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急襲の理由


「ここは……」


 僕が次に見た景色は、

見た事も無い豪勢な部屋だった。

明らかに高級そうな朱色のカーテンや、

金の装飾が部屋中に散りばめられており、

壁には高級そうな絵画が幾つも掛っていた。

手を着いているのはフカフカのベッドで、

柱が四隅にありこの周りもカーテンが

締められるように上に紐で縛られていた。

貴族になった気分である。


「失礼致します」


 コンコンと二回ノックがした後、

右の方でノブが回り人が入って来た。

白いエプロンに黒いドレス。

長い黒髪の頭頂部にカチューシャを

付けた美人が視界に現れる。


「お目覚めですか?」

「ええまぁ……ここはどこでしょう」

「侯爵様の御屋敷でございます」

「そ、そうですか」

「侯爵様がお待ちです」


 無表情で会話をする女性は

何故か生気を感じない。

侯爵が只者ではない事は

頭では理解した心算で居るけど、

本当はどんな人物なのか……。


「何か御入り用ですか?」

「い、いえ。行きます」


 僕は大急ぎでベッドから降りる。

が、ふらついて床に手を着いてしまう。

何とかふらつきながらも立ちあがる。

女性はただそれを無表情で見ていた。怖い。


「では」


 部屋を先に出た女性に付いて歩く。

廊下も赤い絨毯に大理石の壁。

調度品が所々に並べられており、

どこか古い時代の海外の貴族の家に

紛れ込んだのかと思ってしまう。

暫く真っ直ぐ歩くと、突き当りに

少し大きな扉が現れる。


「失礼します」


 二回ノックをした後、

女性は扉を開けて僕に入るよう促した。

恐る恐る入ると、そこには

侯爵のほかにジャンさんにグルヴェイグさんも居た。


「あれ!?」

「ようやくお目覚めか。まぁ掛けたまえよ」


 一番奥の御誕生日席に侯爵は座っていた。

ワイングラスを横に小さく回して僕を見ていた。

恐る恐る端の席に座ろうとしたが


「もっと近くに座りたまえ。別に取って食おうと言う訳じゃない。仮にも君は私が認めた従者のようなもの。本来であれば真横でも良い」


 侯爵がそう言うと、後ろに居た女性は

僕の横に来て更に侯爵の近くの席を引いて

僕を見た。ジャンさんとグルヴェイグさんは

反対側に座っている。


「そうそうそこで良い。まぁ面子を見て分かるように。我々は一つ同じ目標を持っている同志と言う訳だ」

「同志……ですか」

「そうとも」

「違うね」


 グルヴェイグさんはすかさず突っ込んだ。

侯爵はそれに対して苦笑いをして答える。


「グルヴェイグさんすいません、レイアさんの事」


 と僕が申し訳なさそうに言うと


「そうそれに付いて話さなければな。思った以上に事態は面倒な事になっているよ」

「例のゴブガンの話ですか」

「そう言う事だ。私としては従者である康紀と二人で解決しようとしたんだがね。残念な事にこの二人に殴り込んでこられてしまったぁ……」


 心底残念そうに手を広げて答える侯爵。

グルヴェイグさんは目を閉じ溜息を吐いた。

ジャンさんは良く分からんという顔をしている。


「ごめんね康紀。私も慌ててて。まさかゴブリンと取引する人間が居るとは」

「私の研究に一つ加えるとしよう。ゴブリンが人と取引をするなどと言う報告は聞いた事が無かったんでね。実に興味深い資料だ」

「どうでもいいがレイナとボブゴブリンたちはどうなる」


 ジャンさんは埒が明かないと思ったのか、

強めに疑問を口にした。


「どうもこうも国の良いとこどりになるだろう。ゴブリンに種類があるなんて人間には関係ないし、国としてはそれらを倒した事を口実にこの辺り一帯を直轄にする」

「えげつないな」

「えげつないだろう? 漁夫の利を得ようとするやつなんてそんなものだよ。実に浪漫の欠片も無い。どうせいつか死ぬのに汚く生きる理由が分からない」


 侯爵は呆れたように言った。


「この国とは違う国を攻める為に吸収したいんですね」

「そう言う事だ康紀。戦争をするっていう事は人を殺せ蹂躙しろと命ずる事になる。徴兵も当然必要になる。この国は軍国ではない。王政ではあるが人民に寄り添った政策をしていた。それに他国が攻めてきたとか外交が上手くいっていないという話も聞いた事は無い」

「チャンスがあれば領土拡大したいってだけの事だろ? 為政者ってのはそういうもんじゃないのか?」

「随分と物分かりが良いね、ジャンくんといったか? まるで君自身が為政者みたいに言う」


 その言葉にジャンさんはむっとした顔をした。

何か引っかかるんだろうか。


「まぁそれは置いておいて。兎も角急に攻めっ気を出して来て有無を言わさず吸収し軍国化。あまりにも急過ぎて。だが策としては虚を突くのは当然だな。で、グルヴェイグ。貴女は彼らに彼女の事は?」


 侯爵の言葉にグルヴェイグさんは首を横に振る。


「当然か。知りあって間もないし、幾ら魔女でも星の力を持っていたからとて信用は出来ないか」


 押し黙るグルヴェイグさん。

何があるんだろうか……。


「康紀には簡単に説明しよう。グルヴェイグは由緒正しき代々伝わるこの辺りに根を張る魔女だ。恐れられつつ敬われる存在。だからこそ国もこの一帯にはみだりに手を出してこなかった。私も居たしね」

「それが手を出して来た。グルヴェイグさんの子供であるレイアさんをゴブリンに襲わせて」

「ただ魔女の子だからという理由でかどわかす訳が無い。強引にやるなら軍を率いれば良いだけの話だしね」

「どういう事です?」

「彼女はね、ただの魔女の子じゃあ無いんだよ。王家の血をひく魔女の子」


 侯爵がそう言うと、グルヴェイグさんは険しい顔をして俯いた。


「迂闊だったねぇ。何故手を出してこないと思ったんだい?」

「まさか今更」

「向こうにとっては今更じゃなくて今だからこそ、なんだよ。戦争をやるんだ。何かあった時にバックアップは必要になる。あ、バックアップっていうのは予備って事だ。王族の予備。仮に誰かが倒れたとしても、その変わりがあれば今の権力にしがみついている奴らの安全は保障される。それも魔女の血も引いているとなればもっと素晴らしい事になる」

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