メイド様、生徒会と交流する(2)
すみません。投稿日時を間違えました。
一日遅れですがどうぞ。
月1回だったはずの生徒会での打ち合わせなのだが、私は自主的に週に1回ほど行くことにしていた。まぁとは言っても1時間程度で最後までいるわけではない。シン目当ての決闘まがいのことも最近は落ち着いてきたのでその時間を使っているようなものだ。毎日来る約1名についてはこの部屋にいるので問題は無いし。
「どうぞ、お茶です。」
「ありがとう、アンジェラ。」
私が何をしているかと言えばまあ簡単に言えばお手伝いだ。エカテリーナ先輩に呼ばれて生徒会に来たものの、1回目、2回目共に忙しそうに働いている生徒会のメンバーを見て手伝ってあげたいな~と純粋に思ったのだ。あまり来すぎても迷惑になるだろうし、私の仕事もあるからそのちょうどいいバランスが週に1回1時間と言うことだ。
決してメイドらしいことが出来るから生徒会を手伝っているわけではない。
「はい、お茶です。」
「ああ、どうも。」
エカテリーナ先輩やジャック先輩に比べ、他の2人のメンバー、クイン先輩とエルス先輩には少しだけ壁のような物を感じる。
クイン先輩は少し赤黒い肌をした切れ長の目が特徴的な女の先輩だ。生徒会では主に会計関係の仕事をしている。優しげなエカテリーナ先輩に比べ、何と言うか出来る女と言った雰囲気のする女性だ。
エルス先輩はどちらかと言えば小動物のようなすこしおどおどした感じのするかわいい男子生徒だ。その特徴的な青い髪は目を隠す長さで切りそろえられておりその相貌をはっきりと見たことは無い。生徒会では書類関係の作成や整理を主に行っているようだ。
お茶を入れるついでに何気なく出ている書類を見る。数字の羅列が並んでいるんだけど・・・
「クイン先輩、そこ計算が違っていますよ。」
「えっ?」
クイン先輩が書類へと目を戻す。しばらくしてその間違いを発見したらしく、すこし恥ずかしそうにしながら私を見た。
「ありがとう、アンジェラ。」
「いえ、たまたま気づいただけですので。」
エルス先輩へとお茶を入れようとしたが、エルス先輩は席を立っており、本棚の背表紙を見ながら何かを探しているかのように視線を左右に動かしている。
「何かお探しですか。」
「いや、去年の資料がどこだったかなと思って。」
「先輩が今やられている関係の書類でしたらその本棚の上から2段目の右端の辺りにあったはずですよ。」
出した本を返すと言う手伝いをすることもあるので、掃除をしがてら本の題名と場所についてはすべて記憶している。私としてはもっとわかりやすくなるように整理して場所を変えたいと思うんだけど、生徒会特有の習慣があるかもしれないしこの部屋を管理しているのは生徒会のメンバーだ。私が勝手に変えていいものでは無いしね。
私の言葉の通りにエルス先輩の視線が動いていく。そしてそこにあったファイルを取り出した。
「あっ、ありがとうアンジェラ。」
「いえいえ、何がどこにあるか把握するのはメイドのたしなみですので。」
エルス先輩に冗談っぽく微笑む。エルス先輩は有能なんだけどちょっとナイーブなところがあるので注意が必要だ。数回しか会っていないので確信ではないが、視線の動き、態度、言葉遣いなどから判断すると何かミスをした時に本人は落ち込んでいるのを隠そうとしているのかもしれないが、すべての行動に若干の遅れが生じるのだ。しかもそれが結構長い間続く。普通の人なら誤魔化せるかもしれないが、お客様の仕草や表情から体調、気分などを察し、もてなすように訓練された私の目は誤魔化せない。
「おいおい、クインもエルスもしっかりしてくれよ。来年は君たちがこの生徒会を引っ張ることになるんだから。」
「「はい。」」
うわっ、ジャック先輩。もう少し空気を読んで発言してください。ほら、クイン先輩はともかく、エルス先輩が落ち込んじゃったじゃないですか。ジャック先輩は相手の気持ちを読めないところがあるのよね。まぁ、相手の気持ちが読めてたらシンにアタックするために毎日私に勝負を挑んでくることも無いか。
「それをカバーするのが上の役目でしょう。クインもエルスも来年しっかりと後輩のフォローをしてあげればいいの。1人ですべてを背負う必要なんてないのだから。」
「「はい、会長。」」
2人が嬉しそうにエカテリーナ先輩の方を見る。やっぱりこの生徒会はエカテリーナ先輩がいることでうまく機能しているようだ。
お茶の用意も終わったので、簡単な片づけをしたら掃除に入ろう。一応先輩たちが帰るときに簡単な掃除と言うか整理はしているらしいし、今は1週間に1回は私が掃除しているのでそこまで汚れてはいない。最初に掃除した時は本棚の上の部分などに埃が溜まっていたりしてひどい状況だったが、今は及第点レベルを保っている。
濡れた布と乾いた布をそれぞれの手に持ちながら拭き掃除をしていく。本来なら人がいるときに掃除するなどあってはならないことだが、さすがに生徒会室に勝手に入るわけにもいかないのでそこは勘弁してもらっている。なるべく埃が立たないように、静かにそっと掃除をしているので息苦しいとかはないはずだ。
あぁ、メイドの仕事って楽しいな。最近はメイドって言うよりも冒険者?狩人?なんて言っていいのかわからないけれどメイドとは全く関係のない感じになっていたから余計にそう感じる。そうよね、本来なら私の仕事ってこんな感じのことだったはずなのよね。どこで道を誤ったのかしら。そう自問自答しながら棚を掃除していた私に声がかかる。
「いつも悪いわね。」
「いえ、自主的にしていることですし、時間も短いですから気にしないでください。」
エカテリーナ先輩が申し訳なさそうに頭を下げるのを慌てて止める。そこまでされると逆に来づらくなりますよ、エカテリーナ先輩。
「アンジェラが来てくれると仕事がはかどるからな。愛しのシンリーのため勝負を挑めないのが難点だが。」
「ジャック先輩はいい加減諦めて生徒会の仕事に専念してください。」
「はっはっは。それは出来ない相談だね。夜空に咲く一輪の赤きバラ、シンリーを妻にするために君を倒すのは決定事項だ。」
「はぁ、まぁ頑張ってください。」
ジャック先輩が「もちろんだとも。」と言いながら仕事へと戻っていく。ジャック先輩もな~。相手がシンじゃなくて、私に迷惑が掛からなければどうでもいいんだけど、いかんせん完全に私に迷惑が直撃しているのよね。まあ私に恨みがあって戦いを挑んでくるわけではなくて、正々堂々真っ向勝負を仕掛けてくるからましな方なんだけどね。なぜか私に恨みを持っている人もいるから、そういう人はもっと陰湿な方法を使ってくるし相手にするだけでも疲れちゃうのよね。その点ジャック先輩は勝負が終わればあっさりと引いてくれるから楽だ。
しばらくそんなことを考えつつ掃除を終え、先輩たちが飲み終えたカップを回収し、お代わりが必要なら用意をしてそれで私の仕事は終わりになる。
「では、また来週来ます。」
「お疲れ様。」
「助かった。」
「「ありがとうございました。」」
それぞれの言葉を受けて私は生徒会室を後にする。やっぱり普通のメイドの仕事は最高だ。




