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デムの提案

 感覚的に特に変わった気がしないものの


「へぇーこれは良いわね」

「流石悠久の時を生きる一族の知恵ですね」


 とヴェルさんとアステスさんは効果を感じているようで感嘆の声を上げている。どうなんだろうなぁ。


――ステータス未変更――


 デムから答えが頭の中に声で届く。やっぱり気の持ちようなのかもしれないなぁ。まぁそれでも無いよりマシだろうけど。


――提案があります――


 デムが提案なんて初めてに近いと思う。どんな提案なのか。


――私のエネルギーの蓄えから溢れる分があります。それの活用を提案します――


 活用とはどんな感じで?


――私の子機を実体化させたいと思いますので了承頂けますか?――


 子機? 


――私が実体化するにはエネルギーを多大に消耗します。緊急時用に多くエネルギーは蓄えておきたいのです――


 なるほど。効率化させるのは良い事だし、何より溢れているなら勿体無いから活用しよう。


――承認確認。子機作成開始――


「瘴気による体調不良なんかが出ないよう食器洗いをした後とか排水口なんかにも一応撒布しておこうか」

「それが良いでしょう。我々家令一同万が一に備えて屋敷に撒布して参ります」


「しっかしあの人たちは何で平気なのかしら」

「恐らくですが、慣れもあるでしょう。ただ彼女たちは鍛えているからある程度のしんどさを感じずに居られる」


「となるとあの副団長はその元凶の近くに居る可能性があるって事か」

「アステスのいう説が正しいと思うし、康紀の言う通りだとするとあの副団長はその元凶組から派遣されたお目付け役って可能性が高いわね」


 サルビアさんが不満を抱いているのは筒抜けだしそれを承知で泳がせている。あの副団長からすると僕に接触して上手く行くのは宜しくない筈だ。


「お祭りで何かあるかもしれないなぁ」


 僕の言葉に二人は頷く。


「ヴェルさん、申し訳ないけどノルン様に屋敷に来てもらえるよう伝えてもらって良いですか? その序でと言っては何だけど村の様子も見てきてもらえると」

「みなまで言わないで? 了解よ」


 この領地の中では派手に動けるし動いて居たであろうノルン様に話を聞こう。東の動向も気になるし、西もそうだ。下手に僕が突いても藪蛇になってしまう。村は心配ないだろうけど、ほぼヴェルさんはこっちに居っぱなしになっているので、安心させる意味でも用事の序でに行ってもらう事にした。


「ほほう」


 あくる日、ヴェルさんがノルン様を連れて帰宅した。御供は付けずに。ヴェルさん曰く嫁ぐ話が成って以降反対派はほぼ鳴りを潜め、襲撃犯たちも今回は僕に免じて不問とした事で複雑な心境で居るとの事。今回ヴェルさんが帰郷し一泊した事で人質という淡い反対派と襲撃犯の期待も無くなったようだ。


「どうなんでしょうそこのところは。個人的にはノルン様が何もしていないというのも考え辛いですし、各地にダークエルフは居るとも聞いています。真偽定かならぬ話を流布して身を守るという事をしていたんじゃないかな、と。そして身内からは正確な情報を得ているのでは、という仮説を立ててみたんですが」


 僕の問いに向かいに座ったノルン様はハットを取って膝の上に乗せると小さく笑う。


「我等はエルフの里を出て長い年月、この環境で生きる為、生き抜く為にありとあらゆる事をしてきたし学んだ。その御陰で多くの同胞たちが各地に根を張っている。そしてどれだけ月日が経とうと、始まりの景色や境遇を忘れる事は無い。どこに居ても故郷の為に、と思っているのは間違いない」


 その言葉に頷く。例え政府がどうあれ祖国は祖国。それを忘れる事はないだろう。多分世界がもっと交じり合えばそう言う事も無くなってしまうと思う。僕の前居た世界でもそういうところがあったような気がする。

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