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お仕事ですよ、メイド様!!  作者: ジルコ
第二章:私、学園に行きます
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白狐様、冒険者ランクを上げる

「・・・と言うわけなのよ。」


【狐人化】を解除し、いつも通りの服装に着替えてから宿へと帰りシン様に今日あったことを報告する。シン様は今日は蚤の市を巡られたようでよくわからない道具をいくつかいじっていた。


「へー、初日から面白いことになっているな。予想以上だ。」

「それでどうしよう。さすがに迷宮発見の報告をするのはまずいと思うけど。」


 シン様がいじっていた道具を机に置いてこちらを見る。


「そうだな、アンの予想では放置すればしばらくは見つからないと言うことだよな。」

「はい。」

「よし。俺とアンでその迷宮を探索してみるか。」


 シン様が左の掌を右の拳でポンっと叩いてとんでもないことを言った。その顔は名案を思いついたとでも言いたそうな雰囲気だが、普通に考えて2人で迷宮探索なんて無理だ。試練の迷宮のように安全部屋(セーフエリア)があるとは限らないし。


「低層だけなら可能だけど深くは無理じゃない?安全部屋もあるかわからないし。」


 私の質問に、シン様がよくぞ聞いてくれたとでも言いそうな自慢げな表情で胸を張る。いや、シン様今女の子の姿をしていますからそういう格好はやめてください。


「ふふっ、アンが働いているときに俺が遊んでいるとでも思ったのか。パラパパッパパ~、魔道具のテント~。」


 シン様がよくわからない音と間延びした声と共にマジックバッグから小さなテントを取り出す。いたって普通の2人用くらいの大きさのテントに見える。あれが魔道具?


「それ魔道具なの?」

「そう、俺が蚤の市で見つけた逸品。なんと魔石をはめることで魔物の接近を防ぐ効果があります。しかも結構強いやつ。」


 そんな効果の高いものなんて値段をかなりするはず。シン様の実家はお金持ちのはずだけれどシン様自身はそれなりしか持っていないから買えるはずがない。私の様子を見てシン様はニヤニヤしている。


「アンは俺が買えるはずがないって思っているだろ。」

「はい。」

「俺の能力覚えているよね。」


 シン様の能力と言えば、あっ・・・。

 言われて気づく。そうかシン様のスキルならそれが可能だ。


「【全鑑定】で魔道具と知らない人から買ったんですね。」

「さすがアン。この他にもいくつか掘り出し物があったけどな。これが一番の成果だ。ちなみに銀貨2枚だぞ。」

「それは・・・その売った人、ご愁傷さまです。」


 普通に買えば金貨どころか大金貨の価値があるかもしれないものだ。知らない者は馬鹿を見るという典型例だろう。というか【全鑑定】を持っているシン様と蚤の市って売り手にとって最悪の組み合わせじゃない。


「しかし日数が足らないよ。」

「結果発表までは迷宮の低階層の探索をして、発表後入学するまでの一か月間で行けるところまで行ってみよう。それだけ王都に近い場所で迷宮が発見されたなら、話に聞く第三王女なら突撃しそうだ。先に危険な個所を把握しておきたい。」


 日程を考える。確かに発表から入学まで一か月の期間があるためその間に探索することは可能だ。普通なら実家へ荷物を取りに帰ったりするための期間なのだが私とシン様には必要ないし。

 シン様はものすごく楽しそうな顔をしている。


「建前はわかったわ。本音は?」

「未発見の迷宮なんてロマンじゃないか。俺が初踏破したい。」

「はいはい。それではその通りに準備を進めるわ。」


 困ったご主人様だ。でも私もワクワクしている。気を引き締めなくてはいけないが、人がまだ入ったことのない迷宮に入るなんて本の中の主人公になったみたいだ。

 必要な装備と食料などの準備について話しながら夜はふけていった。





 そして25日後。

 シン様と私は予想通り試験には合格していた。クラスの発表などは入園式の後にあるらしいので王女様と同じなのかは不明だが。

 そして冒険者のハクとしての私は翌日にギルドのランクが8級に上がった。王都のギルド史上最年少の8級冒険者だそうだ。最速は別にいるらしい。興味は無いが。その話は冒険者の間で瞬く間に広がり、私に対する勧誘がひどくなっていった。失礼な勧誘や、強引な勧誘をする者は死なない程度に吹き飛ばしていった。お姉さんにちょっと注意は受けたが、相手の方が悪いということでお(とが)めはなしだ。ちなみにお姉さんの名前はルルさんだった。

 現在はもう一つランクが上がって7級冒険者になっている。


 そして今、発見した迷宮の30階層のボスのボストロールがシン様のライトニングに貫かれてその巨体を大地に横たえる。ピクッピクッと痙攣(けいれん)したように動いているがもはや死んでいるか生きていたとしても虫の息だろう。

 しばらく様子を見ていると、ドーンと言う音と共に迷宮が地震のように揺れる。


「これが話に聞く迷宮の最終ボスを倒したときに起こるという地震かな?」

「そうだな。それにしても歯ごたえが無かったな。」

「そうだね。」


 シン様によるとこの迷宮に出てくる魔物は全体的にレベルが低いらしい。具体的に言うと私たちが潜った試練の迷宮の半分程度とのことだ。1階層ごとの広さも半分くらいだし本当に小規模な迷宮のようだ。準備としてポーションやMPポーションもある程度買い込んできたのだがほぼ使わずに終わってしまった。この大量に余ったのはどうしよう。そのまま使わないと劣化してしまうしなー。

 そんなことを考えている私をよそにシン様はボストロールをマジックバッグに回収するとずんずんと先に進んでいってしまう。その後を慌てて着いていく。


 あの地震と同時にボス部屋の奥の方に空間が空いて次のフロアへと進むことが出来るようになっていた。そこをシン様と一緒にくぐるとそこには2つの宝箱が設置されていた。


「最終ボスの討伐報酬に罠は無いという話だが調べてくれるか?」

「はい、少し離れていてね。」


 鍵はかかっていないようだ。外側を叩いたり持ってみたりしてみたが罠があるような様子は見えない。開けると発動する罠もあるので絶対に安全とは言い難いが、これ以上の判別は無理だ。仕方が無いのでマジックバッグから槍を取り出し遠くから開けるいつもの方法で開ける。

 罠は発動しなかった。


「これは、本と腕輪ですか?」

「ちょっと見せてくれ。」


 本は高そうな皮で装丁(そうてい)された物で中央にひし形とその中に丸の紋様がついている。腕輪はいぶし銀とも呼ばれる黒っぽいシルバーで小さい花がいくつも連なってついているキンギョソウのようなデザインだ。かわいいデザインのはずなのだがちょっと引っ掛かりを感じる。


「これは俺に、こっちの腕輪はアン用だな。」


 シン様が腕輪取り出し私に差し出してくる。シン様がはめるように言うのでちょっと嫌だなと思いつつ腕にはめる。


「アン、その状態で自分の名前をハク、15歳と言ってみてくれ。」

「えっ?ハク、15歳。」

「よし、期待通りの装備だ。」


 意味も分からずにシン様が勝手に一人で納得する。


「あの、シン。これがどういう装備なのか教えてほしいんだけど。」

「ああ、ごめん。それは偽装の腕輪って言う装備だね。効果はその腕輪をして声に出して言った内容がそのまま鑑定結果に反映されるみたいだ。俺の【全鑑定】スキルでも暴けないみたいだから、アンがハクとして活動するときに必要な装備だな。」


 確かに必要かも。鑑定系のスキルを持っている人はそこまで多くは無いけれどいないってわけじゃないし。これからハクが有名になってきたときに人物鑑定されたらその矛盾に気づかれてしまう可能性もあるしね。


「わかったわ。ハクとして活動するときだけ着けることにする。でもそれならシンの方が必要じゃない?」


 シン様の場合、性別を偽って学園に入ると言うことになるから見つかればどうなるかわからない。そう考えると普段はシン様に使ってもらってハクになるときだけ借りれば良いんじゃないか?そう考えたのだがシン様は首を横に振る。


「一応俺は実家から変装のチョーカーって言うそれよりは一段落ちるけど鑑定をごまかせる装備を借りているからな。よっぽど大丈夫だ。」

「あれ、そんなのあったっけ?」

「ここにあるぞ。」


 シン様がスカートをまくり上げ、太ももの付け根ぎりぎりのラインまで私に見せる。うわっ、なにこの足。ムダ毛も生えていないし一緒の訓練をしているはずだから筋肉がかなりついているはずなのに私より細いし、白いし。私は女だし、シン様は男だってわかっているんだけどなんか見ちゃいけないものを見ちゃっているような背徳感が・・・。


「ほらっ、ここにある黒いチョーカーがそうだ。まあ見えにくい位置にもつけられて便利ではあるな。おいっ、アン、どうした。」

「い、いえ。何でもありません。」


 危ない、危ない。なんか取り返しのつかない道に入っていってしまうような気がした。そんな私の心をごまかすように話題を変える。


「それでそっちの本は?」

「ああ、こっちは時空魔法の魔導書だ。かなり古いものだけどな。」

「時空魔法って、シン使えるの?」

「ああ、まあ何とかなるだろ。」


 シン様は嬉しそうにしている。時空魔法は珍しく、一般には本さえ出回っていないらしいので魔導書が手に入ったことは魔法使いとして嬉しいのだろう。わざわざ迷宮を踏破した甲斐があったというものだ。私の腕輪も見つけられたし。


「それじゃあ帰るか。」

「そうだね。この腕輪があればこの迷宮に関してもどうにか出来そうだし。」


 そうして私とシン様の迷宮探索は終わった。


 後日、ハクとしてフォレストウルフ討伐の依頼中に見知らぬ者から迷宮の場所を教わって、行ってみたら実際にあったとギルドに報告した。

 ギルドで調査チームが結成され、それが確認されると私が第一発見者として褒賞を受けるように言われたが、教えてもらっただけだからと固辞したらあっさりと許してもらえた。最悪偽装の腕輪を着けて王様と会うことも考えていたんだけど。

その褒賞代わりなのか私の冒険者ランクが試験も受けずに6級に上がった。儲けものだ。

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人外転生の別作品です。次のリンクから読もうのページに行くことが出来ます。

「大地転生 ~とりあえず動けないんだが誰か助けてくれ~」
https://ncode.syosetu.com/n5307ei/

少しでも気になった方は読んでみてください。

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