ユグドラシルの木の夢
「やはりまだまだ御一人で歩くのは危険が多いようですね……」
「す、すいません……」
今後は気を引き締めて行かないと、
マジで魂を取りに来られる可能性は高くなる一方だろう。
連合の盟主ともなれば、敵はそこを突くのが一番楽だから
僕に狙いを絞ってくるだろう。そうなればありとあらゆる
手段を用いて狙ってくるのは間違いない。
「……我々も気を付けますが、康紀様も一層気を付けてください」
「はい」
「ではそろそろ夕食前の鍛錬の時間ですので準備を」
僕は立ち上がり、脛の辺りの土を払う。
そしてアステスさんの後に続いて屋敷に入り、
夕食前の鍛錬をこなして夕食の時間となる。
今日は欠けずに皆居たので、今日あった出来事を話す。
「へぇ……そりゃまた大変な事になったねぇ」
「あれ……アステスさんもそうですが、皆さんも驚かないんですか?」
「そうさねぇ……エルフとは何れ交渉する事にはなっていたし」
「ゆ、ユグドラシルさんは?」
その問いに皆は押し黙った。
「俺は康紀の友人としてはっきり言うが、その、なんだ。創造主の一人、っていうのを俺たちは見ていない。そんな想像しがたい者を見れれば良いんだが」
確かに……。僕も話したとはいえ、
現実感があるかと言われれば……。
「アタシの見た所幻術を掛けられた形跡はない。あるとすれば」
「ユグドラシルの木の見せた夢か」
「木が夢を見せる……?」
「そうだよ。あのユグドラシルの木は人……いや微生物が生まれるのと同時にこの大地に根を生やしていたであろうと言われている世界の神秘の一つ。一説には、人型種を繁殖させる為にある程度成長するまでの間、他の生物の能力を落としある生物たちには夢を見せ排除した、とも言われている」
「す、凄すぎますね……」
「創造主ユグドラシルのさじ加減一つで、本来の能力より低い状態で退治しなければならない場合もあると言う事さね。康紀が会話した相手が本当のユグドラシルであれば、幸運はこちらにある」
「それを確実だと我々は言えない。何しろそんな神をも超えたレベルの存在を見たと言われても俄かには受け入れがたいのさ」
ついありのままを報告してしまったけど、
情報の取捨選択は必要なのかもしれない……。
「報告を包み隠さずしてくれた事は俺たちを信頼してくれているからこそだし、俺たちも信頼されていると思うからこそ率直な感想を口にした。お前も誰も彼もと話さないだろうが、幾らファンタジー世界とは言え気を付けた方が良いかもしれない」
「そうですね。気を付けます」
人付き合いが慣れていない所為か、
良くしてくれる皆には何でも話してしまう。
相手の事をもう少し考えて行かないといけない。
僕一人では戦う事すらままならない訳だし……。
「あら冷たいのねぇ人間てさ。同じ仲間なのにさ見た事無いから夢だなんて頭ごなしに否定しちゃって馬鹿みたい。康紀、私には何でも話していいからね? 私はアンタと一蓮托生なんだからさ。相談にくらいのってあげちゃうんだから」
視線は僕の右肩に腰掛ける小さな女の子に集まる。
シルフはアステスさんに投げ飛ばされても戻ってきた。
緑のワンピースをパタパタと動かし、足をばたばたさせている。
「……まぁ風の妖精を連れて来たっていうのも夢にしては悪い夢だけれども」
「妖精が悪い夢なら魔族の成り済ましはどうなのかしらね」
場は静まり返ってしまった。
シルフは分かってて行ってるんだろうけど、怖いものが無いのだろうか。
「いい度胸だねぇお嬢ちゃん。命が惜しくないと見える」
「貴方達が神々だけでなく四大元素を司る我らまでも敵としたいのならそれで構わないけど」
「……君本当に子どもなのかい?」
「勿論”私は”子供よ?」
私は、の部分に僕は引っかかった。
彼女の見た目は子供。だけどその知識は何か不自然さを感じる。
妖精たちは知識を共有している可能性もあるのかな……。
そもそも妖精というのがどういう一族なのか分からない。
「良いだろう。少なくともやり合う気は一応ないと理解しておく」
「私は彼と契約したの。彼が私たちと争う気は全くないから貴方達とも争わないであげるよ? そう理解した方が良いわ」
「忠告どぉーも」
怖い目つきのまま微笑むシルフと侯爵。
これから先思いやられるなぁ……。




