♯2 再会!
1
帰国から数日経って、私は中学校に行く支度をしていた。この数日間、さっちゃんとは会わなかった。会おうと思えば会えるけど、明日ある始業式の楽しみにとっておこうとメールで話した。真新しい制服を着て、さっちゃんとおしゃべりする。
「楽しみだ…」
思わず口にでてしまった。
翌日。
私は新品の制服を着て新品のかばんを背負い新品の靴を履いた。行ってきますとお母さんに言った。そしてドアを開ける。
――――「すごい」
目に入るものすべてが、美しく見えた。澄み渡る青空、浮かぶ綿菓子。小鳥のさえずりが聞こえてくる。つい昨日練習で歩いた道なのに、まるで別の世界のようだ。
だんだん学校が近づいてきた。そのとき、
『ミーちゃーんっ!!!!!!!!!』
後ろから声がした。三年ぶりの声だ。私の口は反射的に動いた。
『さっちゃーんっ!!!!!!!!!』
すぐに駆け寄った。いつの間にか涙が出た。
「やっと会えたね!」
さっちゃんの目も濡れていた。私は感動の再会というものを知った。でもなんだろうかこの違和感は。そして気づいた。さっちゃんのすぐ後ろに、女の子が二人いることに。
「みーちゃん、友達できたー?」
いや、できたけど、後ろの人は……
「あっ、このふたりはね――」
うんうん。
「オタク仲間だよーー!」
あっ、新しい友達か。当たり前だ。何でわかんなかったんだろ。ん?あれ?おたく?
「へええええええええ?」
私は混乱している。声が裏返った。おたくおたくおたく……
「なんの?」
当たり前の質問だ。さっちゃんに特別趣味なんてあったか?
「鉄オタ、だよ」
「??」
「鉄道オタクの鉄オタだってば。」
さっちゃんが笑いながら答えると、後ろの二人もにこっと笑った。
「ま、学校着いたらゆっくり話そ。」
ちょっと待った。鉄道とか全然興味ないんですが。ってテレパシーを送ってみたが、届かなかったらしい。目に入るものすべてが灰色に見えた。暗くなってきた空、浮かぶ雨雲。車の騒音が聞こえる。つい数秒前登校で通った道なのに、まるで別の世界のようだ。
「困った……」
ぼそっとつぶやいた。聞こえたかな、と思ったが大丈夫そうだ。困り顔をごまかして、
「じゃ、行こっか。」
そういって歩き出した。
2
学校にはあっという間に着いた。始業式の後、クラスも発表された。さっちゃんも同じクラスだ。ひとまず安心。クラスに行くと、
「よーこそー!」
歓迎された。さっきの二人だ。
「左の肌が白くて茶髪で外国人っぽくてでも生まれも育ちも日本で金持ちそうに見えて実際金持ちな女の子は時雨ななこちゃんでー」
「スウェーデンのクオーターです。よろしくー。」
「右の少し背が高くて髪が長くてメガネで頭よさそうで実際頭いいのは赤坂ひなのちゃーん。」
「はじめまして。よろしくお願いします。」
「紹介してるわたくしはご存知町谷さきでございまーす。」
ななこちゃんの家はこのあたりの大地主で、ひなのちゃんのお父さんは最高裁の裁判官だと聞いた。前から知っていたが、この学校はただの公立だが裕福な人が多いせいか部活の種類もなかなか多い。
「そんでこの子が前に話した木下みさきちゃんだよー。」
「よろしくお願いします。」
どうやら二人私のことを話しておいてくれたようだ。話が早そうで一安心。
「それではミーちゃん――」
――これからもよろしく。ではなかった。
「鉄道研究部に入ってくださいっ!!」
「お願いします!」「御願い致しますっ!」
どうやら赤坂さんは誰にでも敬語を使う主義らしい。
「って、はいい??」
「今まで三年の先輩がいたんだけどもう卒業しちゃったし、新一年生の入学前アンケートでも希望者がいなくって。」
「5月時点で部員が三人以下の部活は廃部になっちゃうんです。
「体験だけでもお願いできませんか?」
私は三人に頭を下げられた。逃げ道は……無さそうだ。
「はーい、席着いてー。」
なんと間の悪い担任だ。
「じゃ、放課後にまた。」
さて、どうしましょう?




