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僕たちの生きる道

「暫くは地道に時を積み重ねていく」

「街もその間に動く、と」

「そういう事だ。身の振り方を真剣に考えているだろう。この地方は原生林が多くまた原住民が多いから見逃されていた。私やグルヴェイグが仲立ちしていればこそ、な。それが二人とも離れたとなれば」

「安全が保障されない」

「行路も危うくなれば、物流が止まる。ここではこの土地の名産を他へ輸出する事で儲けを得ている。私は税を最低限しか取らなかった。町長や富裕層はそれで宮廷工作をしていたんだろうが」

「僕に何か出来る事はありますか?」


 それを聞いて侯爵は嬉しそうに微笑む。


「勿論だ。私にとっての興味は街の連中にはない。奴らが野垂れ死んだところでどうでもいい。実際線引きと大義を得る為に餌にしたいくらいだ」

「だからこそギリギリまで放置すると言う事ですね」

「いや、少し欲張ってみたくなってきた」

「と言うと?」

「うん、待っていても崩壊はするだろうが、時間が惜しい。そこで殺傷能力のない武器で行路を進んでくる商団にちょっかいを出そうと思う」


「ちょっかいですか」

「そうそう。こちらとは関係ない原住民が釣られて出てくれば儲けもの。康紀には忙しくなるだろうが、ボブゴブリンたちを指揮して欲しい」

「指揮……」

「国はやる気満々だ。彼らも進退を決めなければならない。どちらにも与しないと言う事も出来るが、と言う事は逆にどちらにも守ってもらえないと言う事になる。私は彼らに格別良くした事は無いが、酷くした覚えはない。ゴブリンは大嫌いだから目に余れば処罰していたがね」


 この国が戦乱へと進むとするなら、

国内の意志統一を迅速に計るだろう。

揺れている今でなければ動けない。

固まればここだけが攻められる事になる。

そうなればレイナさんを助ける以前の問題になってしまう。

……もう少し楽なところで目を覚ましたかったなぁ。


「そういう訳だから彼らと話してみてくれ。一刻でも早い方が良い」


 侯爵にそう言われ、僕は一礼した後

早足で外へと出る。敷地外の平地に

ボブゴブリンたちは移住してきた。

僕は早速親分を見つけ、話をする。


「そうか」

「正直無理強いはしませんし、ここに居て頂くことに問題はありません。出来れば手を貸していただきたいと……」

「そんな甘い問題じゃない。違うか?」


 親分にそう言われて苦笑いをする。

そう、こちらが負ければ国はボブゴブリンたちを

殲滅するだろう。下手をすれば原生林に火をつけて

燻りだして後方の安全を確保するに違いない。


「やる人間が違うだけ。お前たちが国に付けばお前たちがそうしただろう」

「まぁその選択肢はありえないからこうなったわけで」

「何故?」

「やり方が気に食わないからです。僕は生憎この国の人間じゃないし、義理もないんで」


 吐き捨てるように言う。

人の言う事を聞こうとしない人間。

自分の思い込みや他の人間の意見だけを

汲み取って押し付けてくる人間。

僕はそれに反発しただけに過ぎないかもしれない。

だけど嫌なものは嫌なんだ。

反抗できるならするまで。


「お前生き方上手くない」

「そうでしょうね。そう思います。交渉も下手だし」

「俺たちに近いかもしれない」

「僕も大地の妖精なのかもしれません」


 そういうと僕と親分は笑いあう。


「分かった。俺たちの種族の生き死にに関わる問題。真剣に話し合う」

「そうしてください。もし僕でできる事があれば言ってくださいね」


 親分と握手を交わし、僕は屋敷に戻る。

アステスさんが門の前で待っていた。


「宜しいのですか?」

「何が?」

「彼らの事です。共に語らう必要があるのでは?」

「いや、僕が入る事で他のボブゴブリンたちが不信感を深める恐れがある」

「親分と呼んでいた方に一任する、と」

「うーん僕が入らない事で、結局は自分たちの種族の問題だよ、というのを態度で示してみたんだけど」

「微妙ですね」


「絶対正解は無いと思うんだ。正直僕には他のボブゴブリンたちは分からない。互いに相手を知る必要はあるし、そうなれば不信感は無くなるかもしれない。でも結局はボブゴブリンという種族の生き死にの問題になる。正直こっちに付いたからと言って生き延びられる保証は出来ない。僕らだって死ぬ可能性はある」

「だからこそ分かり合う為に語り合う必要があるのではないでしょうか」

「確かにね。親分から話を聞きたいと言われれば、雄弁じゃないけど話はさせてもらおうと思っているよ」


 その言葉を聞いてアステスさんは

じっと僕を見る。

正直美人に見つめられると困る。

ドギマギしてしまう。


「私が黙って見つめても答えは変わらないのですね」

「生きるのも死ぬのも個人の自由。そこは誰にも侵害されてはいけないと思う。勿論寿命が来るまでは生きているべきだと思うけど、戦争を知らない僕が言うのもなんだけどさ、心を殺してまで生きる意味があるのかって」

「心は自由なものです。縛るのは自分自身」

「そうは思うんだけどね。でもさ人と生きるっていうのはそれだけじゃないんだよね。縛られたくないと思ってもどうしても人と生きているから、言葉で縛るようにさせられてしまう」

「人とは弱い生き物ですね」

「弱いから群れるんだと思うよ」 

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