熱い村の人々
日課と食事等を終えて睡眠をとり翌朝。
また部屋が荒れていた。これいつになったら
何とかなるんだろうか。
「おはようございます」
「おはよう。随分なれたみたいだねぇ」
「アステスさん……無事で良かった」
「おはようございます」
見た感じ侯爵とアステスさんは変わらない。
だとするとあれは一体何なんだろうか。
取り敢えず疑問には相変わらず答えてもらえず。
そのまま朝食を取り、グルヴェイグさんから
下りられるところまで下りて火口付近にまでいけたら
その様子を見て来てほしいとの事。
熱さ対策にレインコートの様なものを渡された。
しかも花柄……。
魔術が掛けてあり、耐熱冷房完備らしい。
怖くはあるけど安全の為に確認するしかない。
僕は意を決して蜥蜴兵士達の村へと向かう。
鉱山の麓まで来ると、シェンリュさんが
槍を手に蜥蜴兵士たちと共に一心不乱に空を突いていた。
僕は邪魔をするのも悪いと思って、
終わるまで近くの切り株に腰掛けて待っていた。
「よく来た。良い子だ」
「一応僕の方が年上だと思うけど」
「精神的には私の方が大人だよ」
「そういえばきちんと名乗って無かった。改めて、僕は久遠康紀。二十二歳ですよろしく」
「二十二か。挨拶がきちんと出来て偉いぞ康紀。姉やもそう思うだろう?」
シェンリュさんは僕の手を握りながら笑顔で
後ろに問いかけた。僕もその視線を追うと、
僕の斜め左後ろにアステスさんが
何事も無かったかのように立っている……。
「大丈夫か?」
「いや少し驚いて……」
握手したまま膝をつき項垂れる僕に
優しく声を掛けるシェンリュさん。
これじゃ年齢が逆のようだと思われても仕方ない……。
「しかし姉やの躾が良かったのだな。我らの稽古が終わるのを待てたのは」
「恐れ入ります」
……言いたい事はあるけど肩を窄めるだけにして
話を進める事にした。
「今日は火山の状況を見せてもらいに来たんだけど良いかな」
「ああ」
「誰か一緒に来てほしいんだけど」
僕が蜥蜴兵士に視線を向けると、誰も返事が無い。
厳しく統率が取れているようだ。
「私は代表として行くとして、その間の代行をデュメリルに。後は」
「お言葉ですがシェンリュ様」
「意見するのか?」
シェンリュさんの声に場が凍る。
これは言葉だけじゃない。地面からパキパキ音がし、
木の葉が少し白くなった。
「いえ。シェンリュ様が行かれるより、私めが」
「お前の事は信頼しているが、相手の代表が来たのだから、我々もそれに答えるのが礼儀だ。それ故に後事を託すのだ」
「しかし……」
「であれば我をお連れ下さいシェンリュ様」
「……キンバリー……お前は調査などと言う大人しい仕事には向くまい。私がお前を腐らすような仕事をさせる間抜けに見えるのか?」
「いえ! 失礼しました!」
「であれば!」
「是非とも某を!」
熱い……熱い蜥蜴兵士たち。
我こそはと名乗りを上げる。
……まぁ僕への視線は刺さる感じで怖いけど。
「ただ様子見なら私が!」
後方からまつ毛の長くローブを着た
蜥蜴兵士が出てきた。
「コマイニか……そうだな。荒事ではない故お前が適任だろう」
「はい! 姫の御付として役目を果たします!」
「頼むぞ。客人であり同盟相手を無事帰せないとあっては我らの名に傷がつく」
「はっ!」
蜥蜴兵士たちは隊列を組み直し武器を掲げて返答した。
めっちゃ怖い……統率取れすぎでは?
「というわけだ。コマイニは私の傍付。いつも世話になっているリザード族の女性だ」
「初めまして、コマイニと申します。失礼が無いようご案内させて頂きます」
「コマイニさん宜しく。康紀と言います。この辺りは詳しくないので頼りにしています」
僕が手を差し出したものの、シェンリュさんに叩いて流され、
アステスさんによって引込められた。何故だ。
「姉や、こういう教育はしたが良い」
「心得ています」
挨拶って感じで握手しようとしただけなのになぁ。




