ウタガイ
「当たり前だ。私はここに送られるようなことはしていないし、役に立てることも無い。家の事をするのに忙しいのでな。私としては何かの要素で送られたのだろうと推察している。のでそれを解決してさっさと帰りたい。その為にお前たちと一時同盟を結ぶ」
「それは願ったりかなったりです。よろしくお願いします」
僕は手を差し出すと、シェンリュさんは一瞬戸惑った
顔をしたものの、僕の手を握ってくれた。
それから一旦引き上げた後、侯爵に報告をする。
「そうか、それは上々」
「はい、運が良かったと言うか」
「運が良い……ねぇ」
侯爵は僕の言葉にそう呟くと、
テーブルの上に肘を乗せ手を組んだ場所に口を隠した。
そして目線を横へ流す。
「偶然ではない、と?」
「こんな事を言うのもなんだけどねぇ。あまりにも都合がいいのさここは。未開拓の大地に交流が取れなくもない種族とその特性」
「侯爵もそれを知ってここを?」
僕の問いに一瞬僕を見たが、直ぐに目線を逸らした。
「ファウストが言いたいのはさ、アタシたちも嵌められたんじゃないかって事じゃないのかい?」
「言葉にしないでほしい古い友人よ。私にも堪忍袋が備わっている」
「アンタだけじゃない、アタシも嵌められてるんだ。怒ったっていいだろう?」
「君が本当にそう思っているのならねぇ」
火花散るグルヴェイグさんと侯爵。
「今はその答えを導き出す為に前に進むしかありません。ここでジッとしていても何も変わりませんから」
僕に視線が集まる。
「その通りだけどどうしたんだい?」
「いつもより前向き且つ強引にねじ込んできたね」
二人から突っ込まれる。
自分で思い返しはっとなる。
思いっきり影響されてしまった……。
「まぁ美人には弱いよな。特に良い女には感化されやすいのは納得だ」
「え」
ジャンさんは普段サポートに徹してくれているものの、
事女性関係に関しては前に出てきてしまう。
「なるほどねぇ……分かる話だ」
「なるほどなるほどこれは隅に置けないねぇ」
「いや、ただ会って交渉しただけじゃないですか」
「影響されるって事はそれだけ魅力的に感じたんだろう?」
「ジャンさんまで何を……」
ちらりと脇を見ると、アステスさんは真顔で前を向いている。
特に怒ってないようで安心した。そりゃそうだよねちょっと
取り入れてみようか程度だと思うし。
「何か?」
記号を入れて三文字。ですが何か音が二つ聞こえた気がする。
表向きはいつものクールな声が。でも何かもっとドスい声が……。
「と、兎に角ですね。火山の調査をしたり避難経路を確保したりしていきましょう。それ以外にも彼らと交流して良い策が出来れば」
「彼女と交流して策が出来るといいけどねぇ」
「違うものが出来たりして」
「それはそれでよし」
……大人の悪ふざけが始まった……。
僕はアステスさんに助けを求めようとしたが、
微動だにせず前を向いたまま。
「何か?」
僕が聞きたいと言いかけたが止めた。
僕も命が惜しい。まだ死ぬ訳にはいかない。
ここにきた本当の訳を知るために国を作る。
あの泉の人が答えられるっていう保証はない。
だけど信じる他ない。
「私とグルヴェイグでその辺の事は調べてある。明日にでも早速調べに行ってもらおう」
「誰がです?」
「康紀だよ。ジャンくんにはいい加減錬兵について話しをしたいし、グルヴェイグは交易に関して古い伝手を当たってもらえるので頼んであるし、アステスは街にお使いを頼んである」
「えぇ……僕一人で調べられます?」
「楽勝さ。そう難しい事は要らない。ただし時間が掛かる。何なら一日泊まってきても……」
「いえ直ぐ帰ってきます」
「交流をしてきても良いんだよ?」
「……兎に角一刻も早く調査を終えて帰ってきますんで」
「そうなるといいなぁ」
何故かジャンさんにまで煽られる始末。




