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 キリトと会わないまま月曜日を迎える。少し憂鬱なまま目覚めた家に母親はいない。もうすでに出勤していた。台所には母親が使った食器が取り残されたままだ。七海はそれを洗うことで七海の一日は始まった。

 七海も自分の準備をしているとあっという間に家を出る時間になっていた。

 ランドセルを背負って靴を履いて家を出る。首に提げた鍵でドアを閉めると、現れないキリトを思いながら家をあとにした。

 ため息が多い。

 この日の七海は溜め息の回数がいつもよりも多い気がした。ため息の度にキリトを思う。今日は出て来てくれるかな。そればかりを考えていた。

 いつの間にか時間は過ぎ、重い足取りのまま帰宅する。

「ただいま。」

 そう、七海は言うも、声は空っぽの家にこだまする。

 玄関に座って靴を脱いでいると、後ろから床のきしむ音。

「おかえり。七海ちゃん。」

 振り返ると、そこにいたのはキリトだった。七海は寂しそうな顔のまま、彼の名前を呼んだ。キリトもまた七海の表情と声で寂しそうな顔になる。

 スッと立ち上がった七海は、キリトの横を通り過ぎて自分の部屋へと向かう。キリトは七海の名前を呼ぶが七海は反応しない。

 部屋でランドセルを机の横に置いた七海は、ベッドにうつぶせで倒れ込む。

 キリトは七海についてきていた。今度は何も言わずにベッドの横へと座る。そのさまはまるで大きなぬいぐるみのようだった。

「なんで……、昨日は出て来てくれなかったの?」

 七海は呟く。

「七海ちゃんのお母さんがいたから。」

「寝る前は?私一人だったよ?」

 キリトは黙った。

 ごめんね。と、少し間をおいて言った。

 気がつくと、キリトは姿を消していた。家の中を探してもどこにもいない。一時間がたっても、七海が呼んでも。寂しかったとしても。キリトはこの日、姿を見せることはなかった。

 その日から、時々キリトの出てこない日があった。理由を聞いても、ごめんねと謝られるか上手く話題を変えられるか。

 そのことに拗ねているのも子供みたいでみっともないと思ったのか、七海はキリトを責めない。彼には彼の用事や理由があるのだと思って、キリトのいない日は前のように一人で過ごした。反面、キリトの出て来てくれた日は、とても楽しく過ごし、心も充実したのだった。

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