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湯煙晴れて

「へぇ……ついに姿を現したわけだぁ」

「侯爵は知ってたんですか? この子の事」


 僕は背後から聞こえてきた侯爵の声に振り向き尋ねる。侯爵は面白くなさそうに溜息を吐いた。


「そうだねぇ……まぁ君も薄々気付いていたとは思うけど、君が寝ている間に部屋が荒れていた原因さ」

「と言う事はこの子が僕を護る為に暴れたんですね」


「……我々も知りたくてねぇ。寝てる間にこっそり調べようと思ったんだけど。まぁ結果その姿を見れたんで目的は達成したって訳だ。

「この子は一体……」


―私は星の護りの為の鍵。マスターである康紀の為の存在―


 鍵? この子を使って何かを起動させるんだろうか。


―そうではありませんマスター。貴方を星の護りとして機能させる為に私はいる―


 む、難しいなぁ……。もしかして僕がしたいと思えば何でも出来る?


―無理です。全てにおいて有限であり無限ではないのです―


 そ、それはそうだね失礼しました。


「って言葉に出さなくても会話できてる!」

「意思の疎通が出来るのは君だけみたいだねぇ。我々には何も聞こえていない」


「まぁそりゃそうよね。何があるか分からないし」


 シルフは僕の肩に載ってそう拗ねたような態度で言った。聞こえない事が気に入らないようだ。


「まぁそこは公平にって事なんだろうね。今まで実体化出来なかったのは何がしかの理由がありそうだけれどねぇ」


 侯爵はデムを回りながらあちこち見つつそう言った。確かにこのタイミングでの実体化には理由がありそうだ。


「何かこれは言ったかい?」

「いいえ、まだ」


「康紀の頭の中だけが覗かれるのって不公平じゃない?」

「まぁそんなに大した事考えてないけど……」


―私は貴方の鍵。不必要な干渉をする心算はありません。貴方が力が欲しい時、貴方が危機に陥りそうな時、私は動きます。ただリンク自体を切る事は出来ません―


 僕の何がしかからエネルギーを補充してるとか?


―いいえ。エネルギー自体は他のモノから調達しています―


 今実体化したのはエネルギーを調達できたからって事かな。


―はい。細かくデータを送ると脳に支障が出る為控えますが、大きな要因としては活火山です―


 なるほど……星の血液みたいなマグマの活発なエネルギーを貰ってるのか。ひょっとしてその御陰で活動が沈静化してたりする?


―はい―


 なるほど……これは助かる。急に近くで火山爆発でもしたらどうしようかと思ったけど、デムが一緒に居てくれる御陰で火山の活動を抑えつつ、デムのエネルギーも補充できるって訳か。


―大きな括りで言えばこの星に居る限り問題ありません。ですが距離の関係で近ければ近いほどエネルギーを素早く吸収し変換できます―


 教えてくれてありがとう。心得ておくよ。


「どうやら話は纏まったみたいだねぇ」

「はい。この子がいる限り火山の心配は無いみたいです」


「流石星の護りだねぇ。そんなところまで抑えられるとは」

「でもあんまり過信しすぎちゃダメよ? 貴方は一応人間なんだからさ」


 僕は頷く。シルフは意図的に侯爵との話に割り込んできたように思える。個人的には秘密にする事の程でも無いと思ったんだけど、一応そのままにしておく。


「お話は済みましたでしょうか」


 侯爵の真後ろにアステスさんが控えているようだ。見えないけど声がそこから聞こえる。


「ああ済んだよ取り敢えず。そっちはどうかな?」

「はい。あの不届き物は着替えさせてベッドに放り込んで括り付けてきましたので余計な事はしないかと」


「それにしても彼女は意外と積極的だねぇ」

「無用な乱を招くだけです。即刻帰すべきかと」


「乱て誰にとっての乱だい?」


 侯爵が振り向いて尋ねた時、アステスさんは侯爵の体に重なるようずれる。


「……兎に角湯冷めしますので康紀様は湯船にお入りください」

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