対話
「仕方ない」
「私の方が早い」
剣の切っ先が僕右肩に飛んできた。けどそれは届く事は無かった。
「デム!」
―敵対行為及び殺意を確認認識し自動起動―
「康紀!」
「怠惰の結界」
瞬時に指示し発動してもらう。相手は何とか気合で来ようとしたものの、直ぐに膝をつき倒れこんだ。
「うわ……」
と同時にこっちにもガタが来る。膝から力が抜けていく。が、何とかギリギリで踏ん張る。
―持続時間三分―
「デムありがとう。シルフ、周りは?」
「他にはいないみたい。全部巻き込めた」
「くっ……まさかこれほどとは」
エルフの人が何か言っていたが、答える余裕はなかった。僕は何とか気合で体を動かしその場を後にする。景色は歪みぐわんぐわんしているものの、根性で木に体を預けながら道を行く。
「シルフ、後は頼んだ」
「ちょ、ちょっと!」
もうそれを言うのが限界で、僕は地面に突っ伏した。視界は完全にブラックアウトする。
―生命維持完了。回復モードに移行します―
デムの機械的な音声が聞こえる。僕はゆっくりと目を開けたけど、そこは何時もとは違う景色の場所だった。
「ここは……」
明らかに雲の上に立っている。これってよくテレビ番組で死んだら来るところなんじゃないか?
―意識のみ覚醒完了―
「おやおや、大分早いお目覚めだね」
声の方向に視線を向けると、そこには癖毛の金髪に幼さが残る顔立ちの少年が立っていた。切れ長の目に高い鼻欧米の人なのは分かるけど、何か違和感が拭えない。
僕と同じようなワイシャツにベストにスラックス。赤いネクタイが特徴的な少年は、手を後ろに向けると現れた装飾の凝った椅子に腰かけた。
「初めましてこんにちわ」
「こ、こんにちわ」
「どうやらリンクはしっかり出来ているようだね」
「り、リンクですか?」
「そう、デムと君が呼んでいる者とのリンクさ」
「貴方はデムの事を……」
「まぁまぁ。話はゆっくりしようじゃないか。さ、腰を掛けて」
少年が指をパチンと鳴らすと、同じ椅子がもう一つそして似た装飾のテーブルにティーポットが乗ったものが現れた。取り敢えず拒否しても何も進まなそうなので、椅子に腰かけて向かい合った。
「素直で良いね。そうだからこそデムも君の前に現れた」
僕はそれに対して微笑むだけで何も言わなかった。最初の頃は態度悪かった気がするので。
「あの環境に慣れたのも素晴らしい。……まぁ最もそういう人だからこそっていうのもあるんだけどね」
「貴方は僕がここに居る理由も知っているんですか?」
その言葉に苦笑いで返されてしまった。こんなところに現れるんだから、何かを知っているのは間違いない。……いやそもそもこれは夢じゃないか? なんか当たり前のように受け入れちゃったけど。
「正直僕の想定とはやっぱり違っていてね。君には初めの方はもう少し困難が少なくなるよう何とか手を加えたんだけどね……残念な事に剣を落とした後でめちゃくちゃ警戒されてて上手く介入できなかった」
「ど、どうも」
正直何を言っているのか理解できない。手を加える? 剣を落とした? 介入?
「剣を落としたっていうか厳密には僕が落とした物を利用して剣を作ったんだから切っ掛けに過ぎないかな」
「すいませんイマイチ話が見えないんですが」
僕の言葉に目を丸くした後、微笑んでティーポットを手に取り都合良く現れたティーカップ二つに注いで一つを僕に差し出してきた。
「いやぁ申し訳ない。そりゃそうだよね。何も見えずただ国を作れと言われて、気付いたらまとめあげて戦う話になってるんだから」
「そうなんですよ……正直一からその場所で国を作っていこうと思ってたんですが」
「まぁ誰もいない土地で国を作れたらそれが一番良いんだろうけどね……。ただまぁ予想外と言ってはなんだけど、君は社交性があるようだね」




