ヒキニートサバイバル
僕は久遠康紀。無職の引き籠りニートだ。年齢は二十二歳。
普通の偏差値の高校を息を潜めて三年間生き抜き普通の大学に入学したものの、
リア充の雰囲気について行けずに落ちこぼれた男。
親のスネを丸かじりし、深夜のコンビニに立ち読みするだけの
快適ライフを送っていた筈だった。
だが今目の前にあるのは、広大な荒地。
ボチボチ木は映えているが、雑草と岩がゴロゴロしているマジの荒地だ。
これはどう言う状況だ? まさか遺産の変わりにこの荒地をくれるのか!?
ヒキニートでド底辺の僕にこの荒地をどうしろってんだ。
地面を蹴る。そして地団太を踏む。そしてどうにもならなくて、
荒地に寝転がり暴れる。そしてあらん限りの悪態を突く。
段々悪態も尽きかけて嫌になってきた頃、体育座りをしながら途方に暮れる。
流石にここから歩いて行けば、何処かに辿り着くだろう。
諦めず歩きだした。しかし地平線が見えるような気がするこの荒地の先に、
何があるんだ?
目眩がしそうになりつつも進むと、森が見えてきた。ここ何処なんだよホント。
あのジジイとババア、小遣い寄越せとか言ったから何か薬をかがせて捨てたんだ。そうに違いない。
陰謀説を頭の中で作り上げながら歩くも、森から抜けられない。
運良く池を見つけた。動物達が水を飲んでいた。
どこの田舎だここは。水をすくって飲む。美味い。
口の乾きが癒えたが、空腹が襲う。街は無いのか街は。
「そこの貴方」
池の前で体育座りをしてボーっとしていると池から声が飛んでくる。
とうとう幻聴まで聞こえてきた。ダメだ死ぬ。
「聞いてますか?」
池の中から人が出てきた。どうやら幻覚も見えるらしい。
「貴方はこの世界に迷い込んだ方のようですね」
何処かの世界に迷い込んだらしい。
「生きる糧を得る為に、貴方は何かしなくてはなりません」
「何かって何?」
「例えば食料調達などです」
「動物から肉を頂戴するの?」
「です」
「簡単に言うけど捌いた経験無いし、そんなんしたら吐く自信ある」
「なら死ぬしか無いですねぇ」
「あっさり言うな」
「どうします? 死にますか? 殺しますか?」
「物騒だな」
「前の世界でも貴方の口に入る前に行われていたんです。何を日和ってるんですか?」
「やかましい」
「兎に角住む家と食料を何とかしなくてはね」
「解ったよ。やってやんよ!」
「ならこれを差し上げましょう」
そう言うと池の中から出てきた美人で薄いワンピースを着た人は、僕に剣と斧、カンナとナイフを投げてよこした。雑な奴だな。
「それを使って頑張って生きてみてください。貴方が大好きな設定に貴方はなっています。体力も力も何もかもこの世界では上位に位置しています」
「魔法も使えんの?」
「覚えればいけますよ」
「サービス悪いな」
「サービスは良い筈ですがね。貴方を生かしてやろうと言うんですから」
「そらどうも。で、ゴールは何処?」
「ゴールですか…そうですね」
薄ワンピースの美人は腕を組んで考えている。ゴール無いんかい。
「なら貴方が国を作ったらゴールって事にしましょうか」
「どのラインで国と言うんだ。人によっては少人数でも国になるんじゃ?」
「詭弁は嫌いです」
「……マジで人口十万クラスの街を作れって?」
「そうです。そこまでやってみてくださいな。その為のサービスですから、貴方のやる気次第ですよ」
「まる投げ感半端ないな」
「というか死にたくなければやれ」
「とうとう本音が出たな」
「それではご機嫌よう。また逢えると良いですね」
美人は池の中に沈んで行った。潜って探ろうとしたが、何故か体が動かなかった。これマジでやらないかんのか。国作るとか今は今日の飯すらヤバいのにどうなるんだ。僕は投げつけられたものを抱えながら、来た道を戻るのだった。




