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ゲームの始まり Ⅱ

「さて・・・」


ロキは七大悪魔に顔を向けた。


「これでゲームは始まりました。後は誰がルシファー、いえ、ルシファー君を仕留めるかですが・・・立候補する方は?」


「・・・・・・」


「いないのですか?せっかくここまでお膳立てしましたのに・・・」


ヤレヤレと言う感じでため息をつくロキ。


「あなたたちは望んでなかったのですか?ここでルシファー君を仕留めたらこの魔界はあなたたちの誰かになるんですよ?迷う必要がどこにあるんですか?」


「・・・確かに。私たちはルシファー様のやり方に不満を持ってました」


七大悪魔の一柱アスモデウスが口を開いた。


「しかし、このような現状になるとは思っていなかった!なぜこんなことをしたロキよ!!」


声を荒げ、ロキを睨む。


「あらあら、私はあなた達の事を思ってしたことなのに、なぜ怒られないといけないのですか?不満があったらか私に頼んできたのでは?」


「確かに我らは頼んだ。だが、それは説得という意味でだ!貴殿のやっていることは違うではないか!!」


「家臣の言葉を聞けない主君など不要ではありませんか。そんな主君を何時までも掲げるより、新しい主君をたてたほうが手っ取り早いでしょ?だからここから消えてもらったんですよ」


「・・・・・・」


「それで?誰がルシファー君を殺るんですか?」


「・・・私が行く」


そう告げたのは先ほどまでロキに対して反発していたアスモデウスだった。


「あら~?先ほどまで不満がありましたのにどう言った心変わりで?アスモデウスさん?」


「貴殿の思い通りにはさせない。私はルシファー様を説得し、連れ帰る」


「・・・まぁいいでしょう。頑張ってきてくださいね。それと、なるべく早く説得して戻るか、殺して新しいあなたが主君にならないと大変なことになりますので、・・・重々承知して下さいね」


「それはどういうことだ?」


眉間に皺を寄せ険しい顔でロキを睨む。


ロキはそれをまったく気にせず、爽やかな笑顔で


「もし、主君がいない事を他の世界の者達に知られたらどうなると思います?きっと条約を破棄して攻めてくるでしょうね。もちろん、私たちの主君であるゼウス様もね」


「ッ!?」


「あ、でも安心してください。私から伝えることはないと思いますので。気が変わらなければ・・・ね」


「それでは、皆さんも頑張って下さいね。これにて解散」


ロキは姿を消した。


広間には七大悪魔のみが取り残された。


「まさかこのような事態になるとはおもわなんだが。完全に我等の失態だな」


全身をフードで覆っている男が言う。


「サタン殿」


サタン。七大悪魔の一柱として唯一ルシファーと同じ位の力を持つ方。


ルシファーの右腕とも言われているが実際は謎に包まれている。


なぜなら、戦争の時でもサタンの戦いを見た者は誰もいないからだ。


彼の部下に聞いたこともあるが「サタン様はただ歩いているだけでした。それだけで、敵は皆バラバラになってました」と言う。


又、彼は常にフードを被っているので顔も見たこともない。


「どうしたらいいでしょう」


「今考えても答えはでないことは明らかだ・・・。アスモデウスよ。ルシファー様がどこにいかれたかわかるか?」


「はい。それは我が部下にまかせればすぐにわかります」


「ならば、居場所がわかったらその場所に行くんだ」


「わかりました」


「そして、戦うのだ・・・殺す気でな」


「!?」


私は驚愕した。


確かに昔のルシファー様に比べたら今のルシファー様は温くなった。


残酷・冷酷無為で自身の命令に従わないものはたとえ重臣でも躊躇なく殺してきた。


だが、それでも自身の夢に突き進む姿に憧れてついて来る者達が多かった。


七大悪魔もそのルシファー様に憧れ・尊敬しここまでやってきた。


「なぜです!」


「今は言えぬ・・・後で追って伝える。」


サタン殿は私に背を向け広間から立ち去った。


「・・・命令は絶対だ」


最後にその言葉を残して・・・。


「・・・・・・クソ!」


「はー疲れた疲れた」


サタン殿が消えたのを見計らったかのように、別のフードを被った男がアスモデウスに近づいてきた。


「・・・ベルゼブブ殿」


「よお。なんか久しぶりに面白いことになりそうだな」


フードを外し笑いながらアスモデウスの肩を叩く。見かけは若い青年のようで髪は短髪で赤の一部に青色の混じった髪であり、目は青い、服は全身が赤く地獄の炎で染めたかのような感じの服だった。


「最近戦ってなかったから腕が鈍って仕方なかったぜ」


片腕を軽く回すベルゼブブ


「・・・ではあなたが行けばよろしいのではないですか?」


私は先ほどの発言に苛立ちを感じ、少し挑発的な言葉をぶつけた。


ベルゼブブとは同じ七大悪魔だがあまり好きではない。


私は堅実で何事もするのにも慎重に考えて行動するのだが、彼はその逆で、感情的で好戦的であるからだ。


自分に逆らうものがいればその場で殺すことも多々見られ。


また、面白いことがあると率先して参加し、それが魔族にとって不利益なことでも簡単に承認してしまう悪い癖がある。


一言で言えば問題児だ。


その為よくサタン殿に怒られたりしていた。


「あ?俺はまだいかないぜ。今のルシファー様を倒しても面白くねぇ~からな」


「!!」


驚いた。


「(まだ、ルシファー様と言ってくれるのか・・・)」


彼は自分より弱い奴、対等な奴、敵対する奴には敬意を示さない方でもあり、神界と地上界との戦争している時も我ら七大悪魔には一切敬語を使わず(今も続いている)、ルシファー様にだけ敬意を示した。


それが、今ではその敬意を示したルシファー様が敵になっているのにも関わらず様を付けているからだ。


それが無意識かどうかはわからないが。


「ん?どうした黙りこくって?」


「いや、何でもない。ではいつになったら戦うのです?」


「それは元に戻ったときが一番面白いけど、サタンのおっさんが五月蝿そうだからその前くらいには行くぜ」


「それでどうするのだ?」


「どうするって何をだ?」


「殺すのか?」


「当たり前だろ」


即答するベルゼブブ


「戦いは死と隣りあわせだ。だから面白い。繰り出す技の一つ一つで死ぬかもしれないという恐怖感と高揚感、あれは忘れることが出来ないからな。・・・やべ、想像したら興奮してきたな。一戦やるか?」


目を赤く充血させながら私に言う。


彼は興奮すると青い瞳が赤くなる性質がある。


それが限界まで達すると血を流すこともある。


その時のベルゼブブは私達七大悪魔が取り押さえようとしても難しいほど・・・。


戦時中の時でも、強い相手がいると稀にそうなり、そうなってしまうと敵味方かまわず皆殺しにしていた。


いつもは自身の力を多少は抑えているが、少しでも興奮するとその力が漏れ、周りのものを腐敗させる力を解き放ってしまう。


それが限界を達すると彼が通るだけで生きるものすべてが腐敗に変わるほど。


そうなると私達では止める事が出来ず、ルシファー様みずから出向き収めていた。


「いや、遠慮しておく。貴殿と戦うと少々疲れるのでね」


私はその要望を丁重に断った。


「つまんねー奴だな」


やる気を削がれたのか瞳は青く戻っていた。


「まぁそんな訳で俺はまだいかねーよ。もしルシファー様を倒したらそん時はそん時だ。仕方なく諦めるぜ」


「そうか、わかった」


「んじゃあ俺は戻ってもう一眠りするか」


そう言うとベルゼブブは転移魔法で消えた。


広間に静寂が訪れる


「・・・私はどうしたらいい・・・。」


手のひらを強く握り締めながら立ち尽くす。


「・・・・・・大丈夫?」


今にも消え入りそうな声で、立ち尽くしていた私に話しかける人物がいた。


「・・・リヴァか」


その人物は全身を鎧で覆い顔がまったく見えない。ただ、小柄で幼い雰囲気がある。


「・・・元気・・・だして」


そう言うと私の手をそっと握る。


その純粋に心配している姿はまるで小さな幼子のようで七大悪魔の一柱とは思えない。


だが、それがこの子のいい所であり、誰に対しても分け隔てなく優しく慈悲深い。


その性格からこの子について来る魔族もかなり多い。


「ああ。ありがとう。おかげで落ち着いてきたよ」


「・・・ホント?」


甲冑で顔が見えないが本当に心配しているのがわかる。


「ああ。本当だ」


「・・・よかった」


「リヴァは相変わらず優しいな。」


「・・・・・・そんなこと・・・ない・・よ」


「ハハハ。恥ずかしがることはないですよ。リヴァは皆に慕われています。それは本当のことです。その優しい気持ちを何時までも持っておいて下さいね」


「・・・・・・うん」


恥ずかしそうに顔を下に向けながら頷く。


「そういえば他の皆さんはどこに言ったかわかりますか?」


ベリフェゴール・マモン・ベリアルの姿をその後見てないアスモデウスはリヴァに尋ねる。


「・・・・・・」


リヴァは甲冑をカシャカシャと音を立てながら首を縦に振った。


「そうですか。お話を聞きたかったのですが仕方ありませんね。教えてくださってありがとうございます」


甲冑の上から頭をなでる。


「・・・エヘヘ」


嬉しそうに声を漏らすリヴァ。しばしその和やかな時間が続いた。


「・・・アスモは・・・これから・・・どう・・するの?」


不意にリヴァが尋ねる。


「どうするとは?」


「ルシファー・・・様」


頭を上にあげて私の顔を見るリヴァ。


その甲冑からは隙間から淡い青色の瞳と緑の瞳が見えた。


「リヴァはどうしたらいいと思います?」


優しい口調でアスモデウスは尋ね返す。


「・・・・・・・・・」


沈黙するリヴァの返答を待つ。


「・・・帰って・・・来て・・・ほ・・・しい」


小さく呟く。


「そうですか。・・・私もです」


再び頭を撫でる。


「連れ戻してみますからね」


「・・・(コク)」


小さく頷く。


「・・・約束・・・」


リヴァは手甲を片方外し小指をたてた。


「ええ。約束します」


アスモデウスも小指をたて指切りをした。


「・・・バイバイ」


そう言うとリヴァは自身の居場所まで転移魔法で帰っていく。


見送りを終えて周りを見渡すと、どうやら私以外の七大悪魔は皆自身の居場所に帰ったようだ。


「私も戻りますか」


私は転移魔法を使い自身の屋敷へと戻った。

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