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シェンリュさんの思い

 僕の言葉が終わると目を閉じ深く息を吸い込んだシェンリュさん。

ジッと言葉を発するのを待つ。静かな時が少し流れた後


「私としては奴に関して思うところが有り過ぎて、顔を合わせた時冷静さを保てる自身がない」


 いつも冷静なシェンリュさんとは思えない憎しみを帯びた声に驚く。だけどそれほどの事が二人にはあるのだろうと思う。僕は頷くだけに止める。


「ただここは戦場であり、私たちは元の世界に帰らなければならない。その為に奴が役に立つなら私との間の事は我慢する事にする。が、奴が我々を貶めようとしたその時は」


 みなまで言わせるな、と言うように言葉ではなく視線で僕に告げてきた。それに対して僕は頷かなかった。


「僕らも生き延びなきゃならないですから、敵対するのであればなんであれ容赦はしません。なので情けを掛けるつもりはないです」


 そう答えた。少し不服そうな感じだったけど、最終的には頷いてくれた。シェンリュさんもリザード族を率いる者として、駆け引きがある事は分かってくれていると思う。


ただシェンリュさんにとって趙さんとの事は逆鱗のようになっている。普段なら乗らないであろう挑発も、趙さんからされれば容易に乗ってしまう事も考えられる。それは頭の片隅に置いておく。


「何にしても即奇襲があるレベルで考えて事を進めねばな」

「はい。ボブゴブリンたちには農耕と鍛錬をしてもらって、基礎レベルを上げる事に集中して貰います。ダークエルフたちには見張りを徹底して貰いつつ、首都の偵察そしてこちらの農耕の指導を。シェンリュさん達には鍛錬をしてもらいつつ、出来れば鉱石を融通して頂けると助かります」


「まぁ背に腹は代えられない。後で色を付けてくれ」

「何とか色を付けられるよう頑張ります。西側の領土を拡張する時にリザード族に多く分配する事を考えています」


「なるほどそれは助かる。我々だけで開拓は骨が折れるからな」

「僕はその間にエルフとオークと会談して交流を深めようと思っています」


「エルフに襲われたと聞いたが」

「ええ。そこの事情も色々探ってみたいな、と。敵対するというのであれば、先ず後方の安全を確保しないといけませんし」


「なるほど、そこまで考えているなら大丈夫だな。姉や、私たちの護衛は居るかな?」

「そうですね、出来ればダークエルフのとリザード族の族長が会見の場に来てくだされば、それだけで力になりましょうが、あちらが何をしてくるか分かりません。出来ましたら待機していざという時に力添えをしていただければ」


「それは問題ない。任せてもらおう」


 こうして一時シェンリュさんたちは村に帰って行った。見送った後僕はアステスさんに代筆をお願いし書面を認めて、ヴェルさんにそれを託した。


僕が自分で書かないのは、僕の体調が万全で無い事を相手に伝える意味もある。もっとも今のところそこまで悪くはない。ただ僕が万全であれば開き直る可能性も否めないのでそうした。


「返書よ」


 色々図書室などで資料を漁りつつ鍛錬をしたりと忙しなく過ごしながら居ると、ヴェルさんが返書をもって帰ってきた。


「うーん」


 その返書には襲撃のお詫びとそれに至った経緯が書かれていた。が、予想通りと言っては何だけど、良い訳が多い。そしてこちらの気持ちを汲んで欲しい、と。


「これは重症ですね」

「ホントよね。指揮官を襲撃しておいてこれじゃあ最初に謝ったのも枕詞みたいなものに見えるわよね」


 ヴェルさんの言う通りだ。定型文のように取り敢えず謝っておこうというものにしか見えない。謝罪より後の方が九割なのだから。


「どうしたものかね……大分大変だ」

「こりゃ放置して置くってのもありかもよ?」


「難しいでしょうね……相手はユグドラシルと交信した康紀様を崇めている節がありますので」

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