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ボブゴブリン族との話

「よく来た」

「どうも」


 親分より体が少し大きく、

頭の飾りも豪華で鎧も装飾が

細かいものを着ているゴブリンが

声を発した。

僕もそれに対して返答する。

互いに笑顔はない。


「で、親分話というのは?」

「ああ。はっきり言うが、俺たちはお前に着いて行く」

「ありがとう」

「だが他は着いて行かないようだ」

「構わない」

「一つ聞きたい」

「何だろう親分」

「ここはいつまで居られる?」


 その言葉に僕は横に来たアステスさんを見る。

表情は変わらないが、厳しさは伝わる。

僕はそれを理解して親分たちをみつつ告げる。


「そうだね、親分たち以外は早急に離れた方が良いと思う。ここに居ると言う事は僕たちに与したとみられても仕方ない。元居たところに帰るなりする他無い。あそこに居続ければ来ていた国の兵士たちに討伐されていただろうけど、今は帰ったようだからその後どう身を振るのか考えればいい。生憎と身内以外これ以上守り続けるのは無理がある。協力はしないけど守れとはまさか言わないよね?」


 ある程度言われそうな事を先んじて言ってしまった。

言いたい事は誰にだってあるだろうが、

別に聞かなきゃならない事もない。

生憎そういう無駄なやり取りは嫌いだ。


「そんなに直ぐには動けない」

「勿論。その間は食料もある程度融通はするけど、一月も二月もは困る。協力してくれる親分たちにその分増やしたいし」


 僕の言葉に親分や元々僕たち寄りだった

ボブゴブリンたちは少し歓喜した。


「オレたちはお前たちの情報を売っても、国に協力しても良いのか?」

「構わない。親分たち以外のボブゴブリンの行動を制限したりはしない。けどここからは退去してもらわないと危ないし、食料も多少融通は出る時にだけ出来るけど」


 特に僕たちの情報を売られた所で、

現時点で困る事は何もない。

何よりボブゴブリンを討伐しようとした

人間たちがそれを聞くとは思えないし、

街は僕たちの動きを聞いて怯えるだけだ。

下手をすればボブゴブリンたちは処理される。


「オレも聞きたい。味方に付いたらオレたちに良い事はあるか?」

「今ここで居住する事や食事は侯爵から援助を受けているけど、これから色々動く事で広がるし変わる。当然最初に力を貸してくれた親分たちに僕はそれ相応に報いるつもりだ。あまり具体的に言うと他に漏れたら大変だから後で話す」

「オレたちはお前の話を聞きたくて呼んでもらった」

「此奴、オレの隣の村のボブゴブリンでガドっていう」

「こんにちわ。親分、出ていく人たちには距離を取ってもらっても良い? なるべく情報を漏らしたくない」


 親分は頷き親分より背の高い

ボブゴブリンたちに後ろに下がるよう

誘導していく。


「聞きたい事っていうのはなんだろう」

「お前たちはどうするか聞きたい」

「そうだね。先ずはこの周辺の領土をしっかりとした形にして、国からの過度な侵攻を止めたい。元々侯爵とグルヴェイグさんの取り持ちで皆の自主性に任せていたのを、国は認めないからゴブリンを使って手を伸ばしてきたんだ。国によって更地にされたいと言うところは放置しようと思うけど、全部がそうじゃないと思って」

「その代表をお前がするのか?」

「そういう事になる。康紀と言います。よろしく」


 僕はグルヴェイグさんの授業で練習させられている

笑顔を頑張ってしつつ手を差し出した。

ガドというボブゴブリンの族長は、

僕の手を握る。暫く握っていたがやがて離した。


「……なるほど」


 なんか良く分からないけど何か納得したらしい。

手の方は全く怪我もないけど。


「勝算は?」

「必ず勝てるとは言えない。勝つ為に人を、数を求めている。国と相対し交渉するにも集団としての力が欲しい」


 あの強引なやり口でまともな対応を

期待するのは無理がある。

ただこちらが勢力として成立すれば、

懐柔せざるを得なくなる。

現時点で国に加担しても二束三文は間違いない。


「オレたちでも役に立つのか」

「頼りにしたい。戦に限らず、戦い方にも色々あると思っている。親分たちは手先が器用みたいだし、そういった経済方面の戦いも考えている」

「経済での戦い?」

「ここでしか、親分たちボブゴブリンでしかできない物とかそういうのを本国とか周辺諸侯の街に売ったりして稼ぐ。それを更に別の所に投資したり本国でも職にあぶれた人を雇っても良い」

「そういう事も考えているのか」

「血を流すだけじゃダメだって毎日言われてるし、僕もそう思っていたからね」


 侯爵よりもグルヴェイグさんがそこにはとても厳しい。

如何に血を流させずに勝つかを毎日問われている。

血を流すのは誰でもできる、上がそうだと破滅すると。

僕に魔術の才能が無い事を確認した後は、

地理と一緒にそういった事も多く学んでいた。


「ならうちの嫁たちも力になれるかもしれない」

「それは有難い……助かるよ。僕にはそういう方面の知識が無いから。何が名産で、とかそういうの」

「任せてほしい」

「ああガドさん、もしどうしても嫌だと言う人は引き止めないでくれると嬉しい。無理やり連れて行くようなことはあまりしないようにしたい」

「分かった。皆に伝えてきても良いか?」

「どうぞ」


 ガドさんが離れていくと、

横から少し袖を引っ張られた。


「そのまま前を向いたままで。あれで宜しいのですか?」

「無理強いしたところでね。正直確実に勝てるまでは地道な事の繰り返しも多いし、剣を交える事も出てくる。無理やり人の命を奪わせたくはない」

「説得をしなくて宜しいのですか?」

「五分五分とかあと少しで勝てるとか、そういう状況ならそうするけど、僕自身ボブゴブリンという種族を良く理解していないのもあるんだ。どういう性向なのかとか。気のいい種族ではあるんだろうけど」


 正直親分たちが居てくれるだけで、

個人的には今のところ十分で。

大軍を何れ率いなければならないとしても、

まだその時ではないと思っている。

種族感の関係性とかも熟知している訳じゃないし、

特にプライドの高そうなエルフの人たちが

与してくれるとしたら、ボブゴブリンたちの

後になる。その葛藤とか。数がエルフの方が

多かったりするとそれで心理的優位を保てる

かもしれないし。


「ちゃんと考えていらっしゃるならそれで」

「何かアドバイスありますか?」


 そう僕が振ると暫くして


「できれば去る者たちにも、後の誼を繋いでおくのが宜しいかと」

「了解。侯爵に彼らの逗留の件と物資の件頼んでみよう」

「侯爵は欲張るかもしれませんが」

「僕にはこれが精一杯」

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