文芸少女。
空咲健吾、空咲ヴォルス夫妻。
プロレスラーでも倒せなさそうな純粋が妻。爪楊枝で倒せそうなむっつりスケベが夫。
「つっても、そう言えばアイツらって、いつも何処に……」
店から出たは良いものの、早速どこに行けばいいか分からない。
店に居とけば来るとも思ったが、紙には【金を持ってこい】と書かれていたし、まず、乗り込まないと腹の虫が収まらない。
「すみません、最近ここらで暴れてるヤクザって何処にいるか分かります?」
「さぁ?……あんな奴ら自分から関わろうとなんて思わんよ。」
まぁ、そうなるわな。
とりあえずヤツらの居場所を掴もうと、俺達は、聞き込みを開始した。
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「…………うーん、一通り聞いてみたけど、収穫無しか。」
しかし、暫く聞き込みをしたが、めぼしい情報は手に入らず、あったことと言えばヴォルスがご近所のマダム達に大絶賛だった事ぐらい。
既にお天道様は、真上に上がろうとしていた。
まぁ、教えた事を知られて何かされる可能性も無きにしも非ずで、知っていても教えない人だっていただろう。
「少し疲れたなぁ。」
歩き疲れてきた俺を、ヴォルスが心配そうに見つめる。
「あのぉ……」
突然背後から、途方に暮れていた俺達におずおずと、お下げの女の子に声をかけられた。
「ン?どしたの?お嬢ちゃん。」
メガネに学生服と、いかにも文芸少女って感じの女の子は、頭2つ分ぐらい身長のヴォルスに見られ、一瞬固まる。
確かにこんなタッパのデカい外人を目の前にしたら怯えるのも無理はない。
「で、あの、どうしました?」
アワアワする少女をフォローすべく話を促すと、彼女は、少し戸惑った後、
「あの、ヤクザの人達。探してるんですよね。」
と、そう言ってきた。
恐らく、聞き込みをしている俺達の噂を聞いたのだろう。
「うん、そうなんだけど……何か知ってる?」
俺は、少女を怖がらせないように優しく聞く。
すると、少女は一瞬たじろいだ後、小さく口を開いた。
「えっと、商店街の……奥の、大っきいプレハブ……」
「え?」
「そっ、そこに、あの人達がいます!」
俺とヴォルスは顔を見合わせる。
確か、最近商店街の店が次々潰れていってるって聞いたていたけど、そういう事だったのか。
「お嬢ちゃん!ナイスッ!!」
「ひゃっ!」
1人納得している俺の隣で、ヴォルスは少女の手を握り、それをブンブンと縦に振る。
おいバカ、怖がってるだろ。
「ホントに助かった!!ありがとうっ!!」
「いえ、私は近くに住んでてっ、たまたま、困ってそうだったから、…あの、離してっ、くださっ」
顔を真っ赤にしながら、少女は恥ずかしそうにそう言った。
あんな奴らの近所に住んでるとは、相当怖い思いをしているだろうに。
「とりあえず本当にありがとう。」
俺からもそう言うと、彼女はより一層顔を紅潮させ、「が、頑張って下さい……!」とだけ言いい、ヴォイスの手を振りほどいて走り去っていった。
「ウフフ〜可愛いナァー」
その背中を見てデレるヴォイス。
え?俺の嫁他の人にニヤけてる?
なんか………………ムカつくんですけど。
「とりま、商店街行きますか。」
「アーイ。」
ん、あれ?
それにしてもなんか違和感。
「ほら?イクヨー?」
もう一度振り返ってみるが、
もう既にその背中は消えていた。
つづく
読んで頂きありがとうございます!
何やかんやで投稿できず、まだ2人は到着すらしていませんが、次回も頑張ります