土地の配置の振り返り
「指揮は勿論執る。だがね、君たちだって利があると見て付き戦うと決めた。良いとこどりなんてのは許されないよ?」
侯爵はいつもと違う少し重い感じの雰囲気と声でそう告げた。
その言葉にノルンさんとシェンリュさんは押し黙る。
「まぁ遅かれ早かれなった事とはいえ、今回戦いになればこっちに責任があるのは間違いない。が、全てではない。そこは間違えないでほしい。先に戦いを仕掛けてきたのは向こうだしね」
いつも通りの声で侯爵はそう語りかけた。ノルンさんは胸元からハンカチのようなものを出して顔の汗を拭いた。
「子供ではないのだ。言われなくとも分かっている。お前が彼を大分大事にしている事もな」
「無論命の取り合いとなる以上誰の責任でもない。やるかやられるかだけだ。だが全体の方針を決め迷い無く攻める事で戦いを素早く終息させれば被害も最小限で済む。責任もあるが権利もある。そこは間違えないでほしい」
「宜しい。ならばそうさせてもらおう。彼の言う通り早速配置をし、其々備えてくれたまえ。一両日中にそうなった場合の戦術を決めて配布する」
社会人になった事が無いから分からないが、こんなに緊迫した雰囲気なんだ。言うべき事は言わないと禍根を残すし、意思疎通が図れないから言っておかないと思い込みは失敗の元なんだろう。
こうして会議は終了し、侯爵たちと屋敷に戻り早速この付近の地図を見返す。
「我らの土地の右上に例の街があり、荒れ地との境目がその更に右上。そこを左上から斜めに通過するように尾根がある。我らの現在地は街から左下。海からは少し離れている場所にある。その左上にリザード族の土地。右下にはダークエルフ、その右横離れにエルフが居る」
「他の種族は」
「オークたちが街の右側の森に居る。原住民はそれを囲むように居る」
「彼らは中々難しい。エルフも難しいとはいえ話が出来るだけマシだ」
「オークはゴブリンと似ていますか?」
「いいや。彼らは好戦的ではあるが、狡猾ではない。他種族との交流も殆ど無い」
「特に刺激しなければ問題無い、と」
「そうだけど言ったように好戦的だ。戦争の匂いを嗅ぎつけたら来る恐れ大」
「……一度交流してみたいですね」
「それが正しい判断をする為には重要かもしれないねぇ。後原住民は元々街の人間に良い印象を持っていない。というのもあの場所は元々原住民の居た場所だったんだ」
「追い出されて更にオークを避けるように今は暮らしてるんですね」
「最悪の状況になったけれど彼らはオークとどうやら交流できたようだ。詳しい事は分からないけど」
「私知ってるわよ」
「あれ、シルフどこに居たの?」
食堂で地図を見ながら話していると、小さな窓を開けてシルフが入ってきて僕の肩に座った。
「どうもああいう雰囲気私好きじゃないのよねぇ」
「今後は増えると思うけど」
「どうかしらね。少なくともそんな風には出会わなかったわ」
「出会う?」
「まぁまぁ。兎に角今のオークはヤバいわよ」
「ヤバいとは随分と抽象的な言い方だねぇ」
「うーんなんていうのかな。普通のオークじゃないのよあの人」
「あの人?」
「そう。オークの新しい族長さん」
「普通のオークじゃないとは何を指してそう言うんだい?」
「あんまりね、喋らないのはオークらしいんだけど真意を見透かして判断してるっぽいのよね」
「嘘が通じないと?」
「それに今までと違って彼にオークたちは注目し従ってるのよ。明らかに別物よ」
「腕っぷしだけで全てを決めてきたオークがねぇ……」
「と言う事は話し合いが通じる可能性があるかも?」
「どうかしらね。私ああいう人苦手なのよねぇ。全て見透かしてる感じがしてさ」
「そりゃアンタが胡散臭いからよ」
「ダークエルフよりは正直だと思うけどねぇ」
「ヴェルさん! 良いんですか? 戻ってきて」
「勿論。私は連絡役だし」
ノルンさんと共に帰ったと思っていたヴェルさんが食堂に戻ってきた。




