エルフとの立ち話
「まぁ正直頭を冷やして来ることだねぇ。悪いけどこの状態で公平な交渉など望むべくもない事は、君たちが私たちの立場になって考えれば分かるはずだ。それにエルフの村の位置。とても国に近いはず。以前の戦いでも襲われかけていたはずだねぇ」
意地悪そうに、そして楽しそうに大げさに言う侯爵。僕は初耳なのだけど、
以前にも襲われかけたんだ……。という事は結界が弱いのかな。
僕は何気なくシルフを見たけど、視線を逸らされた。
まさか……。
「その節はお世話になったわね……。それを私たちは忘れてはいないわ。誰の所為だろうと、結界が弱まったのは事実よ」
「私に少なからず畏怖を持っていたにしてはこのやり方は失策を通り越しているけどねぇ」
その言葉にローズルさん始め爺やさんたちも、厳しい顔つきに変わる。
「……私たちは窮地に立って居る事は理解しているつもりよ。このままダンマリを決め込んだところで、恐らく戦争になれば孤立した私たちがいの一番に狙われる。グラディウス国の北にある私たちの同朋の里も侵入を許し介入を許したと聞いているわ」
「そう。絶対領域ともいえる固い守りに覆われていたエルフの里が、ここ数年でその姿を露わにしてきている。何かがこの世界で起きている。手前味噌でなんだけど、康紀を見て私はそう思ったのさ。だから先行投資をし続けている」
侯爵の言葉にローズルさん達は頷いた。
「……建前として全面降伏は出来ないわ。だけど侯爵への借りや今回の騒ぎ、それにダークエルフの事もある」
「回りくどいのは好きじゃないねぇ」
「……気を使って頂けると幸いですわ」
「康紀はどう思う?」
凄いところでお鉢が回ってきたなぁと思ったけど、今回の事の発端は僕だし
それに侯爵たちの日頃の教えもあって迷わず答えられた。
「もうこの位で。ローズルさんも重々承知のようですし、僕には非が無いかと言われると難しいですから」
「彼らのお願いを聞いてあげると?」
「今回の件を汲んで交渉をさせて頂く、と言う事で良いと思います。ただ他の種族との交渉もありますから……」
「も、勿論です。私の度重なる無礼をお許しいただけるだけでも有難いのに交渉までして頂けるとは」
「こちらから手が空き次第ご連絡と言う事で」
「出来れば早期の来村を希望します。村の者達があの有様ではまたいつ押しかけてしまうか……」
「それはそちらの都合」
「まぁまぁ。分かりました。二、三日のうちに御伺い致しましょう」
「助かります。ではここにブリュンヒルドを置いて行きますので」
「結構です」
アステスさんは言い終わらないうちに断る。その発言に皆の注目が集まったが、
素知らぬ顔で澄ましてらっしゃる……これは触らないのが安全だ。
「えっとじゃあ三日、三日後に御伺いしますので出迎えに来ていただければ!」
何とかそういう事でその場は一旦お開きにした。あのままだと収拾が付かなくなりそうだし。
僕らはボブゴブリンたちに警備を頼んで屋敷に戻る。
「康紀の判断は良かった。ローズルはプライドに固執しないが、エルフはプライドを傷つけられるのが特に嫌いな一族だからねぇ」
「き、気を付けます」
「エルフの村ってのは安全なのかい?」
「そうだねぇ……康紀とジャンくんは問題ないだろう。シルフもね。ただ我々は同行しない方がお互いの為だと思うよ?」
「そうなると何か会った時、自力で脱出しないといけないわけか」
「途中までは行くけどねぇ。まぁ康紀の力なら問題無い。シルフも付けるし」
「やはり何かしら仕掛けていると見た方が良いんでしょうか」
「難しいところだねぇ。それをやったら御終いなのは分かってるとは思うが……あの長老がねぇ」
確かにそう言われればそうだなぁと思った。僕は長老の僕を捕まえようとしたことを
許したつもりはないのに許したことにされてるし。中々したたかと言うか。




