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動き始める僕たち

 なんというか世知辛い話である。

表向き見ていると綺麗そうな話も、

裏ではそういうドロドロした部分が

ちゃんと流れている。

 ただ嫌悪感を抱いてばかりもいられない。

国として生きながらえるためには

賢い選択なのだろうし、

国民も支持しているのだろう。

そうして足場を築き強い国を作ったが故に

繁栄している。


「やっぱりどう考えても誰かが意図してこの国の足場を揺るがしたんですよね」

「まぁね。君にとってはそれはチャンスだろう?」


 そう言われてはっとなる。

レイナさんを助ける事ばかりに気を取られて、

自分が何をするのか忘れてた。


「忘れてたって顔だな」

「仕方ないさ。ここの所鍛錬に勉強と詰め込みまくっている。ジャンくんですら嗚咽を漏らすくらいに」

「……すまん……」

「い、いやそんな! 僕はこの周辺に居るだけで良いんで。ジャンさんよりは楽ですよ」


 呆れた顔をしたジャンさんに、

グルヴェイグさんが紙を一枚渡し、

それをみてジャンさんは悲痛な顔をして

謝罪した。なんでだろう。


「ジャンくん、彼はとんでもないびっくり人間かも知れないねぇ」

「いやまぁ異世界から来たんで強くはあると思ったけど……」

「アタシたちも適当なところで根を上げるかと思いきや、全く涼しい顔をしてるからね」

「期待に応えてくれたと喜んでいいのか、我々に落ち度が無いか慌てさせた事に賞賛したら良いのか分からないんだよねぇ」

「一刻だって時間を無駄には出来ませんから」


 三人プラスアステスさんまで溜息を漏らす。


「頑強である事も取り柄ではあるだろうが、最早武器なんじゃないかと思うんだよねぇ」

「ひょっとするとあの力はそういった人間のみが持ちうるものなのかもしれないね」

「なるほどね。そういや筋肉の付が出会った頃と違う」


 三人はまじまじと僕を見る。

何か気恥ずかしいなぁ。


「まぁ言葉通り一刻も無駄にせずここまで来た。ジャンくんも帰ってきたことだし、そろそろ本格的に動こうかと思ってね」

「後方を確保するって事か」

「そういう事だ。四の五の言ってられないからね。出来れば海まで続く一本道を完全に掌握したい。希望としてはその道すがら四つくらい部族を仲間に引き入れたい」

「手段は?」

「問わない。どっちにしろ国が亡ぶかその他が亡ぶかの違いだ。一応声は掛けるがそれ以上は構ってやれない。私はゴブリンの一件を経て正直頭に来てるんだぁ……。今まで黙っていたのを勘違いして国と組んで私にちょっかいを出したことを後悔させてやりたいとずっと思っていたのさ……」


 侯爵は身震いする笑顔で微笑んだ。


「進軍の仕方は?」

「先ずは後方を散策しよう。ジャンくんも康紀も耳では理解しても目では理解してないと思うからね」

「了解。いつから始める?」

「今すぐさぁ」


 侯爵は席を立つ。

僕も慌てて立ち、ジャンさんも立つ。

グルヴェイグさんも立ち、アステスさんが立ち上がり

グルヴェイグさんの椅子を引く。


「グルヴェイグさんは大丈夫ですか?」

「勿論さ。寧ろ康紀より私の方が早く歩けるよ? 勝手知ったるってやつだからさ」


 と微笑んだ。

茶色のロングスカートに白のブラウス、

茶色のストールを肩に掛けている。

靴は革靴。歩きやすい恰好って感じじゃないけど。


「さ、行こうかね」

「はい」


 僕はアステスさんと共に最後に

食堂から出る。廊下の窓から優しい日の光が

差し込んでいて、まさに散歩日和って感じだ。


「あ、親分」


 僕とアステスさんが屋敷から出ると、

中庭から外に出る門との間に

親分が一人で立っていた。

侯爵たちは親分に軽く挨拶した後、

門の前まで移動した。


「行きましょう康紀様」


 アステスさんに促されて親分の元まで歩く。


「おはよう親分」

「ああ」


 なんだか微妙な空気が流れる。

緊張してしまうなぁ。


「ご用向きはなんでしょうか」

「ああ……」


 とても言い辛そうだ。


「ああ、えっと。別に気に病まなくても良いんですよ? 僕と親分の関係は変わらないですから」


 言い辛い事と言えば恐らく例の件だろう。

僕は笑顔で親分の目を見ながら答える。

横に居るアステスさんは前をただじっと見ているが、

気はそんな感じじゃない。いらっとした今。

最近剣の修行をしてて、侯爵から相手の気、

気配を感じて読むことを教わっている。

グルヴェイグさんからは相手の視線や手の動きなどから、

何を希望しているか読み取る練習もされていた。


「少し話が出来るか?」


 親分は覚悟を決めたように迷いなく僕を見る。

僕は侯爵たちを見るが、三人は僕を見ているだけだった。

それを見て選択は委ねられたと判断する。

以前親分に力になれる時は言ってほしいと告げている。

順番で言えばそれが先でありそれが今。

なら迷う事などない。


「アステスさん、侯爵に僕は親分たちと話があるからと伝えて」

「畏まりました」


 アステスさんが侯爵たちの元へ行くと、

僕の両脇にフェンとヴェトが付いてくれた。


「じゃあ親分行きましょうか」


 そういうと頷いて先導してくれる。

行くのはボブゴブリンたちが新しく野営している、

侯爵の敷地の中庭だ。しばらく歩いて着くと、

ボブゴブリンたちが皆僕を待っていた。

見た事あるボブゴブリンたちのほかに、

親分のように髪飾りや防具を付けた

少し大きくて体格のいいボブゴブリンが

三人、その他馴染みないボブゴブリンたちが

合わせて二百人くらい居た。

ただ女性と子供と老人は後ろの方に居る。

恐らく何かあった時に真っ先に逃がせる位置。

大分警戒されているなぁ。

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