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細かなツッコミ

作者と友達の会話が元になってます

 ある日学校から帰ってくると既に帰っていた然がリビングを占拠していた。

 いや、占拠というのには語弊があるか。然はそこいら中に制服を脱ぎ散らかし、下着姿のままでテレビの前を陣取り、冷蔵庫に冷やしてあった麦茶を僕のお気に入りの漫画の上に置き、正座でゲームをしているだけだ。

 まさかワガママ大王たる僕より自己中がいるとは……


「おい、然! せめて僕の漫画の上に麦茶おくのやめろ! ふやけるだろ!」


 然は気だるげな瞳をこちらに向ける。目の下にはくっきりとくまができていた。

 然がやっているのは最近発売されたばかりの新作のRPGだ。何事にも興味がなさげな然だがゲームは意外とやる。機械音痴のくせに何故かゲームはうまいのだ。


「それにお前、ご飯も食べてないだろ?」

「ご飯なら食べたわ」

「え、そうなのか?」


 昨日の晩御飯の時ですらこいつはゲームをしっぱなしで食べなかったはずなのに。


「ええ、マアおばさんが出してくれたスライムシチューが美味しかったと主人公が言ってたわ」

「それお前食べてないじゃないか!」


 こいつ、ゲームのキャラが食べたものが自分の食べたものと勘違いしてやがる!

 というかスライム食べるの? シチューで?


「そして私は一つの真理にたどり着いたわ」

「そんな虚ろな眼で見られてもな」


 然は虚ろな瞳をゲーム画面に戻す。


「真の黒幕は国王よ、奴は大犯罪人よ」

「はぁ?」


 テレビに映る画面を見て見ると然の操るパーティが王様に話かけているところだった。特にテキストにも声優さんが喋っているのにも違和感はないんだが。


「この画面ではこいつの悪行はわからないわ」


 然はそう言うとパーティを操り街に出た。武器屋、防具屋、宿屋、教会と特に変な所はないけど。


「気付かないの! 使郎!」

「と言われてもな」


 何故か怒ってるけどさっぱりわからない。

 ゲームってあんまりやらないし。


「いい? ここは王様がいるということは国よ」

「まぁ、国王がいるんだからそうなんだろな」

「国王の義務というのは民の裕福な暮らしよ」

「そうだな」

「それなのにこの国の商売相手は勇者しかいないわ」

「ゲームだからそうだろ」

「つまりこの国は勇者が離れた瞬間に滅亡するのよ」

「すげぇ、理論だな⁉︎」


 勇者が離れた瞬間に滅亡する国とかどれだけ勇者に依存した産業なんだよ。


「つまりこのことから魔王も国王の奴隷の可能性がでるのよ」

「なんでだよ! 魔王って言うんだから完全に悪党だろ!」

「魔王がでるから勇者がでる。勇者がでると国が儲かる。つまり国王の一人勝ち」


 それだけ聞くと国王が完全に酷いやつなんだが。


「でも、テキストにでてないだけで国に被害がででるかもしれないから完全にプラスじゃないんじゃないか? というかさっき然が勇者が離れたら国が滅びるとか言ってたじゃん」

「勇者が一人とは限らない。脱線したわ」


 そう言うと然は再びキャラクターを操作し全体が見えるような位置に置く。


「これだけしか店がないのにこの国はあんな大き城を作って王様が住んでる。これはつまりこの国の住民にあの王様が過剰な税を背負わせていること他ならないわ」

「それが本当なら完全に悪党だな」

「証拠がこれよ」


 然は街の外に出ると戦闘を開始する。綺麗なグラフィックで描かれたキャラクター達が戦闘をしている。

 そして全滅。

 画面が暗転し、王様の元に戻されたようだ。


「この時に王様が言うセリフが悪党だということがわかる」


 然が告げた後にコントローラのボタンを押す。すると画面内のテキストに、


『おお、勇者よ。死んでしまうとは情けない! もっとお金を集めていい装備を買うのじゃ』


 と出ていた。


「これが?」

「死すら勇者には許されず、さらにはもっと金を集めてうちの国で武器を買えと言う国王こそが真の魔王よ」

「ゲームだろが! 死んで終わりならゲームがおわらないよ!」

「しかも他国の王様も同じこと言うのよ? つまり国ぐるみでやってるから勇者はいうなら財布ね」

「もう勇者がひどすぎねぇ?」

「いえ、もしかしたら魔王が勇者を雇ってお金を儲けさしているのかしら、だとしたら魔王と勇者には国という企業に雇われてる社畜という言葉が一番しっくりくるわ」

「お前、勇者と魔王嫌いなのか? どんだけ貶めるんだよ」


 これだけ歪んだ視線でゲーム世界を見るプレイヤーは早々いないだろう。


「この世界に弁護士があったら勇者と魔王裁判に出たら勝てるわ。サービス残業ばかりだもの」

「いやだな、勇者が出てくる話で残業とかそんなキーワードが出てくるゲーム」


 社会人にはなかなかきついゲームになりそうだ。


「それより使郎」

「なんだよ」


 ゲーム画面から僕の方に向き直った然。


「喉が渇いたから冷蔵庫からアイス取ってきて」

「自分で取りなさい」

「取ってこないとあなたの鞄の中に下着詰め込むわ」

「とってくるよ!」


 そんなことされて学校で鞄を開けた日には変態扱いされてしまう。


「私もトイレ行ってからゲームを再開するわ」


 そう言うと然が立ち上がろうとする。


「⁉︎ 足、痺れて」

「どんだけ長時間正座でゲームをしてたんだよ」

 僕は苦笑を浮かべる。本人はそれどころではないようだが。


「っっっ!」


 足が痺れすぎて立ち上がれないそんな然を見てイタズラ心が湧いた。


「然、ホラ」


 放物線を描きながら僕の放り投げたアイスが宙を舞う。

 やがてアイスは然の痺れた足に当たり、


「ふぎゃぁ!」


 然が無様な悲鳴を上げて足を伸ばした。しかし、伸ばした先が問題だった。然が足を伸ばした先にはゲーム機がありそれを蹴飛ばしたことでゲーム機が床を滑りコンセントが抜けた。瞬間画面がブラックアウトする。


「「あ……」」


 二人して間抜けな声を上げる。ブラックアウトした画面には絶望したような表情を浮かべた然が映し出されていた。


「私の二時間が……」


 何も言えない状態とはこういうことを言うのだろう。


 天白家は今日も平和です。(妹絶望中)


よろしければご意見・ご感想をお寄せください。


また、こういうネタでやってほしいみたいなものがあれば教えてくれれば幸いです

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