新たな影
「何の騒ぎだ?」
「ジャンさん、これ」
僕はジャンさんに箸を動かして見せた。
「ああ日本人は普通だよな」
「親分たちも使うみたいです」
「彼らも器用だからな。俺の知るところエルフも使ってた」
「エルフもですか?」
「ああ。この大陸では殆どがナイフとフォークだったから、他で見かけた時目立ったんだ。そういう点では共通項がありそうだな」
「ですね……」
そういうところからでも入り口が見えるのは有難い。
「しっかし不格好でもなんとか窯になったみたいだな」
「はい何とか」
「……俺も一つ作ってみるかな、窯」
「ピザ用ですか?」
そういうとジャンさんはにやりと笑った。
それも面白そうだ。
「そうなると出来ればどこかに畑が欲しいですね。小麦をこの付近で栽培したい」
「やっぱり荒れ地かなぁ。森を切り開いて畑を作るにしても、そう大きくは出来ないだろうし」
「クワとかを作れる鍛冶場が欲しいですね。後鉄鉱石も掘りたいし……」
「鉄鉱石必要か」
「親分は掘れそうなところ知ってる?」
「勿論知ってる。でも……」
親分やボブゴブリンたちは顔を見合わせた後、
暗い表情になった。
「何か邪魔する奴がいるみたいだな」
「親分、話してみて」
僕が促すと、親分は話始める。
以前ボブゴブリンは鉄鉱石を掘って他に売りながら、
自分たちでも焼き物に使ったりもしていた。
それがある日現れた者たちによって乗っ取られ
場所を追われたとの事。
「そいつらってどんな奴らだ?」
ジャンさんの問いに親分たちは言い淀む。
僕たちは急かさずゆっくり言葉を待った。
「竜のような奴らと人が居た……」
「竜!?」
僕とジャンさんはハモる。
「おいおいマジか……」
「RPGゲームの世界って感じがしますね、竜が出てくるとなると」
目を輝かせて拳を握り合い向かい合う僕とジャンさんを
親分たちは訝しんだ。
「そうなったら一度侯爵に話して行ってみるか偵察に」
「はい。どちらにしろ時間も無いですし、そこを確保できればアドバンテージが出来る」
「竜のような奴ら強い」
「親分たちより背は高い?」
「二メートル位。細身だけど動き早い。体固い。それにあいつらを支持している人が居るから大変」
「指揮を執っているやつがいる、と?」
「そう。あっという間に追い返された」
これは鍛錬の成果を試すには良いかもしれない。
僕はそう考え、時間も時間だったので親分たちと別れて
屋敷へ戻り侯爵へと報告した。
「なるほどねぇ。康紀、やはり交流は必要だろう?」
「……はい」
「交流があれば知らない人間とは訳が違う。そういう情報も出てくるし、更に仲が深まれば自然と教えてくれる。最終的には困るほどになる」
「それ位の信頼を勝ち取れ、と言う事ですね」
「完全でなくて良いんだよ? この世界の誰しもに好かれるなど不可能だ。要するに統率して戦場を生き抜ける程度の信頼は欲しいと言う事さ。それには情報が必要だろう? この話が聞けなければ、我々は知らずに他へ攻めて背後を襲われた可能性さえある」
「……相手も出方を窺っている可能性がありますね」
「だろうね。何をしているのかとても気になっているはずだよ? ダークエルフが粘土質の土のある崖の近くを偵察していたのも、ひょっとするとそれらが来ると思ってのことかもしれない……」
「それほど竜は脅威なんですね」
「竜であれば、ね。竜は繁殖力が無いが、この世界の生態系のトップに君臨する連中だ。なので予想ではよくて竜人、あとはリザードマンの可能性もあるな」
「リザードマン、ですか?」
「人とは別れた存在。彼らもまた最古の存在だよ。彼らは蜥蜴から進化を遂げた。ドラフト族と並ぶ存在だ。故に保守的で普段は火山帯にのみ生息している」
そう言い終えた後侯爵は顎に手を当てて俯いた。
「詳しく調べる必要がありそうだね……。リザードマンであれば、ひょっとすると活火山状態になった山があるのかもしれない」
「そうなると地形が変わる可能性が……」
「戦争どころじゃないな」




