表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/9

小瓶と魔術

空先健吾と、改めましてソラサキ・ヴォルス。

本日の朝食

【新妻特性♡愛情の焼き鮭朝食】

一歩、店に入ってみるとより一層その惨状が浮き彫りになった。

散乱した食器。

踏まれた絵。

倒された棚の下には、ばあちゃんが大好きな茶葉が入っていた瓶が、バラバラになって俺を見つめていた。

【これ以上の事をされたくなかったら早く金を持ってこい。】

会計台にそう書かれた紙が大きく貼られていた。

アイツらはここらの警察にも関わっているから、頼っても無駄なのは分かっている。

それを知ってる上でこんな好き勝手やってくれた訳だ。

「……ヴォルス。留守番しててくれ。俺ちょっと行ってくる。」

耐えられなくなり、俺は何も持たないまま、店を出ようとした。

けれど、彼は俺の腕を掴むと

「マズ、掃除しないと。セツコが悲しむ。」

優しく諭すようにそう言った。

でも、彼の瞳は恐ろしい程の殺意が滲んでいて、

「…………分かった。」

ヴォルスが言っている事は正しい。

本当は頭がおかしくなりそうな程許せないし、殺してやろうとしか思えない。

でも、まず店を片付けないと、ばあちゃんに合わせる顔が無くなってしまう。

「ケンゴ。店の外に出た商品と破片片付けて出来るだけシャッター閉めて。」

俺は何も言わず従った。

ヴォルスは俺よりもばあちゃんの事を知っているから、実際俺よりも怒っている事は何を言わなくても分かる。

幸い固く鍵をかけていた倉庫からホウキを取り出すと俺はで転がったり、バラバラになった商品を片付けた。

そして、言われた通りギリギリまでシャッターを閉め、店内に戻る。

「ケンゴ、こっち来て。」

日差しが遮断され、薄暗い中でヴォルスの方に向かう。

ヴォルスは俺の腰に腕を回すと

「動かないでね……!」

彼は反対の腕を真っ直ぐに伸ばし、少し呼吸を置くと

『サフ・カラナ』

そう呟くと、刹那伸ばした手から眩い光が放たれ、そしてその青く、深い光は、店中に広がっていく。

「なっ、なんだ…どうなって…?!」

光を浴びた商品や棚は、命が芽生えたように自ら動くと、元々あった所に戻っていく。

「これは魔術。使えるものは使わないとネ。」

踊る青はみるみるうちに店内を元どおりににしていき、全ての商品が棚に戻る頃には、再び薄暗さが俺等を包んでいた。

「凄い……魔術なんて…………。」

ヴォルスが人間ではない事を改めて知らされる。

さながら白昼夢でも見ているような気分だった。

「でもゴメン。壊れてしまったものは…直せない。」

俯く彼の手の中には下敷きになった小瓶の破片があった。

思い入れがあったのか、それを酷く悲しそうに見つめるヴォルス。

俺の中に、再び憎悪の火が点り始めた。

「さてと。片付けは終わった。そろそろ行こう。」

今度は俺がヴォルスの腕を掴む。

彼は俺を見つめると、静かに頷き、

「うん。」

と、言って、ダウンのポケットに破片を入れた。

「そーろそろ反撃の時間だ。」

相変わらずのボコボコで、完全に壊れてしまったシャッターを二人で開ける。

これが男と魔人の初めての共同作業であった。


続く


読んで頂きありがとうございます!!

本当は1時ぐらいに投稿しようと思ったら、昼寝をしてしまいました。

恐るべきダメ人間。次回もよろしくお願いします……

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ