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力を示す

「やめよ」


 飛び掛かろうとしている蜥蜴兵士を

シェンリュさんは両腕を広げて抑え込む。


「何か狙いがありそうだな」

「そうですか?」

「とても挑発的だ。我が兵が乗り気じゃないのを見越しての言葉の数々。忍耐というものを戦場以外で見れたことは真に喜ばしいが、康紀の罠に気付かないのではまだまだだな」

「いえいえ真実を言ったまでの事。ですが襲いかかられても問題無い程度の備えはしてきています」


 その言葉に蜥蜴兵士はいきり立ったけど、

シェンリュさんとコマイニさんだけは冷静だった。

 敵であれば幾らでも格下だと思って軽く見ていてほしい。

その間に抜け出せぬ蟻地獄へ引きずり込むまでの事。

だけど味方であれば禍でしかない。

シェンリュさんは同じ世界から来たと感じ直ぐに協力的に

なってくれたけど、彼らは違う。

僕が話すまでボブゴブリンの境遇に想いを馳せた事など無かった筈だ。

そうなれば同じくつわを並べる事は出来ても、

表向きだけになってしまい綻びと崩壊のもとになってしまう。

となると僕に出来る事は一つだけ。


「何かお手伝いが必要ですか?」


 アステスさんに耳打ちされたけど首を横に振る。

ここは僕がやらなければならない。力を示さなければ。

理屈だけでなく力も示して認めてもらえたら、

僕を起点に繋がってもらえる。戦いに特化した種族ならこれが

一番手堅いと考えている。


「……どうしてもやると言うのか」


 僕は答えない。シェンリュさんが両手を下ろすと同時に

蜥蜴兵士たちが襲い掛かってくる。


「怠惰の結界(スロウスサークレットプレイス)


 頭の先から指の先まで力を込めて右手を突きだすと

同時に足元から世界の色が消え広がっていく。

その中に飛び込んだ蜥蜴兵たちは、抵抗してみたものの

直ぐに力尽き地面にへばりついて行く。

仲間を盾にして飛び掛かろうと試みる者や

範囲外に飛び出そうとする者色々居たが、

全て無駄だった。もがく事も無く倒れて寝そべる蜥蜴兵たち。


「凄いなこれは……」


 シェンリュさんもコマイニさんも米神に汗を掻いて

見ていた。理屈が分からないから飛び込まない。

賢明な判断だ。もっとも戦いなら十分に引き込んで

発動させる。


「ここから試に狙撃してみても?」


 僕は頷く。シェンリュさんが掌を突きだすと

氷柱が先をこちらに向けて現れ、それが僕に向かって

飛んできた。が、領域に入ると失速し届く前に地面に落ちた。


「なるほど。こんな奥の手があればこその自信なわけだ」

「同盟相手として見届けて頂けますか?」

「コマイニはどうだ?」

「申し分ないかと」


 僕はそれを聞いて手を下げて力を緩める。

領域は徐々に色を取り戻す。僕は鍛錬の御蔭か

倒れる事も無くなんとか立っていられた。

もう少し慣れてくれば、別の事が出来るかもしれない。

だけどおいそれと見せられない分どうしたもんかなぁ。


「お前たちも良いな? お前たちから手を出したのだ。まさか相手が教えてくれなかったからなどといわないだろうな」


 暫くして気だるそうに体を起こした後、

踏ん張って背を伸ばす蜥蜴兵たち。

心底納得した訳ではないだろうが、

負けは負けとして今回は認めてくれたようで

皆頷いてくれた。


「宜しい。康紀が裏切らない限り我らも事が済むまでは裏切らないと誓おう」

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