第一回会議
「な、な……に!?」
ピンクの髪をした魔法少女は、スローモーションになっている。僕は灰色になった世界を歩くが、スローモーションではない。
これが僕の力?
「僕だけが……。前なら俺以外が進んでいたのに」
この世界に来てそれを反転させる力を得るなんてなんて皮肉……。僕は戯れに彼女の口を手で塞いでみた。が、直ぐに気を失ってしまう。
「おい!」
外からの声に気がつく。ジャンさんが青ざめていた。僕は多分この娘の事でヤバイと感じてるんだろうと悟った。しかし止め方が解らない。
「これを何とかしろ!」
えーとどうすりゃいいんだ?
「結界解除」
と口にしてみたら、灰色の世界は色を取り戻した。同時に魔法少女は咳き込む。それをみてジャンさんは膝から崩れ落ちた。
「魔女ヲコロセ!」
ゴブリン達は少女へ駆け寄ろうとしたが、
「止めろ」
と僕が声を掛けると動きを止める。さっきゴブリンを止めたことと良い、この力は限定的なエリアでの相手の活動を阻害する能力のようだ。
「で、彼女は何?」
「それは……」
装飾が豪華なゴブリンは話し始める。ゴブリンというのは元々獰猛な生き物だ。それでほぼ奪うことに特化していて生活もその通り。要は生産性がない。
「なるほどね。それで彼女がお前らを退治しに来たんだ」
「そうだ……」
「となると彼女にも言い分はある。お前の能力は突然出たものだ。だが怒りに任せて殺めたりするな。この娘がどうというより、お前の心に消えない傷が残って苦しむだけだ」
そう言われてジャンさんの慌てようは徴兵によって軍に所属し、派兵された時に何かあったんだろうと窺わせるものだった。
「ゴブリン親分、縄ある?」
「あ、あるけど」
「貸して」
ゴブリン親分から縄を受け取ると、彼女を縛って担いだ。異世界に来て能力はアップしているらしい。そのまま僕たちは一旦街へ戻ることにする。
「な、なんだ貴様ら!」
「え、何だっていうのは」
「その後ろの奴らだ!ゴブリンなど連れてきおって!」
「ああ」
僕は納得して引き返した。総勢十人位が続いて離れる。
「良いのか?街に入らなくて」
「え、なんか皆でだと今入れないし。ゴブリン親分、どっか座れるところ無い?」
「あ、こっちへ」
何だろう皆僕を見ながら歩いている。魔法少女はあげないけど。
「ど、どうぞ」
暫く歩くとゴブリン親分たちは立ち止まる。そして木を小さな斧で切り倒して切り株にし、一箇所を高めにして僕に座るよう促した。
「ありがとう。皆も掛けて」
なんだろうどうもぎこちないけど良いや。僕は切り株に腰掛ける。魔法少女を地面に置く。
「改めて自己紹介するけど、僕は久遠康紀。この山一つ向こうの荒野に国を作ることにしたから。君らにも協力してもらうね」
皆僕の顔を見て動かない。なんか心臓がドクドクする。なんだこの沈黙。ジャンさんも困惑している………そりゃそうだよなぁ。
僕も正直色々混乱している。こういう事に慣れてないし、大人数の前で自己紹介とかした覚えもない。……改めて何で国を作る事にしたっていきなりいってしまったのだろう。
「えーとえーと。今住む場所もないし、自分で家作ろうと思ってて。それでよかったら君たちもどう?的な」
皆変わらず不動である。参ったな……どう上手く言ったらいいのか……。
「まぁ彼らはお前についてくるみたいだから、押し切っちゃおう。俺の国じゃそういうノリで会社作る奴もいるしな」
ジャンさんのノリの良さ助かる。それを見てゴブリン親分は口を開く。
「良いけど、俺たちよく解らない」
「どういうことが解らないんだ?」
「先ず名前、なんて呼んだら良い?」
僕は唸る。呼び方かぁ……。王様っていうのも変だし……。
「まぁ隊長で良いんじゃないか今のところ」
「そうか。なら隊長、俺たち家解らない。国も解らない」
ゴブリンたちは頷く。なるほどね。奪うことしか知ら無そうだもんな。




