「弟子になってもらうよ」
「怖かっただろう?早く解放してやれなくてすまなかった。」
「いえ、大丈夫…です。」
オークション会場から離れた建物の路地裏に着いた。
「ここまで来れば大丈夫だろう。」
そういうと私を降ろして、男は仮面をとる。仮面をしていても分かっていたが、かなりのイケメンだ。水色の髪は背中の中心まで伸び右肩に流すように束ねている。私のほうを見る目は、金色で優しい形をしている。
(キレイ…)
つい、言葉にしてしまいそうになる。
「はじめまして。僕は千里。君は?」
私の背よりも頭一つ分高いほうを見る。金色の瞳に吸い込まれそうになり、目を少し反らす。
「…えっと…瑠璃川香です。」
千里に見とれていると、危うく質問の答えを忘れそうになった。
「…なるほど。これ全て君の名前か~。うーん…異国の名前は長いな…」
(いや、そんなこと言われましても…)
「そうだ!この世界では、君はルカだ!どうかな?」
(ニックネームみたい…。)
「いいですよ。」
「よかった!ルカ、これからよろしく!」
右手を私のほうに差し出してきた。握手の合図だと思った私は右手を出そうとするが…ふと、考える。
(ここは魔法の世界。しかも、自分は買われた身。もし、手を握ったら魔法で毒があって死ぬ…とか操られる…とかないかな…)
中途半端に出した右手が宙に浮く。
「うん?どうたんだい?ルカ?」
千里は不思議そうに首を傾げる。
「…えっと…気分を害したらすいません。私はオークションで奴隷として買われた身なので…こんなに親しくしていていいのか…と思ってしまって…。」
恐る恐る千里のほうを見る。
「ぷ…!あははは!そんなことか!!」
え?そんなことかって…。
「僕は君を奴隷としてなんて買ったつもりはないよ。奴隷なんかじゃなくて…君は僕の弟子になってもらうよ。」
「…弟子?弟子って何の弟子ですか?」
「実はね、僕は魔法が使えるんだ。だから、君には僕の魔法を継承していってほしいんだ。」
(つまり、魔法使いの弟子になれってことか。
剣で戦う…とかじゃなくてまだよかった。)
何せ、香は運動神経ゼロに等しいくらい運動音痴だからだ。
「なって…くれるかな?」
不安そうな顔で千里は右手前に差し出す。
差し出された右手を取って…
「分かりました。これからお願いします。」
二人の師弟関係が成立した瞬間だった。
しかし、ルカは知らなかった。この男ーー千里がこのラミリア最強の魔法使いだということを…。
また後で色々修正します。読みにくくてすいませんm(_ _)m