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あきくんのおてて

作者: 天津神尊AAA

ある意味、処女作?

 星の祈り幼稚園に通うあきくんは、今日も大きな声で元気よく幼稚園に通います。


「···おっててピッカピーカッ!そっれがどーしーたっ!ぼく、あっきーえもんーっ!」


 この歌は、あきくんが毎週楽しみにしてるアニメの主題歌で、お兄ちゃんがあきくん用に替えてくれた歌。


「あき好きねぇ、その歌···」お母さんは、ニコニコ笑ってあきくんを見下ろします。


「うんっ!お兄ちゃんが、作ってくれたもんっ!」


 あきくんとお母さんが、道を歩いている横へ、幼稚園バスが走って行きます。


「もうすぐだよ!お母さん!」あきくんが、そう言うと目の前に星の祈り幼稚園の可愛らしい星のマークが少し見えてきました。


「あき?明日、みんなでお迎えに行こうね」


「うん!お兄ちゃん、おケガ治ったかなー?」


 あきくんのお兄ちゃんは、先月末に自転車で大怪我をして、今まであきくんの嫌いな病院に入院をしています。


「もう歩けるようになったからね」お母さんが、そう言い終わらない内に、あきくんは門の所に立っているユキ先生を見つけ、駆け出しました。


「ユキせんせーーーっ!」ユキ先生は、あきくんを見つけると、「こらーーーっ!走らない!!」と言いつつも笑顔であきくんを抱っこします。


「じゃ、先生。今日もお願いします」


「お預りします」


「お母さん?泣いちゃだめだかんね!」お母さんは、一瞬ポカンとした顔をしますが、すぐ笑顔になり、あきくんに手を振りながら来た道を戻ります。


※   ※   ※

 あきくんが、積み木で遊んでいます。


 ガシャン···


 あと三角の積み木を乗せたら、大きなおうちが完成だったのに···


「どけ···邪魔だ」あきくんが、顔をあげると新しくれんげ組に入った亮平くんがいました。


「あっちいけよ···」突き飛ばされて、あきくんは他のお友達にぶつかりました。


「あきくん、大丈夫?」お友達のアヤミちゃんがあきくんに優しく言います。


「うん!あっち行く!」あきくんは、アヤミちゃんと一緒にボールプールへ行って、先に遊んでたお友達とまた遊びます。


 すると、そこへ···


 ポンッ···


「った!」あきくんの頭に小さなゴムボールが当たりました。


「亮平くん、だめ!投げちゃ」とアヤミちゃんがあきくんを庇うと、今度はアヤミちゃんにも亮平くんは、ボールをぶつけ、とうとうアヤミちゃんは泣いてしまいました。


「こらっ!亮平くん!女の子を泣かしちゃダメでしょ!」とユキ先生が怒っても、亮平くんは謝らず、また他の場所へ行きます。


※  ※  ※


 お昼になりました。


「はい。手を合わせてくださいっ!」


 パンッッ!!



「なんだ、お前。手ないじゃん」


「······。」あきくんは、目の前にいる亮平くんを見て、うつむきます。



「いただきますっ!」


「「「いただきますっ!!!」」」



 あきくんは、ジッと自分の右手を見ます。


「ふん。指無しのくせに···」


「···もん。あるもん···」


「は?聞こえねーし。バカじゃねーの?指ねーのに」


 あきくんは、それでも泣くのを我慢して、ギュッとスプーンを掴みます。


「···ったく、箸も使えねーのかよ」


 スプーンを握る手が、プルプルふるえます。


「あれぇ?あきくん、どーしたのかなー?お腹空いてないの?」ユキ先生が、あきくんの傍に近寄って、心配そうに言います。


「食べる!あー、お腹空いた!」ちょっと目をこすって、スプーンで大好きなシチューをすくおうとしますが、うまくスプーンは言うことを聞いてくれません。


「けっ、下手くそ···バーカ」亮平くんは、ニヤニヤ笑って、あきくんに言いました。


※  ※  ※


「···ったじゃん!」ユキ先生は、あきくんの方へ顔を向けます。亮平くんも···


「嘘つき!亮平くん、ぼくのおてて指なしって···。違うもん···指あるもん···うえっ···うわぁあんっ!!!」あきくんは、大きな声で泣きながらしゃがんでしまいました。


「ふんっ!言ってねーし!!俺、なんにも言ってねーかんなっ!!」亮平くんは、大きな声であきくんに言うと、そっぽを向きました。


「あ、あ、あ、お願い···ね。みんな泣かないで···」遠巻きに見ているお友達も泣きそうな顔をしていますが、誰よりも一番泣きそうな顔をしているのは、ユキ先生でした。


 ひまわり組のアヤコ先生も困った顔でみんなを見ていましたが、


「あぁっ!!」突然大きな声を出しました。


「いっけない!お給食の存在忘れてたぁ!」そう言って、おでこをペチンッと叩きます。それに続いて、ユキ先生も思い出したのか、慌てて、


「ほら、みんなも早く食べないと映画見れなくなっちゃうよっ!!」みんなを促し、慌てて席に戻ったお友達は次々と食べ始め、中央に残ったのは亮平くんとあきくんでした。


※  ※  ※


「ぼく···」あきくんは、ジッと自分の席に残ってるトレイを見つめ、下を向きます。


「···ふんっ」亮平くんは、チラッとあきくんを見ましたが、無言のまま席について食べ始めます。


「ほら、あきくん!お給食のシチュー!残ってたから、食べよ」ユキ先生が、あきくん用に給食室に駆け込んで少し分けて貰ったシチューをトレイに乗せようとしたら···


「俺、もうお腹いっぱいだから、やる!」亮平くんは、パンを口いっぱい頬張って言いました。


「素直じゃないなぁ···」ユキ先生は、笑いながら言うと、それぞれのトレイにシチューを乗せて、「きれいに食べた子が、今日は特等席よ!」と言いました。


「特等席!ぼ、ぼく食べる!」あきくんが、慌ててお給食を食べ始めます。


 毎月第2金曜日は、みんなの大好きな···あきくんもかなり好きなアニメの映画が観れる日です。


 まだ入ったばかりの亮平くんは、不思議そうな顔で周りを見ていましたが···


※  ※  ※


「じゃぁ、今月の1番は、あきくんと亮平くんでいい人ー?」ユキ先生が、周りに聞こえる用に大きな声で言います。


「「「「はぁーーーーいっ!!!」」」」総勢18人のお友達が声を揃えて返しました。


「へへっ···」と照れるあきくんに、


「ふんっ」そっぽを向く亮平くん。


 ふたりを中心に、小さな椅子をきれいに並べてみんなで観るのは「ドロエモン」です。


 最初は、大人しく見ていたあきくん、亮平くんでしたが、ドロエモンが未来からきた執行人に連れられてしまった時には、揃って大きな声で、「「だめぇ!連れてかないでぇーー!」」とまた泣いてしまいました。


 そして、映画が終わり、お昼寝の時間になると···


「ほーんと、おかしなものね」アヤコ先生や、


「さっきまで、ケンカしてたのに···」ユキ先生が笑ってしまう程···


「「ドロエモン···」」仲良くくっついて眠っています。


※  ※  ※


 そんなふたりでしたが、お昼寝から目覚めると···


「言ってねーし」


「言ったよ?ねー!」あきくんは、お隣にいたリンちゃんに聞きます。


「言ったよ!ママーッて!」亮平くんは、真っ赤な顔をして、


「リンのバカッ!」


「······。」


「あ···」


 ペチンッ!!


「···っだ!なにっ···あ」


「バカは、お前だ!ごめんねぇ、あきくん?うちのが、泣かせたんだって?ほんと、ごめんね!!」


 亮平くんの後ろには、おっかない顔をした亮平くんのお母さんがいて、亮平のほっぺをつねってました。


「ひ···ひたひ···やめへ···」ほっぺをつねられる亮平くんを見るみんな···


「痛そうだね?」


「うん」何故か全員つねられてもいないのに、右側の頬を抑える。


※  ※  ※


「へぇっ!!そんなことあったんだ」


「うん!おっかないんだよぉ!亮平くんのママ」


 幼稚園が終わり、あきくんはお母さんと手を繋いで、お兄ちゃんが入院している病院へ行ってお兄ちゃんと一緒にお父さんの運転する車でおうちに帰りました。


「うちの母さんよりも?」


「うん!」真っ赤な顔で、目の前にいるお兄ちゃんに言います。


「あ、でも、それは言っちゃだめだよ?」お兄ちゃんは、くっしゃくしゃな顔で言うと、泡だらけのあきくんの頭をシャワーで流します。


「んでね、亮平くんのママがね、ぼくの右手を見てこう言ったんだよ!」


「んぅ?」


「『あきくんの右手は、魔法の手だね』って!ぼく、魔法なんて使えないのにね!」


「そうだなぁ···。でも、お前はみんなに笑顔の魔法を掛けてるからなぁ···」


「笑顔の魔法?もぉ、終わったぁ?」


「終わった。10数えて出ていいよ」あきくんは、真っ赤な顔を更に真っ赤にして、10まで数えリビングで待ってるお父さんの元へと駆け寄りました。



「ぼくのおてては、魔法のおてて···むにゃ···」


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