閑話:アンジェラと手紙
親愛なるシスターアンジェラへ
お元気ですか。突然孤児院を出て行ってしまいごめんなさい。みんなにお別れを言えなかったことが残念でしたが私は元気です。
私は今、ご主人様であるシン様の屋敷でエマさんというメイドさんと一緒にメイド見習いとして働いています。孤児院よりも大きなお屋敷でびっくりしました。修行は大変ですが弟や妹たちの面倒を見ることに比べたら楽かもしれませんね。
そういえば驚いたことに私のお給金が月に金貨1枚だったんです。てっきり1年で金貨1枚だと思っていました。シスターもそうですよね。
さすがに多すぎるので大銀貨9枚は孤児院に寄付してもらうようにお願いしました。こんなことも出来るってわざわざエマさんが教えてくれたんです。ちょっと怖そうに見えたけれどとってもいい人みたいです。
このお金でみんなのご飯とかそのままにしていた屋根の修理をしてください。
あっ、私は必要なものはすべて支給してもらえますし、こうやって手紙を送れるくらいの余裕はありますのでご心配なく。
リーヴたちがいたずらとかしていませんか。もし困ったらアンジーが怒りに行くからねって伝えておいてください。
それではまた手紙を送ります。
アンジーより
*そういえば最後の名前をアンジェラにするかアンジーにするかちょっと悩みました。なんとなくアンジーの方がいいかなと思いましたのでこれからはそうしますね。
◇
親愛なるシスターアンジェラへ
寒い季節になりましたがお元気ですか。私は相変わらず元気です。
孤児院から出てもう半年が経ってしまいました。シスターや孤児院のみんなは元気かなってふとした時に思って寂しくなることがあります。ダメですね、こんなことでは。
最近はメイドとしての仕事もだいぶ覚えてきました。そういえばこの前初めて自分で花壇を作って花を植えたんですよ。花が咲くのは半年後らしいので、早く芽が出ないかなーと毎日楽しみに水やりをしています。
そういえば以前に書いたと思いますが私のご主人穣のシン様は15歳になったら冒険者になると言う事でシン様も私も3人の先生に教えてもらって頑張っているのですが、昨日訓練の休憩時間に初めてシン様の訓練の様子を見せてもらいました。シン様はいろいろな魔法を使いながら先生と戦っていました。はっきり言って今の私では足元にも及びません。まあそれでも先生たちに攻撃が当たらず倒されていましたが。
私もメイドとして少しでもシン様のお役に立てるようにもっと頑張ろうと思いました。
リーヴに私達と同い年ぐらいで私よりも全然強い人がいるんだから、もっと頑張らないとダメよと伝えておいてください。
そういえばこの手紙と一緒に野菜の種を送ってもらえるようにお願いしておきましたが届いていますか?たまたま運んでくれる冒険者さんと会うことが出来てそのくらいならついでに送ってやるよって言ってくれたんです。
その野菜は地面から2センチぐらいに埋めて適当に水をやっておけば芽が出て、1か月くらいで食べられるようになるはずです。面白いほど簡単に育ちますからおちびたちにでも世話をさせてあげてください。なにが出来るかは出来てからの秘密です。
ではまた手紙を書きます。シスターも体に気をつけてね。
アンジーより
◇
親愛なるシスターアンジェラへ
お元気ですか。暑い季節になってきましたので無理はしちゃダメですよ。あっ、もちろん私は元気です。
いつもよりちょっと手紙が遅れてしまってごめんなさい。
先日からシン様と一緒に迷宮探索に行っています。あの迷宮ですよ!まさか自分が本の登場人物のようにこんなに早く迷宮を探索することになるとは思いませんでした。まあ冒険者になるとは決まっていたのでいずれは行くことになるとは思っていたんですよ。
迷宮と言うとシスターが心配してしまうだろうから書こうか迷ったのですが、今は全く怪我をしていませんし、仮にしたとしてもシン様が治療してくださるので安心です。
魔物を倒すと本当にレベルアップするんですよ。先生とのあんなに厳しい修行では上がらなかったのに変な感じです。まあでもレベルアップするごとに強くはなっているので良しとしています。
そういえば嬉しいことがあったんです。私がメイドになった一周年を記念してシン様とエマさんがサプライズパーティーを開いてくれたんです。いきなり席に座らされて豪華な食事でもてなされて最初は緊張で味がしませんでしたよ。もったいなかったです。
でもこんな家のメイドになることが出来て本当に良かったなと改めて思いました。
その時に孤児院のみんなにもということで保存の効くクッキーをもらいましたので送ります。(このお金も出してくれました)ケンカしないで分けるように伝えてください。
それではまた手紙を書きます。シスターはくれぐれも体に気をつけてね。
アンジーより
◇
親愛なるシスターアンジェラへ
お元気ですか。このやり取りももう20回以上になったと思いますが相変わらず私は元気です。
今回はとっても大きなお知らせがあります。
なんと、私は来月から王都の学園に通う事になりました。とは言っても試験はこれからですし(というか来週です)必ず入れるとは限らないんですけどね。合格できれば学園にて3年間学ぶことになります。
王都と言えば国立の大図書館があるそうです。学園にも図書館があり、しかもそちらの方は学生であればタダで利用できるそうですよ。すごいですね。
ただ王都から手紙を送るとここの2倍以上かかってしまうそうなので今みたいに毎月1回手紙を送れなくなってしまうかもしれません。でも絶対に手紙を書きますから待っていてくださいね。
それとこの前みんなで書いた手紙を送ってくれてありがとう。一緒に入っていた手作りのお守りは肌身離さず大切に持っているよ。
合格を祈っていてね。でもこの手紙が届くころにはもう試験は終わっちゃっているかも。
でも王都は遠いからなー。しばらくは孤児院に行けないです。もし長期のお休みとかがもらえたら絶対帰るから王都のお土産楽しみにしていてね。
あとリーヴにこの前もらった手紙に書いてあったことで、生意気を言うのは私に勝ってから言うのねって伝えておいて。
それじゃあもうちょっと勉強頑張るね。体に気をつけて。
アンジーより
◇
「・・・だそうよ。」
私の言葉にリーヴの口が尖る。あら、この顔は久しぶりね。何を書いたのかしら?
「ふーん、アンジーは王都の学園に行くんだね。」
「そうね。アンジーなら試験は問題ないでしょう。」
あの子は本当に賢い子だったから。
「そうだね。じゃあ俺は行くよ。そろそろおちびたちがお昼寝から起きるころだし。」
「ありがとう、リーヴ。」
「アンジーがいない分、俺が頑張らないといけないからな。」
リーヴが手を振って出て行く。アンジーが出て行ってしばらく泣いてばかりいたのに、なんとか立ち直ってくれて良かったわ。最近はアンジーの代わりといってみんなのお世話を頑張ってくれているし。
アンジーも最初は心配したけれど楽しそうにしているみたいで良かったわ。あの子の試験がうまくいくように祈っておきましょうか。
古いマカボニーの机の引き出しにそっと手紙をしまい、シスターアンジェラは礼拝堂へと向かうのだった。
読んでくださりありがとうございます。
次話から第二章に入ります。
この話から分かるように学園編です。いや学園変かも。
明日から1日1話投稿になります。よろしくおねがいします。




