと違うんか?」
「そ、そうです」
正吾は小さな声でつぶやいた。
「おまえら、絶対ビックになれるよ!だから出世払いってことでいいなら売ってやるぞ。利子は100万だ。どうだ、いい話だろう?」
正吾は慌てた
「利子が100万なんて横暴ですよ!」
店主はニヤリと笑い
「 なんだ、自信がないのか?」
と問いかけた。
「いいえ!それで結構です。揚羽を売って下さい」
正吾はギョッとした顔でカリンを見た。
「カ、カリンさん?」
「正吾君、あなた男でしょ?売られた喧嘩は買わなきゃダメよ!」
「ハハハ威勢のいい姉ちゃんだ!よし、持っていけ。ああ、それからメジャーになったらこの森本楽器店の宣伝頼むぜ!ここにある楽器はみんな凄い代物ばっかりだ。」
正吾はニッコリ笑って
「分かりました。俺たちきっと有名になってみせます!」
と宣言して店を出た。
「やったな正吾!これでやっと揚羽はお前のものじゃ」
弁天はそういうが問題はこれからだと正吾は揚羽を撫でた。
「揚羽、これからよろしく頼むぜ。それからカリンさん、恵比寿君どうもありがとうございました。君達の協力のおかげだよ」
恵比寿は正吾の肩に飛び乗って
「いやぁ。弁天のためならいつでも協力するぜ!なんせ弁天は俺の恋人なんだから。これからも困ったことがあったらこの恵比寿様になんでも言ってくれ」と胸を叩いた。
それを聞いた弁天はブリブリ怒りだし
「誰がお前の恋人じゃ〜!ふざけるのもたいがいにせい!」と顔を真っ赤にさせ息巻いている。カリンはプッと吹き出して
「まぁ良かったじゃない。後は正吾が揚羽に認めて貰えるようにしっかり実力をつけないとね」
と正吾の持っている揚羽を見た。
「そうじゃそうじゃ!挨拶がわりにちょっと弾いてみよ」
正吾はうなずき揚羽の弦を鳴らしてみた。
「痛い!何するの?」正吾はキョロキョロ周りを見回した。
「カリンさん、今何か言った?」
「いいえ、私じゃないわよ」
正吾はもう一度弦を鳴らしてみた。
「この下手くそ!私はあなたがマスターだなんて認めてないわよ」弁天は揚羽に言った。
「揚羽よ、この者は音楽の神である妾が選んだ人間じゃ。きっとお前にふさわしい奏者になる。どうか協力してやってはくれまいか?」
正吾は驚いた。
「今の揚羽が言ったの?ビックリしたよ」
「正吾よ、この揚羽は魂をもっておる。だからこそあんなに人の胸をうつ演奏ができるのじゃ。お前はまず揚羽に自分の主人にふさわしい男であると認めてもらわねばならぬぞよ」
正吾は真剣に揚羽と向かいあうことを決心した。




