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ゴブリン討伐戦その④

「ふんふんふ、ふーん」


 侯爵は鼻歌交じりにステッキを振り回して歩いている。まるで身を隠す気が無い。僕は怖くて恐る恐る付いて歩く。


「康紀ー。そんなにビクビク歩くもんじゃあないよ。余計怪しまれるじゃないか」

「え、そうなんですか?」


「そうだとも。素知らぬ顔をして散歩でござい、って感じで居たら意外と見つからないもんだよきっと」

「はぁ……」


 侯爵が言うと本当にそれっぽい気がする。僕はそれを信じようと同じように肩から力を抜いて散歩っぽく歩いてみた。


「良い感じだねぇ」

「何か朗報ですか?」


「ああ。正直私としてはここ一帯を燃やしつくしてやろうと思って来たんだけど、いやはや面白い拾いものをしたんでね。こういう事が偶にでもあるなら、御日様の元を自分の足で歩くのも悪くは無い。不快な仕事だがね」


「えーっと……それは良かったですね?」

「あーはー?」


 侯爵はまた首だけ僕に向けてニヤリと笑った。どういう意味なんじゃろか。などと思っていると、段々と木が少なくなってきた。


「侯爵」

「へぇ……中々分かっているじゃないか。例え野蛮人でも木々の中に埋もれては生活できないから切り開いたり間引いたりする。木が減って来たという事はそう言う事だ」


 首をこっちに向けたまま解説してくれる侯爵。

びっくり人間て言うレベルじゃない。凄過ぎる。


「……いやこんな芸当でそんな感心されても困るよ」

「こ、心まで読めるんですか?」


 と僕が効いた瞬間、侯爵はケタケタと笑う。


「いやぁ失礼。でもね君がそんな顔してたらそう思うよ。実に素直で宜しい。だがねこの世界で生きるには素直なだけではダメだ。狡猾な部分も持ち合わせなければね。君の国とは違うのだから」

「え、僕が生まれたを知ってるんですか!?」


「君のその感じからしてそういう安全な国で生まれただろうな、というのは想像が付くよ。これからは気を付けると良いそういうところを狙われる」

「そ、そうですか……」


 一瞬残念な思いが自分の顔と態度に出てしまい、

直ぐに背筋を伸ばし両手で頬を持ち上げた。


「まぁ生きていれば色々ある。君が知りたい事はその内知る事が出来るだろう」

「何があるか解りませんからね」


「そう言う事だ。前向きに行こう。この先に居る野蛮人が悪逆非道の限りを尽くしていたとしても、我々には以前からこの瞬間までの事はどうする事も出来ない。これは事実だし受け止めよう。だがそこに捉われていては先に進めないどころか滅んでしまう。それでは野蛮人のやった事と大差ないレベルの愚行だ。何かしたいと思うのであれば、やり通せ。全てが終わってから懺悔すれば良い」


「はい」

「……そろそろ嫌な臭いがしてきた。康紀、腹の下に力を入れて気をしっかり持つようにね」


 僕は頷いた後深呼吸をする。あまりホラーやグロテスクなものに耐性が無い。顔見知りともなれば尚更だ。それにこの肉の焦げた臭い。形容しがたい、嫌な臭いだ。


「その反応は至極当然だ。君達人間にとっては脅威の存在であることは間違いない。互いに群れるし戦いも似た戦い方をしてくる。だが何より彼らは野蛮。野蛮は時に知性理性のあるものを凌駕する」


 確かに技に優れた選手でも、時にパワー重視の選手に惨敗する事もある。


「さてと……こんにちわー!」


 侯爵は首を前に戻して右手を御凸の近くに当て日を遮って覗きこんだ後、知人に話しかけるように手を振りながら叫んだ。叫び声を挙げて二体のゴブリンが襲いかかってくる。


「先ずはレッスンワン。こういう時に如何にして切り抜けるか、だが」


 相手が目の前まで来た瞬間、ステッキの先で左右相手の喉を瞬時に突き足を止めた。相手が喉を押さえ居る間に侯爵は杖の柄と先を両手で握り、刀を引き抜くように引いた。


そしてゴブリンの首を斬りつけ直ぐに距離を取るべく僕の横へバックステップしてきた。


「油断をさせて足を止め、喉のみ斬りつける。不必要に体を斬れば、声を挙げられて仲間を呼ばれる。それだけはしちゃいけない特に単騎で来ている場合はね」


 僕にウインクをしながら話している。それは確かにそうなのかもしれないけど、侯爵の動きが早すぎて僕に出来る気がしない。


圧倒されてしまった。この人が味方になってくれて僕は運が良いんだろうと思わずにはいられない。


「あぁーそう感心しないでくれ。こんなのは朝飯前のトレーニングみたいなものだよ。君に見せる為にした事だ。理解してくれればそれで良い。単騎でどうしても戦わなければならない場合の動き方として、頭に入れて置いてくれたまえ。いつか役に立つだろう」


「は、はい」

「宜しい。では行くとしようか」


 微笑みながらゴブリン達の領域へと進んでいく侯爵。侯爵に圧倒されつつ離されないように付いて行く。


「あ、そうだ。ちなみにあまり周りは見ないように。凝視したらいけないよ。ここは地獄だから」


 そう、そのゴブリン達の領域は、侯爵の言う通り地獄絵図、日本の画で餓鬼の画があるが

そんな感じになっていた。竿に干されている物や道に転がっている物、家とおぼしきところの入り口や屋根の上にある骸骨や死骸。


一人でなんて来るべきところではなかった。恐怖と悲しみ怒りと憎しみで涙が止まらない。


「その気持ちを忘れない事だ。これに慣れてしまうと人間可笑しくなる。こいつらと変わらなくなってしまうからね」


 侯爵は遅い来るゴブリンを次々に一刺ししていく。そこに感情は一切無く乱れも無い。機械のように処理して行く。ジャンさんも頭は冷静にと言っていた。侯爵が言うように、やる事やってから怒り嘆き悲しむべきだ。


「シッ!」


 僕は侯爵ほど上手くは出来ないが、襲いかかってくるゴブリンの喉目掛けて突いたり薙いだりして行く。


「そうだそれでいい。今は形や構えより相手を如何に潰すかだけを考えろ。それ以外は私がやるしその狼がしてくれる」


 フェンとヴィトは僕のフォローをしてゴブリン達の首を一噛みしては蹴り飛ばしを繰り返している。凄過ぎる。


侯爵は山ほど来ているゴブリン達を殆ど処理してくれているけど、僕に訓練させようと少数見逃していた。

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