王都へ
さて、仮想空間から出られなくなりました
やっとです
もっとトッププレイヤーとか出していきたいです
ここからどうしようか考えながら書いてます
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風音達パーティは、新しい街である『王都・ファイスナル』を観光中だった
「わ・・・。くお、あそこの鍛冶屋に行きたい」
「わ・・・。風音、クエストボードを見たい」
「わ・・・。うち、武器屋に行きたい・・・」
3人は顔を見合わせた
数秒間見つめあった後、天地が口を開いた
「じゃあ、あそこに見える大きな宿で集合ね」
「「いえっさー」」
この3人の方針は、各々が好きなことすればいいよ、だ
自分が強制されるのは嫌で、面倒事も嫌い、長いあいだ待つことも嫌い・・・とくれば、選択肢は元からひとつしかない
各自がバラけることだけだ
そして小学校からの幼馴染たちはそれぞれの特徴、自分の性格もばっちり把握している
だからこその・・・素晴らしい協調性だった
そして紅凰は鍛冶屋へ、風音はクエストボートのある方へ、天地は武器屋へと向かった
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「うわ、あつい」
こちらは紅凰、鍛冶屋へと向かった幼馴染チームのボケ担当だ
鍛冶屋に入ると、さすがゲーム。突然の鍛冶場だった
大量の熱気が紅凰に押し寄せ、紅凰は目が痛くなって目を一瞬閉じた
[ここに冒険者がなんのようだ]
NPCと思われる鍛冶師が鉄を打ちながら話しかけた
鉄は先程からずっと打っているにもかかわらず形を全く変えない
「くおに鍛冶を教えてくださーい」
頑固そうな鍛冶師のオヤジに意気揚々と話しかけた紅凰
紅凰の怖いものは、先生と親だけである
[お前の鍛冶スキルのレベルじゃあ教えることはできん。ここを使わせてやるからレベルを5まで上げろ]
―♪
鍛冶師が話し終わると紅凰の目の前にウィンドウが出現した
『鍛冶師に認めてもらおう!』
鍛冶クエスト①と書いてあることから、これはストーリークエストとは関係のない番外編のようなものだろう
やらなくてもいいけどやったらちょっとお得・・・みたいな
紅凰はもちろんやれる事は何でもやりたい派なので、即決でクエストスタート
ゾクゾクぅっ!
「な、なんだなんだ」
突然のよくわからない鳥肌に驚きながら鍛冶師が案内してくれた工房へ向かい、一心不乱に鍛冶レベル1で作れる鉄の板を精製していた
「・・・ふおおお、これからくおの鍛冶人生がスタートだぜ!」
紅凰はもう現実に帰る目的を忘れていた
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「へぇ、結構あるんだなぁ」
別カメラ、こちら風音
風音は王都の丁度中心あたりにあるクエストボードを見に来ていた
そのボードは風音が思っていたよりも大きく、端から端をしっかりと見るにはある程度離れる必要があるほどだった
そのクエストボードのど真ん中の少ししたあたり、風音たちプレイヤーの目にとまりやすい位置・・・そこに、最重要クエストが掲示されている
『王都の東西南北それぞれに続く道を解放せよ』
風音はこれがストーリークエストの一部だと予想した
一部、というのはストーリークエストを進めていくだけではクリアできない部分があると思ったからだ
例えば、番外編クエストを受けて依頼人NPCと仲良くなっておくことがクエストのクリア条件かもしれない
むしろ、仲良くなっていないとヒントすら得られないクエストだってあるかもしれない
それを考えると、今できる番外編クエストもそれぞれが進めたほうがいいのだろう
「・・・ふーむ。って、このクエスト・・・」
風音がボードの端から端へ移動しながら発見したのは既に受注済みになっているクエスト
『鍛冶師に認めてもらおう!』・・・鍛冶クエスト①
受注主は・・・紅凰だった
「・・・また勝手に・・・天地に怒られても知らないよー」
風音が天地に殴られる紅凰を想像しながらつぶやいた
その発言は紅凰の野生の勘がしっかりと察知していた
それと同時に、天地の持つバカセンサーもしっかり感知していた
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「やっぱり王都の方が武器の種類が豊富なのね」
そして最後に武器屋へ向かった天地
武器屋の隣にあった防具を売っている店も見るつもりでいる
この武器屋には、始まりの街とは比べ物にならない武器が並んでいた
始まりの街の品揃えと比べても2倍、数から多い
その中には紅凰の喜びそうな『鍛冶セット』も並んでいた
・・・これは、武器に入るのだろうか
いや、並んでいるのなら入るのだろう
「すみません」
天地が店主と思われるNPCを呼ぶ
武器の入荷予定などを聞くためだ
「ここに並んでいる他に武器はありますか」
[あるにはあるが、あんたには売れないよ]
気前の良さそうなおばさんは天地が非売品武器を要求したのだと思い断る
しかし、この店主が言った「あんたには」という言葉から何か条件を満たすともらえるのではないだろうかと考える
ちなみに、このおばさんと仲良くなるクエストも風音が発見している
「この武器以外に入荷予定はありますか」
[すまないねぇ、東西南北の道が通れなくなっていてね・・・この武器以外は売ることはできないんだよ]
「そうですか、ありがとうございます」
天地はしばらく考え、宿屋で情報のすり合わせをすることを決めた
ピクリ・・・
その時、天地の何かが反応した
首をかしげながらも宿屋へ向かう天地
その時に紅凰のためにと鍛冶セットも買ってあげていた・・・
優しいお母さんである
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天地が指定した宿屋の前
そこには既に天地と風音が揃っていた
しかし、紅凰の姿だけがない
なぜか?迷っているのだろうか
いやいや、マップ機能があるだろう。流石に地図を見て迷うことはないはずだ
「・・・風音、くおどこにいるかわかる?」
「多分鍛冶屋」
「行くよ」
天地が近づいている、紅凰、逃げろ!!
一方、そんな天地とは反対に、紅凰は鍛冶師と話し込んでいた
[まず、お前にソードのつくり方を教えよう]
「おお!じゃあ作る!今からつくる!」
[ここをこうしてこうだ]
チーン
トースターの焼けたような音と共に無装飾の剣が出来上がった
『鉄の剣を完成させろ』
鍛冶クエストは③だ。因みに②は合金を作れだった
そして黙々と鉄の剣を作り始める紅凰
鍛冶には器用さが関わる、と言ったとおり、器用さによって完成度や成功率は変わってくる
その点紅凰は後衛職弓師(紅凰命名)なので問題ない
弓を使っていると、レベルアップの時に器用さも上がっているようだ
Infinity onlineではそう言った目に見えるステータスはないが、なんとなくわかる
Infinity onlineはステータスを見えなくすることで、極振りなどをなくしている
なので初期値は全プレイヤーが同じで、それぞれのプレイの仕方によって振り方が自動的に決められる
一見不便だと思うかもしれないが、割とこの振られ方が正確だったりするのだ
今のところ不満は出ていない・・・今のところは
「・・・できたよ、おじさん」
[おう、じゃあそれの応用でほかの武器も作れるようになったぞ]
「なんというミラクル」
[次は防具だな]
「いえっさー!」
『鉄の胸当てを完成させろ』
鍛冶クエストは④まで来た
そして紅凰の鍛冶スキルレベルも9となっている
必死というか・・・のめり込みすぎだ
そして胸当てを完成させるために、リズムゲームのように現れるポイントをテンポよく叩いていく紅凰
これも一種の的あてなので、紅凰は未だにノーミスだ
まぁ、そのうちミスするだろうが
「ほい、さ」
たまに変な掛け声も交えつつ、胸当てが形を作っていく
難易度は低めだが、紅凰の鍛冶スキルが適正に届いていないので現れるポイントが小さめだ
トンテンカンカン
一心不乱にポイントを叩き続ける紅凰
真剣かと思いきや楽しそうだ
自分ができることはとことん楽しむタイプの紅凰にとってこのゲームの鍛冶は楽しい事以外の何者でもないらしい
「てってれー、てーつーのーむーねーあーてー」
鉄の胸当てが完成し、チーンという音を鳴らしながら紅凰の手に掲げられた
それを鍛冶師に見せると再びクエスト
[さすがだな、最後に鍛冶スキルレベルを13まで上げるんだ。そこまで上がれば一人前だ、この工房を好きなだけ使わせてやろう]
『鍛冶工房をゲットしよう』
これで鍛冶クエストは最終らしい
しかしこの鍛冶師と馬鹿な紅凰は気づいていない
今も工房を十分好きなだけ使えていることに、さっきから紅凰は鉄を打ちっぱなしなのに気が付かないのもおかしいのだが
「・・・見つけたー・・・」
「ひょおおお!!?」
紅凰の後ろから嫌に寒気のする声が聞こえる
その声は紅凰のよく知るもので・・・
「お前は、うちらを、いつまで、待たせる気なわけ?」
「いだだだだ、すみませんすみません」
天地にアイアンクローをかけられる紅凰
紅凰の頭からぎりぎりと音が聞こえてきそうだ
「おっ、紅凰見つかったん。早く宿行こー」
「こんのバカ、今の今まで鍛冶してたわ」
ブツブツと文句を言いつつも両手を紅凰の頭から離した天地
最後に紅凰の頭を思い切り殴って、満足したもよう
紅凰は頭を抑えてあうあう唸っている
そんな紅凰を放置、天地と風音はさっさと宿へ向かう
その後ろをしょぼん、とついていく紅凰
未だ鍛冶がやり足りないらしい、楽しいことには妥協しない紅凰であった
「・・・はぁ、くお、はい」
「なに、これ??」
「簡易鍛冶セット、あげるわ」
天地からトレード申請が来る
鍛冶セットと3000Hだった
「ありがとぉおおお、って、3000H高くない?」
「早く渡せ」
「はい、すみません」
トレードを了承しすぐさま3000Hを渡した紅凰
若干、天地が恐怖の対象になっている模様、しかしこうでもしないと紅凰は言う事を聞かないので天地の対応は正解である
紅凰は鍛冶セットをアイテムポーチに収納し、ほくほく顔で話しかけた
「もうほかのプレイヤーは王都に来た??」
「いんや、まだ」
「そりゃそうでしょ、うちたちが規格外なの」
ふむむ、と紅凰は腕を組んだ
何かを考えているらしい
まぁ、この紅凰の動作は気にしないほうがいいと思われる。基本的にその場の雰囲気に合わせて動いている紅凰は、考えているように見えて何も考えていないということがしばしば
みんなも騙されないように気をつけてくれ
しかし今回の紅凰はそうではない
しっかりと考えている、目がキョロキョロとさまよっているからだ
これは紅凰の癖で、考えているときは目線が右往左往する
というか、目がくるくると回る
不思議だ
「んじゃあさ、くおたちでお手伝いに行かない?」
バッと顔を上げて提案する
その後、キョロキョロと辺りを見回す紅凰
どうしたのか、それは・・・
「えっ、くお置いていったの?」
紅凰の周りには天地も風音もいなかったのだった
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ゲーム内身体能力を駆使して宿屋へと走る紅凰
街でスキルは使えないので必死に走っている
「あうー、てんもかざもひどいわー・・・」
やっと宿の前に辿り着き、中に入った紅凰
紅凰の分も登録しておいてくれたのか受付を通り過ぎ、部屋のある方へ進むことができた
そして、一番手前の部屋に入る
プレイヤーは全員一番手前の部屋しか取ることはできない
一応部屋の数の人数しか止まることはできないが、全員一番手前の部屋が自室となるのだ
しかし、それでは宿の中でプレイヤー同士がであってしまい同じ部屋に入っていってしまうのではないか?
そのへんはゲームクオリティ、仕様なので宿内でプレイヤー同士が出会うことはない
「んもー置いていかないでよー」
「だってくお、考え始めたら遅いし」
天地に反論されうなだれた紅凰
そしてさっきの提案を再び口にした
「ねー、くおたちがみんなのお手伝いに行こうよー」
「そうね、それはもう決定したの」
「えっ、くおの考えた時間は一体」
一瞬にして走り回った時間が無駄になった紅凰
がっくり、とベッドに倒れ込んだ
「それで、風音たちが一人ずつどこかのパーティに順に入っていくのはどうかー、って言ってたんよー」
なるほど、適正レベルまでレベルを上げてからボスに挑めば・・・いや、適性より少し上くらいで挑んだほうがいいだろう
そうすれば、できるだけ早くにこの王都にプレイヤーを入れることができるだろう
「クエスト見てきたけど、あれは人数いるわー」
「ってことで、掲示板に書き込んどく」
「んでも、くお達に頼りすぎないように調整しながらね?」
当たり前である
それをスルーして天地は掲示板にササッと書き込んで、ベッドにの転がり休み始めた
どうやら、今日は休んで明日準備をしてからもどるらしい
それを見て紅凰と風音も休み始める
これはもう天地がリーダーでいいのではないだろうか
ともかく、みんなお助けプロジェクト(紅凰命名)は明日始動するらしい
今回、紅凰ちゃんの鍛冶スキルが初めて役に立ちました
これから防具担当は紅凰ちゃん...と見せかけて、これからも意味のないものを作り続けます
たまに役に立つものを作ります