世界で一番の滑舌
「部長、連れてきました」
「ありがとね、なっつ!」
なっつ………?
結構元気なポニーテールの女の人がいた。
背が高くて、スラッとしてる。
「えーと、名前は?」
「あ、はい。宇野原柚希です」
「うのはら、ゆずきっと」
名簿に名前を入れていた。
「ゆーやん、声いいね~」
………………はい?!
「本当だ!いいね~」
いや、ゆーやんの方を気にしてよ!
なに?ゆーやんって!
「なつきちゃん?ゆーやんって…」
「あ、部長はあだ名つけるの好きだから」
あーはぁ。
そーゆーこと。
「志望動機は?」
しぼう、どうき?
「なんで入ろうと思った?」
なつきちゃんが耳打ちしてきた。
あっ
「話すのは好きなんですけど、人前で話すのは苦手
で……でも、少し自分を変えたいなって思って……
なつきちゃんが誘ってくれたので、挑戦してみよう
と思いまして……」
最後の方はモゴモゴと話す結果になってしまった。
こんなんじゃ……………
「わかった。あなたを私たちで変えるわ」
え………
部長が大きな声でいった。
「課題として……」
課題。
「前を見て話すこと。
大きな声で話すこと。
滑舌を良くすること。」
滑舌………?
今まで注意されたことなかった。
「滑舌…ですか?」
「は行が下手ね。息が抜けすぎてる。聞き取りづら
いわ。」
は行か……
あまり自分も得意じゃないことは知ってたけど、
そこまで、気にしてなかった。
すごいな、放送部。
「これから、毎日放課後レッスンします。来てくだ
さいね」
「は、はい!!」
………て、部活週3回じゃないじゃん……