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食糧確保へのはじまり

「それはそれは……」


 ヴェルさんは微笑みながら僕を見ている。怖いなぁ。


「まぁ康紀が成長するまでまだまだ時間が掛かる。ただそれまで国が待ってくれるかどうかだが」

「よっ! 俺もお邪魔するぜ」


 野営地からジャンさんが来たので、ジャンさんの分もお茶を注ぐ。


「良いタイミングで来たねぇジャンくん」

「目敏いんでね。お呼びかと思ってさ」


 ジャンさんは手拭いで汗を拭きながら席に着いた。


「鍛錬の成果はどうかね?」

「まぁまぁだな。元々奇襲野戦専門だから、統率はある程度は取れていた。ただ形式ばって攻めに行くにはドタバタしててなぁ」


「まだまだ戦には難しそうだねぇ」

「リザード族にはまだ追いつけそうにない。隊列の組み方から太鼓の音に合わせて動くのを繰り返している」


「軍隊としては基本的なところに入れるだけで儲けものだねぇ。リザード族は族長の指示にのみ従うからあれは特殊だし」

「だがそれ故にシンプルに強い。あの軍を破るには一筋縄じゃいかないだろう。正直この軍で前面に押し出すならリザード族だろうなぁ今のところ」


「ヴェルくんはどう思うかね?」

「私? まぁ戦場で功を上げるなら先陣を切りたいのは当たり前だけどね。私たちは私たちのやり方で功を上げさせてもらうわ」


「随分謙虚じゃないか」

「無理な事はしないっていうのが信条なのよ。出しゃばらず良い時に視界に居るくらいが良い。その御陰でダークエルフの認知度も上がったわけだしね」


 僕は三人の話を聞きながら頷くのみだった。僕がやっているのは今のところ

其々の間を渡り歩くくらいで、これと言った事はしていない。少し悔しくはあるなぁ。


「エルフが来る前にそうした地ならしをしようという訳だね」

「ええ。康紀以外にもアピールして、エルフとは違う取っ付き易い雰囲気を感じてほしい訳」


「そりゃ良い事だ。どうしたって出身地は同じな訳だし、見た目があまり変わらないからそういうアピールは先にしといたほうが印象は良いかもな」

「でしょ? 印象が良いに越したことはない訳よ。非力が故に他の部分でお役にたてるんだって事を知らせておかないと」


「というと諜報関連でも協力してもらえるって事かね?」

「勿論。私たちがこれだけ早くこっちに合流を決めたのも、諜報の御蔭と言っても過言ではないわ。……というか侯爵は知ってたでしょ?」


 そうヴェルさんが言うと、侯爵はにやりと笑っただけに留めていた。


「そうと決まれば話は早い。早速屋敷の部屋を割り当てるから、アステスくんに付いて行ってくれ。康紀は野営地に一足先に行って、親分たちに農作業の仕方を教えるから集めてほしいと伝えてくれたまえ」

「はい」


 正直こっそり食糧問題を解決して侯爵を驚かせたい気持ちがあったんだけど。

いつか驚かせたいなぁと思いつつ席を立ち野営地へ向かう。


親分たちにそのまま伝え、僕は屋敷に数本あったクワを取りに戻って帰ってきた後、

野営地の端にある土地を耕し始めた。親分たちもやろうとしたけど、僕は暇だからと断った。


「はーい皆集まって!」


 ヴェルさんの声が聞こえ、僕は手を止めて皆と同じように集まった。


「ではこれからこのダーポテトの田植えの準備をしたいと思います。康紀が耕していた範囲の所に、適当な広さで四角を描くように溝を掘って、植える部分が高くなるようにしてください」


 こうして僕たちはクワをもって言われたような形に掘っていく。


「今日は畑を良く耕して、明日植えます。本来はもう少し時間を置きたいけど、元々土地も悪くはないし、いけると思います。頑張って耕して!」


 僕は一心不乱に囲った範囲を耕す。何も考えず耕す事だけを考えているのは、

何だか気持ちが落ち着いていい。たまにこういう作業を今後もしていこうかと思った。

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