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僕と妖怪の日常  作者: タチバナ
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僕の同居人 その3


おじいさんもまさかの妖怪だった。


「妖怪だから他の人にみえないですよね?

 不動産屋って成り立つんですか?」


他の人にみえないのだからそもそもそこにいるのか

どうかもわからない。

コミュニケーションをとることができないので

商売はできないはずだ。


「俺は少し変わっていてね。普通の人にもみえるんだよ。

 説明すると長くなるけど」


おじいさんは普通の人にもみえる種類の妖怪らしい。

段々妖怪って何かわからなくなってきた。


「そもそもおじいさんは何の妖怪なんですか?」


「俺は特にこれといった名前はないよ。

 ただの妖怪だ」


よくわからない。

多分深く考えるだけ無駄なのだろう。


これ以上おじいさんと話していても疲れそうなので

家に帰ることにした。

ちなみに僕とおじいさんが話している間、

わらしはいつの間にかおじいさんが出していたジュースを飲んでいた。

僕には何も出してくれなかったのに。


「じゃあ帰ります」


「お前らなら仲良くやっていけると思うぞ」


この人は何を根拠にそんなことを言うのだろう。

そもそもわらしとは今日初めて会ったばかりだし、

おじいさんの前ではほとんど会話もしていないはずだ。

結構適当な人なのかもしれない。




不動産屋から家へ、僕たちは歩いて帰っていた。

そんなに離れていないのですぐにつくはずだ。

ちなみに行きは10分くらいかかった。


特に話すこともない。

何か話したほうがいいのかもしれないと思ったが、

僕はこれまでの経験上こういうときに何を話したらいいかわからない。

僕が神妙な顔で歩いていたら、


「お前さんよ」


「どうした?」


わらしのほうから話しかけてきた。

わらしも真剣な顔をしている。


「もし嫌じゃったら儂が出てってもいいのじゃからな」


「え?」


「もともとお前さんは妖怪に対してあまり良い感情を

 持っておらんのだろう。みえるせいで色々と大変だっただろうしな」


僕は確かに妖怪が好きではない。

むしろ嫌いだ。

だって妖怪のせいで今まで苦労してきたのだから。

そのことはわらしにはお見通しだったらしい。


「だから儂が出てってもいいし、なんだったらお前さんが出てってもいい。

 無理に一緒にいる必要はないと言っておるのじゃ。

 そもそも儂が寂しくて爺さんにお願いしてただけじゃからお前さんが断れば儂はまた元通りになるだけじゃ」


わらしの寂しいという気持ちはよくわかる。

僕も友達もいなくて、みんなから避けられていた。

本当はもっとみんなと仲良くしたかった。

友達が欲しかった。


だから僕はこう答えた。


「いや、わらしと一緒に住むよ」


「な、なんでじゃ。

 お前さんは妖怪のせいで苦労したんじゃろう」


「僕にも寂しいっていう気持ちはよくわかるしね。

 とりあえず一緒に居てみてもいいかなって思って」


「それはそうかもしれんが・・・」


「それにわらしは座敷わらしなんだろう。

 座敷わらしが出て行った家は悪いことが起きるって

 いうじゃないか」


「お前さんはバカじゃな」


わらしは笑いながらそう言った。

その顔を少しだけかわいいと思ってしまった。


一緒にいてもやっていけるかもしれないと思った。

おじいさんの言ったことは案外当たっているかもしれない。




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