帰り道~その二~
シルフの声に顔を上げると、眼前にはわらわらと最初に見たのと同じような人が草むらから出てきた。
「参ったな」
「動けそう?」
僕はから笑いをした後何とか立ち上がる。正直この体力でどれだけ走れるかわからないけどやるしかないか。
「シルフ、行こうか」
額の汗を右手で拭い、迫りくる人たちに対して身構える。シルフは僕の肩に座りしがみ付く。どうするも何もない。死ぬ気で逃げる隙を探し出して一気に駆け抜けるしかない。
「うおおおおおおおおおおおお!」
僕たちを包囲しようと横一列で向かってくる人たちの、更に後ろから雄叫びが聞こえてくる。次の瞬間その声の近くと思われるところの人が、何人も爆発でもあったように吹き飛んだ。
「うわぁすごいなぁ」
「私も初めて見る」
たった一人、ジンガさんが周りにいる人たちを千切っては投げ千切っては投げ、まるで作物を引っこ抜くように放り投げている。
「ま、まてジンガ!」
「でああああああ!」
身分の高そうな人も放り投げられた。多くいたように見えた人たちも全て地面に横たわっている。どうするか。ジンガさんは暴走したりしていないだろうか。
「どうする?」
シルフの問いに注意深くジンガさんを見る。肩で息をして俯いている。
「行こう」
「でも」
「暴走しているならもっと暴れてるだろう? あの人はそれを上手く手綱を引ける人だよ」
自分に言い聞かせるように言い、ジンガさんに近づく。
「あの、ありがとうございます。どうしましょうかこの人たち」
さっきと変わらない感じでジンガさんに声をかけた。肩で息を暫くしたまま俯いていたが、次第に落ち着いてきて
「問題ない」
と答えてくれた。白めの部分が赤くなっていたようで、段々赤に染まっていたのか薄くなって行き白目に戻る。
「何か手伝いましょうか」
「大丈夫だ」
力強く頷いてくれた。大丈夫なようだ。僕はホッと一息吐いて一礼し、その場を後にする。何か手伝ってという考えも無くは無かったけど、ジンガさんの管轄だと思うし手を出すのはジンガさんを侵害する気がしてその場を大人しく後にした。
僕たちは一難去ったと思いつつも、警戒して屋敷に戻る。さっきのような襲撃を避けるために、街から距離を取り少し回り道して帰る事にした。
「うわぁ川綺麗」
途中小川が流れていて、シルフがそれに近付き水を飲んだ。シルフはお茶を飲んでいないからのどが渇いていたのだろう。ゴクゴク飲んでいた。
「大丈夫? 毒とか入ってない?」
「川にまで毒を流したらそれこそ皆危険よ? それに私は大丈夫」
「なんで?」
「風の妖精さんだから」
自信満々に胸を張りながら答えるシルフ。そういうものなのだろうか。そうなると僕も妖精みたいなもんなのかもしれないなぁ。
「さ、行きましょう」
小川の流れとシルフを見詰めつつ暫くして、シルフが満足して戻ってきたので屋敷を目指し歩く。少し離れている歩きなれない道だけど、夕方近くでまだ森も明るめなのでなんとなく分かるのが救いだ。
修行だったり休憩の時間だったりで森を散策していたのが役に立っている。景色として記憶し、ある程度の目印と木を傷つけないような目印も置いていざという時に備えていた。
「あ、お屋敷が見えたわ!」
シルフの声に僕もホッと一息吐く。が、何か変な感じがした。シルフも浮いていたけど直ぐに肩に戻ってきた。
「何か来る」
「康紀人気者ね」
シルフとお互い苦笑いしつつ身構える。今日は忙しい日だ。
「君が康紀かね」
一人現れたのは耳が尖って長く金髪に細身の剣と体、豪華な服を着飾ったエルフだった。
「貴方は?」
「私かい?」
そういうと剣をスラリと引き抜いてこちらに向けてきた。
「私の事はどうでも良い。大人しくご同行願おうか」
どうやら本気のようだ。




