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僕の提案と動き出す人々

 会議室でお茶を飲みながら、

僕とジャンさんアステスさんは

侯爵の説明と意見を交わす。

 僕は少し思った。

相手は強大な国。僕もだがその認識が

少し間違ってはいないかと。

過小評価し考えている気がしている。

侯爵は何か手があるのかもしれないが、

僕にはあの技一つしかない。

身体能力は上がっているが、

とても国一つを飲み込める気がしなかった。

ここは一旦落ち着いて冷静に振り返る必要がある。


 レイナさんは相手が利用価値があると

考えているうちは安全だ。

勿論洗脳とかの危険はあるが、

今運よく助け出せたとして逃げ切れるとは考えづらい。

となるとやはり受け皿を確実にし、

あわよくば企みを阻めればいい。

ジャンさんも戦争はしたくはないだろうし。


「侯爵、待って頂けますか?」


 僕の言葉に侯爵は、ぬるりと首を動かす。

こ、怖いなぁ。


「なぜかね?」

「レイナさんの救出は一刻でも早い方が良いんですが、一刻を争う事態なんでしょうか」

「というと?」

「僕の疑問なんですが、レイナさんは相手にとってバックアップとして生かしておく必要があるって事ですよね? と言う事はその間は安全であると考えます。そしてそれは戦争の準備をし、戦争の決着が付くか付かないかの所まで。敗戦濃厚なら現王室を切り捨てる時に、勝ちなら同盟のため他国へ嫁がせるか配下の褒美に嫁がせるか」


 僕の発言に侯爵たちは黙って聞いていた。

反応がないのが逆に怖い。


「康紀、君は依然何かそういう事をしていたのかね?」

「え」

「いやいや侯爵。彼の国はそういう遊びが好きな人間が大勢居たんだ。それで世界を賑わせた事もある国の出身」

「ほう……童顔に似合わず中々良い頭をしているようだな」

「いえ、ただ何となくそう思っただけで……」


 変に過大評価されても怖いなぁ……。

僕は後頭部を左手で撫でながら俯く。


「続きをどうぞ」


 侯爵にそう言われて躊躇ったが、

アステスさんが僕の横に来たので

顔を見ると僕を見て頷いた。

なんだか後押しされているように感じたので、

後頭部を撫でるのを止め咳払いした。


「えっと、僕の考えはこうです。我々の目的はレイナさんの救出と共に、国の横暴を止める事にあります」

「そうだな」

「現在我々には確固たる軍も将も武器すらもありません。そういう意味では準備不足」

「で?」

「侯爵が否定的な表明をすると言う事は、それなりに国の中にも同じ考えの領主が居ると思いました」

「うん」

「そこで前の事ではありませんが、表に出さず敢えて裏で手を組むよう交渉しつつ、我々の基盤を固めては如何でしょうか。時間は掛けられませんが、今のままではどれだけ耐えられるか……。それに例の噂がグラディウス国の罠であれば、ダガー国の全ては飲み込まれます。そうなると与していたのではなく、反国ではあっても反グラディウス国ではないとすれば」

「ふふ……」


 侯爵はテーブルに両肘をつき、

手を組んでそこに御でこを当てて小さく笑った。

やっぱり僕程度の考えでは浅はかだったか……。


「いやぁジャン君。君は面白い者と旅をしていたようだねぇ」

「まぁそんなに日数は経っていないけどな」

「君の考えはどうかな?」

「俺か? 俺は国が大国だったから小国の戦い方は分からない。悪く言えば力押しこそが正義だと思っているし、それができないなら戦わない。が、戦わないとどうなるかは想像していない。何しろ世界の大国だったしなぁ」


「……まぁ君たちの生まれには今はノータッチとしておくよ。取り敢えずは目の前の課題に着手しなければならない」

「そうしてくれると助かる。俺たちにも詳しい事は分からないから話せないしなぁ」

「了解した。で、簡潔に言うと康紀、私は君の進言に対して評価するとともに方針を変えることにした」


 侯爵は顔を上げると実に悪い人特有の

ニヤリとした笑みを浮かべて手を広げて告げた。


「御気になさらず」


 アステスさんが耳元でささやいた。

とても良い匂いがした。

ってそんな場合じゃない。

僕は自分の眉間を摘まんだ。


「我々は確固たる戦力を構築するために時間を稼ぐ。その為に各自得意なことをしようではないか」

「具体的には?」

「そうだねぇ。まぁ私は当然交渉に。グルヴェイグも交渉を手伝ってもらう」

「なら俺は動きを生かして情報収集ついでに路銀を稼いでくるとしよう」

「それが良い。君なら康紀より怪しまれずに人と人とを渡っていけるだろう。もし良さそうな人材がいたら是非紹介してくれ」

「請け合った。このまま人死にが出たら堪らない。全力でやらせてもらうぜ」

「頼む」


「あ、侯爵僕は……」

「君はそうだな……アステス、彼に色々仕込んでやってくれ」

「心得ました」

「い、色々ってなんでしょうか……」

「色々は色々さ……知識だけでなく体もねぇ。色に気を取られて表に出すようじゃあ策を立案遂行も危ういってねぇ」


 侯爵とジャンさんは実に嫌らしい笑い方をしている。

おっさんというかなんというか。


「知識がないことは承知しています。大体この世界に来て間もないんでそこを先ずは埋めないと」

「そういう事だ。策に完全はない。が情報もなくその場の思い付きではずっと戦えない。地形や天気、民族や地域の住人の思考など、知っていれば知っているほどやりようがある。それらを参考に私も交渉するし、いずれは君に表だって動いてもらう」

「は、はい」

「まぁ軍師ではなく将軍として武も磨きつつ知恵を育んでくれたまえ。時間が無いのが問題だが、それでも急げば急ぐだけ勝ち目が薄いことは皆認識した」

「頑張ります」

「よろしい。では早速だがアステスは康紀の力を見せてもらってそれを鍛えてくれ。私は使いを飛ばして各方面に会談を取り付ける。ジャン君は必要なものがあったら言ってくれ。滞在が長いならその元手を少しでも持っていくのと、私の使いを一匹連れ立ってくれたまえ。連絡が付くようにね」

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