学び
そう答えて暫く立ち尽くす。
去る者たちが後で後悔するほどの
成果をあげなければ。
思いを新たに一息ついた後、
アステスさんと一緒に屋敷に戻る。
「なるほどねぇ」
侯爵たちは門の前の中庭にあったテーブルでお茶をしながら
待っていてくれた。
僕はボブゴブリンたちとの話を侯爵に伝えると、
侯爵は目を細めて口を真横に開き閉じた歯を見せた。
納得していない様子だ。
「まぁ君のキャパシティの問題としてそれくらいが限界と決めつけたのはどうかと思うが、確かにエルフとの事を考えるなら分かる」
「数は力だからなぁ。それにエルフってのは見栄っ張りっぽいし、こちらに与するならボブゴブリンたちの数を上回る者たちを連れてきてくれるかもしれないから、そういう意味では釣れるかもしれない」
「信頼度においては一度懐に入ってしまえばボブゴブリンの方が高い。次いでドラフト、オークと続く」
「エルフって信頼できないんですね」
「元々相容れず閉鎖的な一族だからねぇ。信用は出来ても信頼は出来ない。まぁエルフは置いといて」
侯爵は表情を変えずにジャンさんを見る。
「何か?」
「何かじゃないよジャンくん。分かってるだろう?」
「分かりませんね」
「君も存外意地が悪い」
「言い方に棘があるな」
「棘どころかドスぶっすりさぁ。私に何もかも言わせる気かい?」
「あんたと俺が同じかどうか」
「同じだろう?」
僕は良く分からないので二人を交互に見る。
「……はぁ。人其々のやり方という物がある」
「君のやり方は?」
ジャンさんは更に深い溜息を吐く。
「俺なら連れて来た非礼を詫びて状況説明。謝罪は無くても良いが、説得を試みる」
「他には?」
「食料や滞在期限は確認後回答。戦端が開かれる間近に退避でも可」
「その理由は?」
「心の問題だ」
「と言う事だ康紀」
「はい……」
「君の行動や言動は実にシンプルだ。故に感情や心の部分を削ぎ落としている。それで人は死ねるか、と言うとそんな事は無い。数字のみで人は動かない。ならどうする?」
僕は言葉に詰まる……。
確かにそうだ。殺されそうだから戦う。
それはそうだけど、纏まって対抗しようと言うなら
協力し合わなければならない。
事実だけで切り捨てて行ってはきっと何も残らない。
僕は切り捨てられてきた側の人間なのに。
「私は問題無いんだ。君に興味がある。失敗も成功も君という人間が出した結果だ。だが育てている側の者として見ると、そうもいかない。失敗に対して何故失敗であるか学ばないと。それが破滅への切っ掛けになるかもしれない」
「……特にこういう時代ですから。恐らく気付いた頃には取り返しが付かなくなっているかと」
「そういう事だね。これが正しい正しくないを机の上で教えるには難しい。人の数だけ正解もあるし、流れもある。肌で感じないと」
「皆意地が悪いなぁ。俺は康紀の相棒だ。ある程度はひっくり返すぞ」
「君たち二人だけで生き延びるならそれでもいいだろうが、同盟を我々は結んでいる。そういう相手と康紀は同盟を結べないと理解しているね?」
……エルフの話かぁ……。
「意思の無い人形なら動かす者の意思次第だからそれでも良いだろうが、生きている人間が纏まって動く場合、そこには心がある。それを忘れて戦うなら、君の背中にこそ剣は向けられてしまう」
「気を付けます……」
「アタシたちはアンタがそういう奴じゃないと思うからこうして話をしている。まだ本当のところどうなのかは分からない。今のところまだまだお子ちゃまが抜けられていない」
「はい……」
確かにこの中では一番子供染みている。
分かり切ったことは聞きたくないが、
僕の事は聞いて欲しいなんて身勝手にも程がある。
「まぁ君は一人じゃない。我々が居る。その都度話そうじゃないか。と言う事でリカバリーを頼むよジャンくん」
「ったく最初っからその心算で言わせたな?」
「勿論だとも。相棒の失敗は相棒が取り戻さなくちゃね」
ジャンさんは溜息を吐いた後、
肩を窄めて席を立った。
「お前は気にするな。互いに支え合うのが相棒ってもんだしお前は俺より年下だ。少しは良い恰好させてもらう。あの偏屈教育者が気に入らないだけだ」
と僕の肩に手を置いて言葉をかけてくれた。
そしてそのままボブゴブリンたちのいる方へと
歩いて行く。僕も着いて行こうとしたが、足が止まった。
「そう、行くべきじゃない。君は冷たい男だと見られている。フォローをするならジャンくん一人で良い。ひょっとすると一悶着あるかもしれない」
「反省します」
「多いにしてくれたまえ。しなくても良い事をさせてる時点で失態だ。点数で言えば付けられない。だが初戦なんてそんなもの。考え方は悪くない。修正して次に生かし、点数を付けられる事を楽しみにしている」
「そういうこった。失敗をしない人間は居ない。また失敗を恐れてはいけない。寧ろ失敗する事の方が多い。それを如何に小さくしリカバリーするかが問われてくる」
「頑張ります!」
僕はしょげていたが、
精一杯声を張り上げた。




