朝の積乱雲
何の事かと思って辺りを見回すと、肩のシルフが下を指差した。
「あ」
そういえば風呂に入っている事をすっかり忘れてた。
僕はいそいそと湯船に戻る。
その後何事も無かったかのように夕食を済ませ就寝。
「……見慣れるのも怖いなぁ」
朝何となく目が覚めて上半身を起こしてみると、部屋が荒れていた。
毎度毎度これを片付けたり整えたりするのは大変なんじゃないだろうか。
デム、こうならない様にするようには出来ないの?
―身の安全が最優先事項に当たります―
うーんでもヴェルさん、だと思うけど僕の命を狙おうとした訳じゃ無いと思うんだよね。
―心拍数が上昇し体温も上昇、気を殺し接近しようとしていましたので、危険と判断し排除いたしました―
武器は持ってない……っていうのはこの世界の人にはあまり関係ないか。
そう言えば前にも荒れてたけどあれは命の危険があったの?
デムは沈黙をもって答えたようだ。侯爵もアステスさんもどうやったのか物凄く気になる。
「康紀様、お目覚めになりましたか?」
「あ、はい。今行きます」
僕はベッドから出て着替えて外に出る。アステスさんは微笑んで一礼した。
……何だろう怖い。ヴェルさんは無事なのだろうか。
「実に良い物を見せてもらったよぉ」
「そんなに凄かったですか?」
いつものように侯爵が扉のすぐ横の壁にもたれ掛かって居た。
「ああ彼女の御蔭で君のあれは速度にも対応出来ると分かった」
「力はアステスさん、技が侯爵ですか?」
「まぁ私は本気ではやらないけども、なかなかの対応力だよ。どうも元から完璧ではなく経験学習型なのかもしれないねぇ」
「と言う事はこれから色々な力が現れる可能性があるかもしれないって事ですか?」
「正直それが知りたいが故っていうのが本音かねぇ。我々も初めて会うからさ。”星の護り”」
そういえばグルヴェイグさんもどういうものかは分からないって言ってたっけ。
「あ、そう言えばグルヴェイグさんは」
「彼女は今首都へ行っているよ」
「首都って行っても平気なんですか!?」
「平気かどうかを探りにね。勿論単身じゃなくジャンくんとダークエルフの諜報担当も一緒に行っているから心配ないと思うけど」
「しかしグルヴェイグさんの孫であるレイナさんが捕らわれている本拠地に潜入なんて」
「僕もそうは思うがね。彼女にも重々理解してもらって、ジャンくんにも迂闊な事は絶対しない様に言ってある。下手に動けば即開戦なんて事になりかねない」
そう、僕もそれを考えていた。確実にレイナさんを助けるなら先ず足場を固めてから。
侯爵とも話てそう決めた。それがその後も一番安全だから。
やっとその土台作りをし始めた矢先にこの展開で僕は動揺を隠しきれない。
「彼女を無理に押し留める事は出来なかった」
僕は右手を顎に当て考えた後
「いえ、それより侯爵。万が一に備えて如何したら良いでしょう」
そう侯爵に相談した。以前ならキレていたかもしれない。これは明らかな悪手に繋がるかなり危ない行動であるのは間違いないだろうから。
でも今はそれよりこの場面を凌ぐ方法を考えないと皆の命が危ない。
「うんうん宜しい。起きてしまった事を糾弾しても解決にはならないからねぇ。ではその為の策を講じる為に、例のリザード族の族長と会合と行こうじゃないか」
「エルフはどうしましょう」
「後二日ある。この二日のうちにある程度対応出来るようにしておかないと」
「荒れ地からこちらの領土の入る境に見張りと、山の頂上に見張りを三か所其々に配置というのはどうでしょうか」
「それが良い。それに関してはダークエルフに任せよう。こちらはリザード族と会合し、ボブゴブリンたちを見つつエルフとの会談にも備える」
しかしグルヴェイグさんも色々調べたりしてくれていたはず。それが急に首都へ。
僕は一瞬動揺したものの、侯爵と話していて冷静になると他に何かある気がしてきた。




