アバター作成
こんばんわ
本日も投稿させていただきました
舞羽ちゃんの馬鹿さが伝わってるといいな
黒い空間の中にふわふわ浮かんでいた
液体のような、気体のような、不思議な、心地いい感覚
【・・・Infinity onlineへようこそ。設定を開始します】
パチリ、舞羽が目を開けるとそこにあったのはひし形のもの
立体的ではなく、平面的なものだった
そして黒い空間に踊る電子のカケラ・・・と思われる物体
【設定を開始してもよろしいでしょうか】
機械的な声で問うもの
舞羽はそれに対して、
「はーい」
軽い返事を返した
【ここで決めることができるのは種族、スキル、容姿になります】
「なるほど、じゃあ種族から決めようかな」
【設定者の意思に従い、種族決定から始めます】
ヴン・・・
目の前に文字が現れた。そこにある種族は他の、舞羽が今までしてきたどのゲームよりも多い
が、舞羽が選択するのは一択、獣人である
「んと・・・獣人、って・・・あれ?」
獣人を選ぶと、さらに選択肢が現れる
【獣の種類を決定してください】
「ほぇ・・・すごいねぇ・・・」
と、舞羽が視線を滑らせると、一番下の部分に
「ランダム?」
【ランダムに決定いたします】
「まて、まいは何も言っていないぜよ!」
舞羽の訴えは虚しく、おそらく獣人のハーフを選んだ場合に出るであろうスロットが現れ、めまぐるしく、そのどちらもが変化していく
「おおう、勝手に混合種になってる・・・」
ぐるぐるぐるぐる、まわるスロットは突然動きを止めた
そこに表示されていたのは
「・・・狐と、狼?かな?」
【種族は狼狐に決定しました】
どうやら、ろうこ、と読むらしい
「ひぇー、なんかかっこいいけど・・・まぁ、いっか」
【引き続き設定を続けてください】
【何を設定しますか?】
「あー・・・スキルは種族限定みたいのある?」
【ありません。ですが種族の特性により扱いやすいスキルなどもあります】
「なるほど・・・その差は大きいの?」
【微々たるものだと思われます。個人の実力で覆すことも可能です】
「個人の実力ってのがわからないけど、だったら・・・」
ヴン、現れた画面に触りスキルを選ぶ
何の迷いもなく・・・いや、少し迷いながら選ばれたスキル
その数は6つ。スキル設定ができる上限の数だ
「これに決定するよ」
【スキル決定を確認。容姿設定に移ります】
再び移り変わる画面
なかなか細かいところまで設定できるようになっているようだ
「ほえ・・・じゃあ、バストは大きく・・・」
【申し訳ありません、現実と大きく異なる変更はできません】
「なんという理不尽!!」
舞羽は貧乳である。みんなびっくり幼児体型だ
しぶしぶ胸を諦め、ほかの設定を開始した
「じゃあ、髪色変更で・・・グラデーション設定は?」
【可能です】
「じゃあそれで。頭頂部は明るい水色、毛先は黒に近い群青で」
舞羽が言うと、舞羽の目の前に、黒い人間の形をしたものができ
髪が設定したものに変わる
「あ、髪の長さは肩にかかるくらいで・・・括っておこうかな」
【・・・髪の長さはセミロングと判定。髪飾りはどうしますか?】
「へぇ・・・髪飾りか、2種類しかないけど」
目の前に浮かぶ2種類の髪留め
舞羽はそのどちらも選ばず、なしと決定
「顔は今と同じでいいよ、肌の色もね」
【設定者の顔の骨格その他を投影します】
目の前に出来上がる舞羽とそっくりの人間
・・・少し本人よりもだるそうな目にはなっているが、そっくりだ
「目の色変更、群青」
【瞳の彩度変更】
目の色が群青色に変わる
すごく青いアバターになっている
「・・・身長は少し高く」
【申し訳ありません現実と大きく異なる変更はできません】
「ジーザス!!」
舞羽は少し悔しそうな顔をしつつ、そのまま設定完了する
「・・・設定完了」
【設定完了を確認。獣人の特性を反映します】
舞羽そっくりのアバターに狼と思われる耳と狐のような尻尾が追加され、人間の耳の方は髪に隠れて見えなくなってしまった
「おおう、これでまいも獣人に・・・」
【それでは、無限の可能性をお楽しみください】
その機械の声を最後に舞羽の意識は再びぷつりと途切れた
____
気がつくと、広い草原に倒れていた
おそらくここがフィニオンの初期ログイン地点なのだろう
ぐるり、舞羽が辺りを見回すと
遠くの方に2人のアバターが立っていた
「舞羽―!!」
その片方がこちらを振り向いて手を振っている
「璃桜―!!」
舞羽もぶんぶんと手を振り返した
舞羽が言った通りおそらくあれは璃桜のアバターだろう
そして、その二人を冷めた目で見つめる麻由佳のアバター
3人がお互いの顔が見える位置まで自然に集まる
舞羽も2人の顔を確認した
「・・・なんだ、現実のまんまじゃん」
「まいもね」
「いやぁ、現実一択でしょ」
・・・いまさらだとは思うがここでカミングアウト
3人が3人とも顔は整っている方だ、ということだ
別に絶世の美女というわけではない
初対面の人には必ず好印象を与えるくらいだ
璃桜は目が細く、キリッとした印象を与える
麻由佳は反対にぱっちりとした目で、口がへの字で不機嫌がデフォルト
舞羽は若干つり目で半分閉じただるそうな目、常に若干微笑んでいる
そのため全員現実のまま来たのである
・・・現実で絡まれるとかそういう問題は無視している
「んー、みんなは名前決めた?」
「いや、決めてない」
「チュートリアルで決められるんよ」
璃桜はしっかりと説明書を読んでいた模様
そして璃桜がチュートリアルを進めよう、と言ったところで
3人がこの草原から姿を消した
いや・・・チュートリアル専用の空間へワープしたのだった
____
体がふわりと浮くような感覚の直後に目の前の景色が大きく変わる
今まで草原に立っていたはずの舞羽の目の前にはジャングルのような世界が広がっていた
「チュートリアルの間へようこそ!それではチュートリアルを開始します!」
「(元気よさげな兄ちゃんですのぉ)」
その兄ちゃんが手を振ると、突然ゲル状の何かがぽとりと落ちてきた
「こちら、スライムというモンスターです!さぁ、攻撃をしてください!」
「いや、武器をもらってない」
「おっと失礼、ではこの中からひとつどうぞ!」
舞羽は迷うことなくひとつに手を伸ばす
それは、弓である
実は舞羽、普段は運動のできなさそうなただの馬鹿ではあるが
弓道部の部長を勤めている
最近県大会を突破して狂喜乱舞している
つまり、必然的に武器は弓となるわけだ
おまけに射撃、ダーツ、的当て系の遊びは無敵になる舞羽だ
弓を扱えないわけがないのである
「弓を選ぶんだね!いいと思うよ!さぁ、スライムに攻撃だ!」
舞羽は無言で弓に矢をつがえ、スライムに当てる
この間、約3秒ほど
弓道をやっている方ならわかるだろう、このスピードがどれだけ規格外なのか
何事も天才だからという一言で済ませるわけではないが
舞羽は、弓道の天才であった
が、その実力の裏に血のにじむ努力があることを知っている者は居ない
矢が当たると一瞬にしてスライムは消滅した
そしてドロップアイテムを落としていく
「おっ、幸運なプレイヤーさんだ!スライムの核があるぞ!」
「・・・レアアイテムです?」
「レアもレア、激レアだよ!」
「おおお、それはテンション上がる!」
アイテムを拾い、手に持つと元気のいい兄ちゃんがポーチを渡してきた
「これはアイテムボックスという特殊な魔法がかけられたポーチだ!」
どうやらプレゼントしてくれるらしい
そのポーチにアイテムを収納し、腰につけた
「うおお、楽しい!」
「喜んでもらえてよかった。ここではいくらでも練習ができるよ!好きなだけスライムたちと戦うといい!」
「・・えっ、チュートリアル終了?」
「僕から教えられることはもう何もないよ!」
「なんということでしょう」
舞羽は驚きつつも練習のために弓の命中精度を確かめていく
「・・・スキル発動、視力アップ」
舞羽の目が極限まで見開かれる。怖い
が、本人は真剣である、まぁ、多分
横顔を見る限り真剣だ。滅多に見せない真剣な顔である
そしてそのまま一番遠いところにいるスライムを狙い打つ
恐ろしい程に引き絞られた弦がギリリと音をたて、矢が空気を裂いた
見事にヒットした矢は簡単にスライムの命を刈る
「ううーん、結構いいスキルとったなぁ」
舞羽がとったスキル視力アップ
説明にはこう書いてある
視力アップ・・・視力がアップする。スキルレベルが上がると見える範囲が広がる
簡単な説明だが、使い勝手のいいスキルだった
「・・・お兄さん、チュートリアルを終了するよ」
「うん、素晴らしい弓の腕だったよ!素敵な君の名前はなんていうのかな?」
なるほど、ここで名前を確認するようだ
舞羽は迷うことなく名前を入力する
この瞬間、舞羽は舞羽ではなく【紅凰】としてこの世界の土を踏んでいた
____
パチリ、瞬きの瞬間にまた草原に立っていた
やはりそこには璃桜と麻由佳・・・いや、
「・・・かざ!てん!」
早速略称を考えたらしい。そろそろセンスの無さに気づいて欲しい
その2人のネームは
璃桜は【風音】、麻由佳は【天地】にしたようだ
「うぷぷ、二人共厨二っぽーい。わらわら」
「「お前もな」」
「ですよね・・・っと、二人共武器はどうしたん?」
「うちは杖。最初は殴るしかできないけど」
どうやら魔法使い志望の模様
「かざは?」
「風音は・・・ばーん、大剣だー」
自分で効果音を言いつつ取り出した武器は風音の身長を超える剣
が、両刃ではなく片刃で、どちらかというとこれは・・・
「・・・刀?」
「いえす!刀!ゲームに慣れるまでは慣れてる武器のがいいかと思って」
「さすが、剣道全国6位」
「でしょ」
そう言って刀を振り回す風音
でたらめに振り回しているように見えて、隙のない振り方
「で?」
「んー?」
「くおの武器は?弓?」
「ぴんぽーん、弓だよー」
紅凰は弓を2人に見せる。ドヤ顔だ
「へぇ、やっぱり使い慣れてるものがよかったか」
天地は少し後悔しているようだ。が、直ぐに開き直る
慣れと理想の天秤が理想に傾いたらしい
「とりあえず、始まりの街とやらに向かいましょう」
天地の声で、始まりの街へと続く道へ進んだ
・・・道は道でも、獣道だが
「・・・ねぇ、この草原の終わりに突然森とか・・・ヤバくない?」
「やばたん」
「まあ大丈夫でしょ」
各々不安を覚えつつ進む
____
「みんな、スキルと種族は?」
「うちは魔法スキルランダムで魔力5倍と、魔法女帝っていうチートスキルゲットした。あとはステップと瞬足と魔力変換効率アップ」
「5個だけ?」
「そ、魔法女帝が枠2個とってるの。さすがチート」
「ほー、内容はなんなん?」
魔力5倍・・・元から持つ魔力が5倍になる
魔法女帝・・・魔法の威力が6倍になる
見事なまでのチートスキルである
バランスブレイカーだ
「うっわ、お前きも。かっこわら」
「フレンドリーファイアするよ」
「すみません・・・種族は?」
「吸血鬼(眷属)だって」
「けんぞく?なんか弱そ、うごォフ!」
弱いと言われたのが気に食わなかったらしい
「えぇ、だから多分種族の階級を上げるクエストが出るはず」
「へぇ・・・」
痛そうに後頭部をさすりながら紅凰は頷く
やはり上がる階級に興味はあるようだ
「風音は?」
「別に際立ったところはないと思うけど・・・風音がとったスキルは
ステップ、瞬足、脚力アップ、腕力アップ、剣術、聴力アップの6つ
種族はドラグーン・・・だっけ」
「え、ドラグーンて何?」
「種族のランダムで出たんよ」
説明しよう、ドラグーンとはドラゴンと人間のハーフである
そのため身体能力に特化しており、魔力はゼロとなっている
しかも、このドラグーンという種族はランダム設定でしか選べない
ここは完全にリアルラックなのだ
そしてよく考えてみて欲しい
風音のスキル構成を。風音の身体能力はドラグーンという種族のためかなり高く設定されている
さらに、そこに風音の選んだスキル構成が加わると・・・
「凶悪だな・・・。で、そのしっぽはドラゴンか・・・ちょっとそこで動いてきてみー」
「ういーっす」
適当に返事をした風音
ステップ、瞬足、脚力アップを発動
だっ、と地面を蹴り真っ直ぐ木の幹を駆け上がる
地面を見るとくっきりと足型がついている
腕力アップを発動し木の枝をつかみ、どこぞの野生児か突っ込みたくなる勢いでスキルと身体能力を駆使して木を登っていく
「・・・なんだ、かざは猿か」
「なるほど、現実の実力はこういうところに反映されるのね」
「んん?」
「だから・・・」
天地の解釈はこうだ
現実の実力、それは・・・腕力、脚力、そういったことではない
その場の判断能力、経験・・・そのた知覚能力など
そういった目に見えないものが関わってくると考えた
その考えは間違っていない
現に紅凰がそうだったからだ
スキルの中に命中アップというものがある
弓を使うときはこれをつけておくと当たる確率が上がるのだ
が、紅凰はそれでスキル枠を取られるのを嫌ったためにそのスキルを取らなかった
だが、紅凰の矢は完全にあたっていた
それはなぜか?紅凰が弓道経験者だからだ
風向き、的の位置、自身の腕力、その他もろもろを考えて打ち出す矢は、命中アップを取らずとも的にヒットする
つまり、現実で武道をしているものは有利ということだろう
「んでも・・・それだと何もしてない人とかが不利じゃないのん?」
「だから、それを補うのがスキルと武器、種族なの。わかった?」
「なるほど、わかった」
「ねー、登り終わったんだけど!!!」
どうやら風音の木登りタイムは終了したようだ
・・・なぜか2,3本ほど遠い木の頂辺に立っている
「・・・木から木へ移動したわけ」
「おぉう・・・」
「降りるわー!」
そう言って風音は飛び降りる
シュタッと着地してこちらへ走ってくる
なるほど、顔に少しウロコがついている。しっぽと合わせるとドラグーンだ
なんのスキルも発動していないので速度は少し早いくらいだ
「んー、二人共なかなか鬼畜な設定ですな・・・」
「くおは?」
「くおもそこまで鬼畜ではない!くおのスキルはステップ、蹴り、ジャンプ、視力アップ、四足瞬歩で、種族は狼狐だよー」
「ふーん、音はここから聞こえるわけ?」
天地が紅凰の耳を指差す
「そだよー」
「5つしかもらってないのん?」
「・・・あとひとつは鍛冶ですがなにか」
「「鍛冶とは一体」」
「えっ、ほら、器用さが関わってくるしいるかと思った!」
器用さは弓の扱いにも関わるからといいたいのだろうか
馬鹿じゃねえの、という目で見られながらも紅凰はめげなかった
・・・めげないと決意していた
「・・・あっ!は、始まりのまちゅだよ!」
「噛んだ、ウケる」
「ばくわら」
「くぅぅ・・・」
完全に馬鹿にされながら紅凰は進む
輝かしい未来へ、そう信じる未来へ(笑
はい、チート三人組の完成です
しかも厨二病ちっくです
私のお友達の案を採用しました