弁ちゃんの作戦その2!
「弁ちゃん、もう一文無しなんだよ。今度はどうやって稼ぐつもり?」
正吾は肩をおとし意気消沈している。
「そうがっかりするでない!我らには揚羽という武器があるではないか。そして恵比寿というボーカルもいるしの」
その言葉を聞き、皆驚いた顔で恵比寿をみた。
「ええっ!?恵比寿君、私それ初耳たけど」カリンは恵比寿にそういうと
「だってそんなの言う必要ないじゃない?」と、とぼけている。
「こやつはなトレジャーシップというグループのボーカルでな。なかなか良い声じゃぞ。元々妾も含めて7人のユニットでな」
正吾は残りのメンバーがどこにいるのか気になった。
「ねぇ、他のメンバーはどこにいるの?」
弁天はため息をついて
「さぁな、多分今頃我らと同じくターゲットを天才に育てるべく奮闘しておるだろうよ」
「なるほど…なんだか色々わけがありそうね。それは後で聞かせてもらうとして、今は時間がないわ。早速弁天様の計画を聞かせてよ」
カリンは弁天を促した。
「おお、そうであったな。とりあえず我らにはもう音楽しか残っておらん。恵比寿!二人で組むしか道はないぞ」
「ああ、どうやら他に方法はなさそうだしな。と、いうわけだカリンお前に憑依させてもらうぞ」
カリンは慌てた顔で恵比寿を見た。
「ええっ!私が歌うの?」
「正確にはお前を通して俺が歌うんだがな」
恵比寿はそう言うと、
「どんな具合かちょっとやってみようぜ」
と言ってすかさずカリンの鼻に潜り込んだ。それを見た弁天も、では我らもやってみるかの」
と言って慌てる正吾を無視して鼻の中に勢いよく飛び込んだ。
「よし!憑依完了。そっちはどうだ?」
カリンに憑依した恵比寿は、正吾の姿になった弁天に声をかけた。
「こっちもOKじゃ!」
弁天がまずリズムをとり、恵比寿がスローなバラードを歌い始めた。
甘く切ないその声は、カリンを通して屋敷中に響き渡っている。いつの間にか座敷わらしも集まって来てその歌声に聞き入っていた。その時、
肩に座っている貧乏神の目から涙が一滴ポタリと落ちるのを篠原は見てしまった。…貧さん、恵比寿君がそんなに好きなのか?
篠原はこの純粋な気持ちをもつ貧乏神がさらに好きになった。
健気だな…。
がんばれよ!貧さん…
貧乏神の恋心をすっかり揺すぶってしまった事などつゆしらず曲は揚羽のソロのエンディングで幕を閉じた。
「凄いよ!こんなに感動したの久しぶりだ。これはいける!絶対いけるよ」
篠原は絶賛した。
「だとよ!良かったな。じゃあ早速場所を変えてライブといくか?」
恵比寿がそう誘うと弁天はうなずき
「時間もないことじゃ。骨董市場にいくかの」
と相談した。
「いいアイデアだな。今日は人もいっぱい出てるだろう。じゃあ移動するか?」
弁天は揚羽を担ぎ上げ、篠原達に声をかけた。
「お前達も行くか?」篠原は首を横に振った。
「俺達は遠慮しておくよ。結果は後で報告してくれ。健闘を祈る!」
弁天はガッツポーズをきめた。
「おお!任せておけ。がっぽり儲けてくるからな」
弁天は屋敷を出るとポツリとつぶやいた。
「毘沙門、どこにいるのかのぅ…」
それを聞いた恵比寿は苦い顔をしたが、聞かぬふりをした。
「おい弁天、曲は何をやる?」
弁天はハッと我に返った。
「そうじゃのぅ。まずはノリのいいやつにしようぞ!目一杯盛り上げてからバラードで締めよう」
「それでいくか!二人で組むのも久しぶりだな」
「ああ、いつもアイツらが一緒だったからのぅ」
恵比寿は弁天の少し淋しげな顔を見て何か考えているようだった。
「どうした、恵比寿?」
恵比寿はハッとして弁天を見た。
「いや、なんでもない!さぁ着いたぜ」
骨董市場は人で溢れ返っていた。
「今日はまたずいぶん人が多いのぅ」
「あっち側を見てみろ!今日はフリーマーケットの開催日も重なってるみたいだな」
弁天はニンマリした。
「ホホッ好都合じゃな」
「俺達の音楽を人間達に聞かせてやろうぜ!」
恵比寿と弁天は人ごみを掻き分けて行った。




