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雲からの帰還

「それは難しい質問ですね」

「む、難しいって何!?」


「僕は今ここに来て能力も上がって元の世界じゃ考えられないくらい活躍しています」

「そうだね」


「先ず嫌なパターンとして、全く事情を知らされず僕の行動が気に入らないからリセットした、これは嫌です。分からなくもないパターンとして、このまま行けば世界皆がダメになってしまうと言うのを知った上でするのなら、これはしょうがない面もあるんじゃないかと思って」

「実に冷静だね。それまで培ってきたものや絆もなくなるんだけど」


「うーんそれって死と同じような気がします。結局人はいずれ死にますから。ただ世界がダメになる根拠を知りたいし、知らないなら誰か一人が気に入らなくて気に入るまでやり直せと言われてる感じなので全力で抗います」


 腕を組み目を瞑って考え込む少年。


「正直どうしてそうなったのかは分かりませんし、リセット自体が嫌いだし意味ないので受け入れる事はないですが、ただ善か悪かみたいな話なら分からないです。なので悪だと思わせて何とかさせようとするなら無理かなぁと思って」


 その言葉に少年は小さく笑った。


「なるほどこれは参った。悪に対して燃え上がる正義でって感じではないとは思っていたけど」

「正義が悪だったなんてことは良くある事ですからね。世界が正義で回ってる訳が無い事くらい小学生でも分かってる気がします」


「正義は必要ない、と?」

「正義の味方という存在を残しておくのは大事だと思います。皆が非道であったなら、人類は一人残らず食い合って滅びるでしょう。全てを置き去りにしてリセットするなら、色んな事を試してそれでもダメなら出来る限りの説明をした上で自分一人罪を背負ってリセットするかと。ただ絶対正しい訳もないので冷静に落ち着いて考えて代替えも出来ない時間かけても無理となって、本当に最後の最後の手段になるでしょうが」


「なるほどね」

「僕が星の護りとして、デムと共にそれを見極めるって事もあるのかなぁなんて思うんです。ただ剣とかもあるみたいですから、どうなるかは分からないですけどね」


―デフラグ完了。再起動します―


「あらら、案外早かったね。でも君の考えが聞けて良かった。もっと暴走するのかと思ったけど」

「いやぁ今はこう言ってますけど、いざとなったら分かりません」


「そうそう可笑しくなる事は無いと思うし、僕たちも陰ながら見守っているから」

「ありがとうございます」


「君は君のまま思うように進んでいってほしい。確かに君の言う通り終わりは来る。その終わりに君らしい選択が出来ると良いね」

「そうなるよう努力します」


 僕たちは椅子を立ち近付き握手した。


「まぁまた会う事になるだろうから、これっきりって訳じゃないんで。また面白い話を聞かせてくれるのを私も楽しみにしているよ」

「面白い話をしたつもりはこれっぽっちもないですよ? 話が面白くない事で有名なんで」


 少年は微笑みながら僕に手を振った。僕の視界はぼやけ黒い海に落ちていく。何の話をされたのか理解できないけど、ちょっとだけ僕も整理できた気がする。


「康紀様」


 暫くして聞きなれた声が聞こえてくる。目を開けてみると知ってる天井。いつも寝ていた屋敷の天井に間違いない。そして視線を横に向けるとアステスさんがいた。


「ああよかった。アステスさんありがとう」

「あ、まだ寝ていらしてください」


 僕が上半身を起こそうとするとすかさず抑え込まれてしまった。


「何とか助かったみたいだね」

「ええ。まさかエルフが襲撃してくるとは……。申し訳ございません」


「アステスさんが悪い訳じゃないよ。シルフが助けを呼んでくれたのかな?」

「ええ。シルフが屋敷まで飛んできまして何とかギリギリ康紀様をお助けし、今に至ります」


「どれくらい寝てた?」

「二日ほど」


 それを聞いて小さく笑う。そんなに寝れるなんて凄いなぁ。



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