ジャンさんの報告と二刀使いの漆黒の戦士
「そっちも大概だけどねぇ。元々は同じ場所に住んでいたんだけど、排他的なエルフに嫌気がさして里を出た者たちが、近くに新たに里を作った。エルフに比べたら話は出来るけど、元は同じだから」
これは中々に難題だなぁ。
僕がそんな人たちから協力を
得られるだろうか。
「他にもオークやドラフト族、シギン族と居る。どれも曲者たちばかりだ。だが運が良い事に、こちらには今ボブゴブリンが居る」
「彼らと友好を深めて他へ繋げるんですね」
「そう。勿論彼らの得意不得意もあるだろう。もう少ししたら本格的に動く時期だ。事前に土地の情報をしっかり入れておく事と、種族感の情報も確実に知っておく事が大事だ」
「魔術は大丈夫ですか?」
と僕が聞くとグルヴェイグさんは溜息を吐く。
「それについてはアタシは諦めたよ。概要は教えたし、今後何かあって発動するかもしれないし。知識としてもっているだけでも良い。アタシたちに康紀の力を出せと言われても、転生しようが無理だしね」
呆れたように微笑みながらそう言われてしまった。
どうやらこっちの才能はからっきしらしい。
「まぁやる事も覚える事も山積みだ。また改めて知りたいとなったら幾らでも教えるから」
「ありがとうございます」
「じゃあ早速地図を広げて見ていこうか」
グルヴェイグさんの地理の授業の後、
鍛錬へそしてその日が終わる。
翌朝朝食前のトレーニングと
授業を終え、朝食を皆でとる。
「じゃあ早速俺の報告を聞いてもらおうか」
帰還したジャンさんが黒板の前に立ち、
元気良く報告が始まった。
ジャンさんは傭兵として冒険者ギルドに
登録し、仕事をしながら首都や
グラディウス国まで足を延ばしたと言う事だ。
「何より驚いたぜ、変な奴に会った」
ジャンさん曰く同じ異世界人で
二刀使いの童顔のおじさんらしい。
「康紀がそのまま何もせず年を取ったらあんな感じになるかもっていう雰囲気だ」
そう言われても僕には僕がいまいち分からない。
「異世界人というだけではないねぇ? ジャンくん」
「ああ。他にも異世界人が居たが、あんな変なのには会わなかった」
「変ていうだけじゃ何も伝わらないけど」
「分かってる。二刀使いってだけでも珍しいがそれだけじゃあない。グラディウス国の隣の小国アイゼンリウトを救った英雄らしい」
その言葉に侯爵は目と口を全開にして
椅子から立ち上がった。まるで子供の用に
好奇心が溢れるような瞳でジャンさんを見ている。
「以前からきな臭かったらしいが、もう少しで戦端を開くかって時に城から光の柱が上がり、その後王が交代して発表がなされた。そこにあったのが二刀使いの漆黒の戦士。名はコウということだけが伝わっている」
「王が、あの王が交代したのかい!?」
「今度は少女に代わったようだ。俺も足を延ばしてみたが、復興の最中らしかったが元気に溢れていたぞ? 以前の話を聞いてもピンと来ないくらい明るい国だった」
「そいつは凄いねぇ」
「二人は知っているようだな」
「ああ、ああ勿論さ。まさかあの魔王が……人間に倒される!? こんな信じられない事が起きようとは……」
良く分からないが、侯爵にとっては
青天の霹靂だったようで、興奮冷めやらないらしい。
「グルヴェイグさんもご存知ですか?」
「ああ。アタシたちの界隈では有名でねぇ。あそこには竜が封じられていたり、失踪者が後を絶たなかったり兎に角普通じゃない話が幾つもあった。エルフの大きな里もあるし、グラディウス国も迂闊に手は出せなかった。だけど妙だね。王が変わって穏やかになったのなら、グラディウス国が動かないはずはないんだが」
「王様はかなりの野心家なんですか?」
「野心家というかやはり間近に政情が不安定な国があると落ち着かないもんさ。機会があれば統治し管理する。それが一番安全だったりするもんだよ。何しろ王様は冒険王。腕にかけては誰よりも自信がある。軍もまた同じような矜持を其々が持ち、一騎当千の将軍たちが顔を揃えている」
よくこの国はそんな国と
戦争しようと思ったもんだなぁと
僕は感心した。アダガ王亡き後で。
「ジャンくぅ~ん。そこで例の彼の出番なんだろうぅ?」
目を爛々とさせて侯爵はジャンさんに問う。
ジャンさんは興が醒めたと言うように肩を竦めた。
「そうさその通り。その二刀使いの漆黒の戦士コウこそが王を倒し国を救った英雄であり、光の柱を城に建てた男で、何よりグラディウス国の使者としてブロウド大陸へ渡った男だ」
「それだけじゃないんだろぅ? 彼と小競り合いをしたとみたねぇ私はさぁ!」
「……ホント話をもっていくなって。確かにそうだ。俺も興味があったんでね一戦軽く交えようと思ってやってみたんだが」
「だが!?」
「急かすなよ……。その二刀は明らかに可笑しなものだった。剣自体にビームなのか何なのかが纏ってあるし、剣自体と会話するように動いていた。明らかに普通じゃない」
「あはぁー!」
変な声をあげて天を仰ぐ侯爵。
僕とグルヴェイグさんは呆れて天井を見る。
「あー、えっとグルヴェイグさん。その人は星の力に関係する人でしょうか」
「……それだけじゃ分からないねぇ。話を聞いた感じ勇者って感じだし、神の加護はあるかもしれないけれど、どうなんだろう」
「可能性は当然あるだろう。しかし何より王道を行く姿はワクワクさせてくれるねぇ!」
「しかしアイゼンリウトが無事だった理由はなんでしょうか」
「簡単な話だ。体のいい人質だろう」
「人質」
「縁も所縁もない国を命がけで救わないだろう? 彼にそう言わなくとも、彼の機嫌を取るために国を取らない。小国だしね。そんな事より強大な使い勝手の良い戦力を得られるならその程度安いだろうね。彼が居ないうちに同盟を結び、うまくして彼を王様に収められればグラディウス国は一人勝ちになる」
「そう上手く行くでしょうか」
「上手く行かせるんだよ。それだけの事を示したんだろう。グラディウス国の王はそういった事にも頓着しない男だ。犯罪を起こしやすい傾向でもない限り、優秀な人物とみれば取り入れる。それがあの巨大な国の強さの一つ。君も参考にするといい」




