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ダークエルフの村へ

「……性悪メイド。いつまで引っ付いている気だ」


 ヴェルさんは無表情でそういった。アステスさんも無表情で無視。

冷たい空気が森の中を駆け抜けていく。

陽が差して穏やかな日なはずなのに寒気がする……。


「良いだろう。まぁ今日は別の要件で来た」

「何でしょう」

「康紀、お前をダークエルフの里に案内したい」

「え!?」


 俺はアステスさんの顔を見る。

相変わらず無表情だけど、少し怒気を帯びた気がする。


「我々も人と交流するのはやぶさかではない。但し相手によるがな」

「何を企んでおいでで?」

「お前じゃあるまいし私たちは企んではいない。我々とて我々のみで長生き出来るとは考えていない」

「エルフらしくないお言葉ですね」

「……エルフと我々ダークエルフは元は同じでも今は違う。あいつらは閉鎖的な空間に閉じ籠り自分たちのみを慰めているだけだ。我々は森を育てながらも多くの人々と交流をしている」

「エルフの技術を切り売りして、ですか?」

「……互いに技術を教え合い交し合う。それこそが交流なのではないか? お前たちのように腹に一物ありながらも近付く奴らとは違う。そういうところを見せようと言うのだ。それが怖いのか?」


 不敵に笑うヴェルさん。何かアステスさんたちが隠していることを

知っているような感じだ。


「安心するが良い。私たちはお前たちのように相手を利用する事無く交流するかどうか決める。我々に隠し立てする事など何もない。腹を見せてやると言っている。康紀、どうだ?」


 ヴェルさんは僕を見て問う。これは僕が決める事だ。

僕とヴェルさんの話だ。なら答えは決まっている。


「是非」


 それに対してヴェルさんは微笑む。


「流石だ。メイド、お前も来るが良い。格の違いを見せつけてやる」


 アステスさんは反応が無い。

ヴェルさんが振り向き歩き出す。

僕は台車をそこに置いて後に続く。

が、アステスさんは付いてこない。


「アステスさん、行こう」


 僕はアステスさんの手を取りヴェルさんの後に続く。

森を更に東南に進んでいく。木々は多いものの、

道は整備されていた。物資の運搬の為だけではなく、

恐らく戦う事も考えての舗装だろうと思う。

川に掛けられた橋を二つ渡り、目の前に村らしきものが見えてきた。

そしてヴェルさんよりも背が高い男性が門の真ん中に仁王立ちしている。

ガッチリした体格で髭を生やした威厳のある風格。

門兵ではない。僕は一瞬身構えた。


「……よく来た、と言いたいところだが、何をしに来た」

「えっと初めまして、康紀と申します。この度はヴェルさんの案内で」

「私はそのヴェルの父、ノルンだ。私が連れて来いとは言ったが……その有様はなんだ。喧嘩を売っているのか?」


 何故だかピキピキしてるなぁと思ったら、

いつの間にかヴェルさんは僕の腕にしがみついてるし、

アステスさんも隣にくっついている。


「おわ!?」

「おわ!? ではない。お前たち、彼から離れなさい。……聞こえているだろう? 離れたまえ」


 二対一で睨みあっておられる……。

僕は解こうとして足掻いてみるが、

両腕をがっちり押さえられて身動きが取れない。

こんな状態からどうやって逃げればいいんだろうか……。


「……全くどいつもこいつも……。兎に角離れて中に入りたまえ。客人を立たせたまま持て成せば、私の品位を問われる」


 僕はそう言われて頑張っているが、

二人とも拘束を解いてくれない……。

腕を固められてる気がする。真面目に動けない。

また少し睨みあったものの、ノルンさんが折れて

振り向いて中へと入っていく。

両側に門兵が居たが、微妙な顔をしていた。

どう考えても僕は連行されているようにしか見えないから

だと思うけど。


「座りなさい……」


 ノルンさんはげんなりした顔で僕を見ている。

お父さん僕もなんですよ奇遇ですね、なんて言ったら

殺されてしまうだろう。

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