あつきちしお
「ありがとうございます。こちらもそちらが裏切らない限り裏切らないと誓いましょう」
「よろしく頼む。私も心強い仲間が出来て嬉しい。それにしても康紀の力は私の力と違うが強力なものだな」
「姫様の力は凄いですが、康紀様の力は見た事が無い……」
正直僕の力が星の力だろうという事くらいしか分かっていない。
この力が星の力で具体的にどういう原理で
発動しているのか、僕の何かを消費しているのかどうかも
まだ判明していなかった。
「それは我々も同じなのです。ただ康紀様のオリジナルの能力と言う事だけしか分かっていない」
「怖いな。リスクも無しにあれほどの力が出せるとは」
「リスクは勿論ございます。今でこそ立っていらっしゃいますが、つい先日までは使えば倒れる状況でした。それを体力を付ける事で改善出来ました」
「そうか」
この場では一応納得しておく、という感じだ。
こちらも追及されても返答に困るけど。
アステスさんの説明は上手く星の力の部分を避け、
更に当面の問題はクリアの目星がついた事をアピールしてくれた。
流石出来るメイドさんである。
「さぁ取り敢えず一頻り儀式めいたものは済んだ。では早速授業に戻るとしよう」
「え」
「え、ではない。私とリザード族との出会いからこれまでをまだ話してはいないではないか」
「えぇ……」
「えぇ……とはなんだえぇ……とは。有難く拝聴せよ」
いつの間にか黒板も元通り支えられ、
蜥蜴兵たちも元の位置に戻り立っていた。
そこから三時間ほど、シェンリュさん大地に立つから
リザード族との出会いと闘争、友情の始まりから代表となる
までの軌跡をこってり胸焼けするほど熱く語られた。
蜥蜴兵たちも涙無しには語れない出来事の数々だったらしい。
僕の感想はシェンリュさんは男前だなぁと思った次第。
後めっちゃ気になるのが、隣のメイドさんが涙ぐんで
らっしゃるのがいまいち良く分からない。
ツボはどこにあったのだろうか。四年に一度戦って戦い抜く
感じの物語性があったんだろうか……。
「とまぁこんな感じだ。いやぁ改めて語ると照れるなぁ」
がははと笑いながら後頭部を右手でぽんぽんしつつ、
腰に手を当てるシェンリュさん。それをみてコマイニさん
始め蜥蜴兵たちも力強く頷き拍手を送っている。
勿論僕の隣のメイドさんもだ。
僕も作り笑いを携えて拍手を送る。
暫くするとシェンリュさんはまぁまぁと宥めた後
「さて我らの軌跡を聞いてその眠そうな顔にも血が廻ったと思う。ここからはその血を宥めるべく鍛錬を始めたい」
そう言い始めた。眠そうな顔は余計である。
「た、鍛錬とは一体」
「ここで鍛錬と言えば鉱石を掘って運ぶを繰り返す事に他ならない」
「いやそれは労働」
「労働ではない。あくまで鍛錬だ。そこを間違えてはならない。我らの熱き血潮の物語を聞いていなかったのか?」
その言葉に蜥蜴兵たちは力強く頷く。
体育会系のブラック企業じゃないかまるで。
力押し万歳……。
「納得したなら直ぐに行動だ。誰か彼につるはしを」
「自分のがあるんで結構です」
「おぉやるではないか」
「そうなんですよ。なんで屋敷に取りに」
「誰か渡してやれ」
「すぐそこなんでとってきます」
「やかましい」
蜥蜴兵にあっというまに取り囲まれ、
シェンリュさんに逃げ道を塞がれ。
僕はつるはしを持たされたあと、
蜥蜴兵に続きランニングしながら
洞窟の中へ入り、コートを着て
無心で鉱石を掘った。ある程度まで掘った後、
表に出てたらその周りを削るように掘り、
一輪車ぽいものに乗せる。どうやって作ったのか
聞いてみたいが、とてもそんな雰囲気ではない。
皆目を輝かせて掘っている。
ある程度掘って集めて外へ出し。
これを延々と繰り返し続け
「よし! 今日はここまでだ!」
総監督の声により作業終了。
地獄だここは……。




