流浪の民
「という訳で今から私がお前たちにリザード族について教えてやろう」
外の更地の岩の上に黒板を立て、両脇を蜥蜴兵が支えている。
何と言うシュールな光景。そしてどこから出してきたのか、
眼鏡を掛けて木の枝でピシピシ黒板を叩くせんせい事シェンリュさん。
コマイニさんも助手として隣に控えていた。
「リザード族は元々この大陸の出身ではない。更に南にある孤島が出生地だ。十年前に海底火山の噴火によってリザード族は散り散りになり今に至る。温暖な気候を好んでおり、冬は極寒地域においては冬眠を取らなくてはならず、そうでなくても能力は半減レベルまで落ちる。移住は容易ではない。一年のある程度の気候の変化を知らなければオチオチ寝れもしないのでな」
蜥蜴兵士たちも頷く。そうか、それでそう多くはないんだな。
頑強で素早い蜥蜴兵。そういう弱点さえなければ、
人の上に居たかもしれない。
「そんな困難を乗り越えられる肉体的強さは凄いですね」
「ああ。鎧も最低限で良いほど固めの皮膚を持っていて、身体能力も高いのでゲリラ戦に向いている。住まいも簡素でも問題ない。問題点があるとすれば工芸の技術が失われて居る事と、原因は不明だが、出産した子供に謎の病が現れ亡くなる事もある。卵の殻なども調べたが、原因らしい原因を特定出来ずにいる。それ故に劇的には増えていない。異種族間の交配も出来ない。我々が積極的に動かないのもそういった原因がある。ここをボブゴブリンたちから取ったのも、生きる為に致し方ないからだ。攻撃されれば攻撃し返されるのは当然の事」
「確かに。話し合っても譲るのは難しいでしょうね。ボブゴブリンにとっても生活の糧だったでしょうし。住まわせる代わりにそれ相応の事をさせられるでしょうから。ただその為に追われた彼らが苦しい立場に立たされた事も想像出来るかと」
僕の言葉に蜥蜴兵は反応し前かがみになったものの、
シェンリュさんとコマイニさんが手を広げて抑える。
「そうだろうな」
「何より住むこと以外に資源を使って売買し生計を立てている上に貯蓄までしている。仕方なかったでは済まされない。貴方たちも島を追われた後の事を忘れたわけではないでしょう」
「正直皆はお前との同盟に関して反対意見は多かったが、ボブゴブリンたちがお前を支持していると聞いて、受け入れたのだ」
「それは有難いです。出来ればこの地域を確実に確保し、彼らに新しいしっかりとした居住地を作りたいんです。侯爵から間借りしている状態なので。今の所ボブゴブリンが一番最初に力を貸してくれて、次がダークエルフ、そしてリザード族。今後領地を認させれば貢献に応じて報いたいと思います」
「盟主とは言え大きく出たな……」
「ならボブゴブリンの代表かダークエルフの代表か、はたまたシェンリュさんが代表になりますか?」
そう、僕が盟主となりボブゴブリンが付いた。
種族間のいざこざが無いのは僕だけだろう。
また侯爵が後ろ盾として居る事もあるのが大きい。
「足元を見られていると言う事だな」
「正直国と言う大きな相手に従うか抵抗するかの二択ですから。但し向こうは核を失い疑問符が付いたまま再統一に動き出した。現状を打開したいまた出来るチャンスを逃さず何も捉われず動いた結果かと」
「……一つの種族だけでやれるものならやってみろと言う事か」
「この領地は侯爵が居て本国にアダガ王が居てこそ勝手が出来た。しかし今やその王はいませんし、国は牙を見せた。各種族も偵察は出したでしょうが、今までの事から手を組みたくても言い出せない」
「火事場泥棒か」
「遅きに失した、でしょうね。シェンリュさんと蜥蜴兵なら上手くすれば先頭に立てたでしょう。やはりボブゴブリンが活用していた鉱山から追い出したのが不味かった」




