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後ろ向きな僕と原住民の知識と

 アステスさんは何か言いたそうに僕を見ていたが、

やがて根負けしたのか


「では授業を。その後にトレーニングを致しましょう」


 と言って中へと入っていった。

僕も続いて入る。

人は弱いから群れる。

その言葉は肯定的な言い方ではない。

僕はいつも周りに対して否定的だった。

いや、周りだけじゃなく僕自身に対してもそうだ。

もっと言えば僕の祖先のどこからか知らないが、

ずっと子供を否定して生きてきたのかもしれない。

そう思うほど前向きな思考を持たない家族だった。

ただ死ぬ勇気が無かっただけ。


「聞いていますか?」


 黒板のある一室で授業を受けていて

気付くとアステスさんの顔が目の前にあった。


「おわぁ!?」

 

 僕は驚いて避けようと体を捻り、

椅子ごと地面に倒れこむ。


「怪我はございませんか?」


 スカートの裾を払い膝をついて

僕に手を差し伸べてくれるアステスさん。

スッと手が出てしまったが、

慌てて手を引っ込める。

が、アステスさんに手を掴まれ

椅子から足と体を離した後に、

引き起こしてくれた。

女性なのに難なく僕を引き起こしたのは、

きっとアステスさんは怪力な部類なのだろう。

僕が軽いという可能性は考えたくない。


「それでは続きを」

「あ、はい。すいません」

「康紀様。僭越ながら、その場凌ぎのすみませんは相手の気を悪くするかもしれませんので、お気を付けください。私は気にしないのですが、そういう事を気にしたり執拗に追及する人間も居りますから。ありがとうございます、の方がその場凌ぎには宜しいかと」

「あ、ありがとうございます」


 後ろ向きでつい謝る癖が出てしまう。

良くないから直さないと。

折角異世界に来たんだ、変わるチャンスでもある。


「外の領土との連携などは侯爵が進めておりますので、康紀様は先ずこの領土内を把握する事を優先いたしましょう」

「領土内……所謂原住民と言う事ですか」

「そうです。彼らは一応自らの領域を侵さない事を条件にある程度交流しています。が、そこには侯爵とグルヴェイグ様の存在が大きい。これが無くなれば彼らの行動は推して知るべしです」

「悪い言い方をすれば抑圧されている、と」

「はい。彼らは思想的に前に進んでいないものも多い」

「そんな集団を抑えられるなんて侯爵とグルヴェイグさんは凄い……」

「その二人に目を掛けられた康紀様も凄いんですよ」

「それが良く分からない」


 僕が首を傾げるのを見て、

アステスさんは眉間に少し皺を寄せた。


「あ、ありがとうございます」

「……顔色を窺わなくても宜しいです。それに今のありがとうございますは違います。煽っているのかと思われますよ?」

「し、失礼しました!」

「そうです。康紀様は顔色を窺う割には対応が相手を刺激するものが多いですね。なるべく接触を避けるのに反骨心に溢れている……」


 アステスさんは今度は難しい顔をしてしまう。

まぁそう言われるとそうだ。

極端なんだと思う。

ただ極端であってもなるべく表に

出さないようにしなくちゃ……。

ここではそれが命取りになるかもしれない。

努めて顔と体は冷静を装わないと。


「それは一旦置いておきまして、康紀様はそれらを近くで学び出来れば取り込んでいく方向で、今後動いて行く事になろうかと思います」

「と、取り込むんですか?」

「正直街は兵力として当てになりそうもありません。最悪盾にする可能性もあります。となると我々は後方を取り有利に動かなくてはなりませんから」

「取り込めるものですか?」

「ボブゴブリンも原住民です。ゴブリンもそういう意味では原住民です。彼らは人間との共生は諦めています。原住民同士でも争っていますから、我々はゴブリン以外の原住民とは手を取れる」

「なるほど……だから親分たちを取り込めっていう事なんですね。更に別の原住民と交渉するために」

「はい。ボブゴブリンやゴブリン以外にもオークやエルフ、ダークエルフなど難しい種族が多くいます。トレーニングは必ず行うとして、それらとの交渉もしていかなくてはなりません」

「僕は腕っぷしはからっきしなんですが……」

「そこももう少ししたら授業に入れていきます。能力の高さは侯爵の折り紙つきですから」


 ……確かに基礎能力は高いけど、

運動神経に自信が無い……。

出来るんだろうか僕に。


「康紀様、出来るかどうかではなくやるしかないのです。目的を達成する為には剣を握る事、避けては通れません」


 そうびしっと言われ、ゴブリン討伐を思い出す。

もうこの手は血に染まっている。

それは変えようがない。

なら目的の為に進む他無い。

自分の為にも。


「さてトレーニングに参りましょう」

「はい!」


 こうして僕はトレーニングを行い、

そこから就寝までいつも通り。

課題は山積みだし、原住民との交流も

どうなっていくのか……。

考えれば考えるほど憂鬱になり、

眠れなくなりそうだったが

あっさり眠りに就けた。

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